Hizuki
2018-09-16 10:12:19
16818文字
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グラブルふせったーログ[ジクグラ・ジクジタ・ジクパー]

【グラブル】ジクグラ・ジクジタ・ジクパー。ふせったーに上げていた分のSSまとめ。




『担う者、悟る者』(ジクグラ)


水を張った桶に足を浸して縁側に寝そべり、空を見上げればこれぞ夏、といった空が広がっている。
さんさんと辺りを照らす太陽の日差しはこれでもかと言わんばかりに強い。
桶に入っていた大きな氷はそいつによってあっという間に溶かされてしまった。

「あっつい
「茹だっているな、グラン」

日差しを遮るように覗き込んできたのは、屋敷の主の側近のその人で。

「あ、ジークフリートさん。この暑さじゃ無理だよ

見知ったスーツ姿ではなく藍色の着物を身に着けていて、普段と違う雰囲気に何故だかドキリとした。
ああ、これが大人の魅力ってやつか。
整った顔を直視するのも太陽と同じくらいに眩しくて自分の腕で目を覆う。

「これだけ暑いとアイスとか食べたくなる
「ならば買いに行くか?」
「行く!」

ぼんやりと呟いた欲望を拾われ、ジークフリートさんから出た誘いに即答で乗った。
準備を整えて、目的地は近所のコンビニ。
かといって歩いて数分ほどの場所にわざわざ車は出さなくていいと何とか大人を丸め込んだ。
自分の分とジークフリートさんの分、それと数種類の味が入ったアソートを5箱。
コンビニで買うにはやや多めの量のような気もしたけれど、まだまだ暑い日は続きそうだし、あの屋敷は人が多いからと納得させる。
それらを買って、2人分のアイスが入った袋を僕が、アソートの入った袋をジークフリートさんが持って来た道を戻る。
屋敷からそう遠くないからと歩いて買い物に出たのが運の尽きだったのか。
急に表情を変えた空から降り注いだのは大粒の雨。

「走るぞ」
「うん!」

袋を濡れないように抱え込み、屋敷までの道を急いだ。
それでもびしょ濡れになるのは避けられない。
半袖にハーフパンツだった僕はまだしも、ジークフリートさんは着物のせいで裾から袖まで色が変わっていて。
特に背中の色が濃いのは僕の背を覆うようにしていてくれた部分もある。

「風呂は空いているか?」

そんな状態で帰ってきたものだから、出迎えてくれたお手伝いさんが大慌てでタオルを用意してくれた。
買ってきたアイスの入った袋をお手伝いさんに預け、ざっと肌を伝う雨を拭き取ったジークフリートさんに担ぎ込まれたのは風呂場で。
雨で冷えた身体を温めろということなのだろう。
着替えは後で持ってきてくれるらしい。
水を吸って重くなった服を脱ぎ、脱衣カゴに入れる。
後ろからはシュルと帯を解く音が聞こえた。

「まさかあんな急に降ってくるとは思わなかったよね、ジークフリートさ

振り返って着ていた着物が肩から落ちた瞬間、その人の背中に視線が釘付けになる。
大きな背中に現れたのは色鮮やかな黒竜の刺青。
鋭くこちらを睨みつけている紅い竜の眼に思わず身が竦んだ。

グラン、俺が怖いか?」

言葉が途切れた僕に何かを察したのか、ジークフリートさんが静かな声で問いかける。
声音にはこちらへの気遣いが含まれていた。

ううん、ちょっとびっくりしただけ」

口には出さないけれど、この屋敷がどういう場所なのか何となく分かってはいる。
あまり表立って動けはしない人達が集っている場所なのだと。
それでも、屋敷の人達は揃って僕に親切にしてくれるし、普通にしていれば何ら他の人と変わりはない。
そもそもジークフリートさんがいなければ今ここで生きているかどうかも怪しかった。
街中で偶然巻き込まれた諍いの最中、見知らぬ僕を守ってくれた背中はこの人のもの。
ここの屋敷に身を寄せるようになって、何だかんだと気にかけてくれているのもこの人で。
感謝こそすれ、恐れるなんてことはない。

「そうか」

ほっとしたように硬かった表情が僅かに緩んだ。
ジークフリートさんからさっき以上の問いをかけられることもなく、気付かれないように小さく息を吐く。

けれど、やっぱり違う世界の人なのだと思ってしまう時は少なからずある。
例えば、本人に何一つ傷はないのに血の匂いを纏って帰ってきた夜、だとか

「さ、早く入っちゃお!お風呂上がりのアイスもおいしいよ」

脱衣所に流れる重い空気を払うようにできる限り明るい声を出した。
台所の冷凍庫にはさっきのアイスがしまわれているはず。

「夕食前に大丈夫か?」
「平気平気。ジークフリートさんは後にする?」
「いや、元々すぐ食べるつもりで買いに行ったのだからな。俺も上がったら食べるとしよう」
「あ、じゃあ一口欲しいな。どっちにするか迷ったんだ」
「では俺も一口もらおうか」
「もちろんいいよ」

ジークフリートさんが僕と同じように脱ぎ落とした着物を雑にカゴの中に放り込む。
お高そうなものなのにあんな扱いして怒られないんだろうかと余計な心配をしながら浴室に繋がる扉を開け放った。
上がってから2人で食べるアイスは、きっと普段よりもおいしいのだろう。