Hizuki
2018-09-16 10:12:19
16818文字
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グラブルふせったーログ[ジクグラ・ジクジタ・ジクパー]

【グラブル】ジクグラ・ジクジタ・ジクパー。ふせったーに上げていた分のSSまとめ。




『抗う者、守る者』(ジクグラ)


「いい眺めじゃないかええ?」

薄暗い部屋の中で響く、耳に纏わりつく嫌な女の声。
女の視線の先には別の男によって床に組み伏せられているジークフリートさんの姿。
茶色のスーツは砂埃と彼の唇の端から落ちた血で汚されていた。
かけていた眼鏡も部屋の隅に弾き飛ばされている。
その様子を見て室内にいる大勢も笑い声を上げた。

「ジークフリートさん!」
グランを離せ。関係ないだろう」
「それが大有りなのさまさか処刑人ジークフリートがこんなガキに入れ込んでるなんてねぇ

黒髪の女の指が僕の頬をつぅっと撫でる。
強い女物の香水が頭をクラクラさせる。
肌を這う指の感触が気持ち悪い。
自分の動きを封じられているせいで、ただ目をつぶって声を押し殺して耐えることしかできない。

「おっと動くな。動いたらこのガキの命はないよ」
「くっ

ジークフリートさんの上半身が動いた。
何もなければこんな状況はきっと一瞬で突破できるだろうに、僕という枷があるせいでこの人も動けない。
男にされるがまま、床に身体を押し付けられている。

「離せよ!」
「お前も暴れるんじゃない。そのかわいい顔に傷を付けられたくなかったらねぇ」

ならば自分が、と身を捩るも、背後で僕の動きを制限しているくすんだ金髪の年若そうな男が、さっき撫でられた頬に冷たいものを押し当てる。
銀色に映り込んだ自分の顔。
目の方に向かって冷感は小さくなっていき、ぼやけて鋭いものが見える。
それがナイフだと気付き、思わず小さく悲鳴が漏れた。

「くくっ弱くなったなぁ、ジークフリートォ?」

僕の側を離れると、カツンカツンとヒールの音が跳ね返る。
ジークフリートさんの前にしゃがみ込み、女が指先で顔を持ち上げた。
その表情を見てこだまする高笑い。
耳が痛い。
上機嫌の女と対照的なジークフリートさんが悔しそうにこちらを見た。

怖くないといえば嘘になる。
ジークフリートさんが動けば、本当に僕は押し当てられたナイフで刺されるのだろう。
けれど、それ以上にこの人のことを信じられた。
僕がやられる前に必ずどうにかしてくれる、と。


僕なら大丈夫。ジークフリートさんのこと信じてるから。やっちゃって!」


大声で叫ぶ。

「チッ五月蝿いガキだ

女から舌打ちが漏れる。
頷いたジークフリートさんが動き出そうとするのと同時、部屋に唯一つ取り付けられていた窓のガラスが砕け散った。

「何事だ!?」

室内全員の意識が窓に向けられる。
窓の外に見えていた隣の建物が崩れ落ちたようで、煙の向こうにうっすらと空が見える。
背後の男から力が抜けたのを感じ取り、その身体に体当たりをして駆け出した。
手首を縛られてうまく走れず、足元がおぼつかない。
同じように抜け出したジークフリートさんが自身の動きを封じていた男を気絶させるのが見えた。

「ジークフリートっ!」
「パーシヴァル!?」
「話は後だ!グランを!」

閉められていた扉が開いたかと思えば、立て続けに黒のスーツに赤のネクタイを締めたパーシヴァルさんが現れて。
何が起きているのか理解が追い付かない。

「このっ!!」
「ジークフリートさんっ!!」

背後に迫る足音。
振り返った一瞬、銀色に光るそれが見えた。
足がもつれて倒れそうになった瞬間、強く腕を引かれる。
背中に痛みはなく、ゆっくりと目を開ければ少し汚れたクリーム色のネクタイに茶色のベストとジャケット。

「大丈夫か?」

ジークフリートさんの腕の中にいるのだと分かった。
騒ぎの中とは思えないほど穏やかな声が降ってくる。
それだけでもう何も怖くなくなる。
小さく引きつった声が聞こえ、肩越しに見えたのは男に銃を向けるパーシヴァルさんの姿。
ジークフリートさんが縛っていた縄を解くと、手首には薄く血が滲んでいた。

「すまない、無理をさせたな」
ううん、平気」

ポケットから取り出したハンカチを巻きつけて結び、僕の頭をそっと撫でる。
そしてジャケットを脱いで僕の肩にかけた。

「取り込み中のところ悪いが、まずはここを切り抜けるのが先だ」
「ああ、そうだな」

パーシヴァルさんがジークフリートさんの隣に立ち、何かを差し出した。
紐の付いた細長いそれを受け取って立ち上がる。
するりと持ち手らしき部分を持って引き抜くと、きらりと輝く銀色の刃が姿を見せる。
刀だ。
収められていた鞘を手渡され、大事に抱え込む。

「丸腰で敵陣に突っ込む奴があるか」
「グランの身に何かあっては困るからな」
「お前はグランのこととなると途端にまぁいい」

小言のようなものをかけるパーシヴァルさんの顔には笑みが浮かんでいた。
銃口で被っているハットのつばを押し上げる。

「弱くなったということは、また強くなれるということだ」

身を反転させるとその背中にはさっき僕をかばってくれた時に付けられた跡が見えた。
相当深く切りつけられたのか、同じ色のベストの左上から右下にかけて斜めに入った裂け目は中のカッターシャツにまで到達している。
その裂け目から露になった黒い竜がこちらを睨みつけていた。



背の黒竜を見て、生きて帰れるとは思うなよ」



ジークフリートさんの声を合図に部屋の空気が凍りつく。
初めて聞く威圧感のある低い声に背筋がゾクリとした。
そこからはあっという間だった。
ぴったりと息の合った連携で相手を一掃していった。
パーシヴァルさんが足止めした相手をジークフリートさんが一太刀で斬り伏せ。
ジークフリートさんの背後を取ろうとする者があればパーシヴァルさんの一発がそいつを沈め。
そして相手を全滅させ辺りが血と硝煙の臭いで満たされた頃。
緊張の糸が途切れたのか、2人がこっちを振り返った記憶を最後に僕の意識は途切れていた。