Privatter+
Font
Serif
Sans Serif
Color
Light
Dark
auto
Font size
Large
Medium
Small
Language
Japanese
English
Sign in with Google
Sign in with ID and password
Account ID
Password
Sign in
Forgot password?
Create account
沁月
Public
ウ教×ハ♀ 両片想い 読み切り
鳳仙花は燃え開く
MHRウ教×ハ♀。両片思い→相思相愛。
ハ♀視点。
鳳仙花の花言葉に纏わるお話。ハピエン。
自分はウ教に釣り合わないからと、彼が大好きなのに距離を置くハ♀。そんな彼に、縁談話が舞い込む。
1
2
3
4
5
6
7
8
「っあ
……
!?」
意表を突かれて出てしまった
驚声
きょうせい
が、とても恥ずかしい。
そんなことを考える間もなく、私の体は後ろから、大きな温もりに包み込まれて。
「──やっと
……
見つけたッ
……
!!」
絞り出したような声を聞いて、私の心臓が、どくんと震える。
血が沸き立つように、どくどくどくと鼓動は高鳴り、全身が
強
こわ
ばって、金縛りのように動けなくなってしまった。
この声を、この炎のような温もりを、私は知っている。
間違えるはずがなかった。
この世で一番、愛している人のものだから。
「
……
ウ、ツシ、教官
……
!?」
笑ってしまいそうなほど、声が震えていた。どくどくどくと、私の心臓も震え続ける。
あなたは私を後ろからがっちりと両腕で抱きしめて、私の耳の近くに顔を寄せているらしい。
あなたにしてはとても珍しく、呼吸が乱れているのが分かる。
必死に動き回って、何かを追い続けていた後、いや、探し続けていた後のような。
──まさか、教官が門にいなかったのは
──狩場で、ずっと私のことを
……
?
「
……
教、官。わ、わたしの、こと
……
探して
……
?」
「俺
……
! 俺、本当に、おかしくなるかと思ったよっ
……
!」
私の問いに答えていない返答だけれど、あなたの声の震えは、私を探し続けていたのだと教えてくれて。
たちまち私の心臓は真冬よりも冷えきって、また、血の気が引いた。
私が門を避けたから、いつものように待っていても、私が帰らないと思ったのでしょうか。
狩猟に出たまま帰らない私の身に、何かあったのではないかと。
「き、教、官
……
! 私、何ともありません、から。無事
……
ですから
……
だ、から、離して
……
」
「嫌だ、絶対に嫌だ
……
! 離したら、キミはまた俺を避ける。俺を避けて、きっと
……
俺の前からいなくなってしまうつもりなんだろう
……
!?」
「
……
!」
私の心臓が、どきんと、また大きく震えた。
どうして、どうして見透かされてしまったのか分からなくて、ここでも自分の愚かさを思い知った。
数多
あまた
の経験を積んで来た教官、人としてもハンターとしても大きく、強者であるあなたの聡明な瞳を、誤魔化しきれるはずもないのに。
「愛弟子
……
ごめんね、愛弟子
……
! お願いだから、今だけは、俺を避けないで
……
!」
「ッ
……
! わ、たし
……
あなたを、避けてなんて、いません
……
!」
「嘘だ」
耳元で、貫くように低く響いたあなたの声に、私の心臓はまた縦に揺れた。
体は弱々しく震えることができないほど、あなたの両腕にがっちり抱きしめられている。
絶対に離さないと暗に告げるような、優しいけれど、少し強い力。
けれど、腕の中の私が壊れないように抑えた力であることはすぐに分かって、それが、あまりにも嬉しかった。
「ごめんね
……
ごめんね、愛弟子。
……
きっと、俺がキミをたくさん苦しめてしまったんだね。俺に、会いたくないって思うほど
……
!」
「ッ! ち、が
……
! ッ
……
違っ
……
あ
……
」
──泣くな
──泣くな、泣いちゃ駄目!
必死に、自分に言い聞かせる。
こんなに泣き虫だったことに驚いてしまうし、情けなくなってしまう。
どんな決意でここに来たのか、どんなに痛んでここに来たのか思い出せと、自分自身に呼びかける。
会いたくないわけがない。
誰よりも、こんなにも、あなたが好きなのに。
好きだから。
大好きだから。
そして、分かってしまったから。
だから私は、あなたを避けた。
「わ、わた、し
……
! ッ
……
わ
……
たし
……
!」
「
……
愛、弟子
……
?」
驚いたようなあなたの腕の中で、私の体がぶるぶると震える。
あなたの優しい力では制御できないほど、私の心も体も震え始め、頭は熱くて、もう、誤魔化すのは無理だった。自分のことも、あなたのことも。
「わ
……
たし
……
! し、幸せに
……
なって、ほし、くて
……
!」
「
……
え
……
?」
「あ、なたに
……
! あなたに
……
し、しあわ、せに
……
! あなたに、ふさわしい、人と
……
! 私
……
じゃ
……
ダメ
……
私
……
私なんかじゃ
……
!」
舌がもつれて、うまく喋れない。
頭が、目が、胸が、焼かれたように熱くて、涙がぼろぼろ零れ落ちる。
愚かな私の涙は、愛しいあなたの腕を濡らしてしまって、謝りたいのに言葉は出ない。
縄でぎりぎりと締め上げられるような、罪悪感に襲われる。
「ちょうど、え、縁談が、あるって
……
! あ、なたが、し、幸せ、なら、私
……
! 私
……
釣り合わないから
……
! あなたの、じゃま、しちゃう
……
! わ、私
……
私、あ、なたに、ただ、幸せに
……
し、あわせに
……
なって、ほし
……
」
「ッ! もう、いいよ!」
私の言葉を
遮
さえぎ
るように、
曇天
どんてん
の空にも高らかに響いたあなたの悲痛な声は、私の心を痛みと安らぎで包み込む。
「愛弟子、分かった
……
! もう
……
もう
……
いいから
……
! ごめん
……
ごめんね
……
!」
後ろから私を抱きしめるあなたの力が、強くなった。
あまりにも温かい、優しさに溢れた強さ。
まるで、私から震えを取り除こうとしてくれているようだった。
どうしてあなたが、私に謝るのか分からない。
謝るべきは私なのに。
愚かで、幼くて、我儘な私なのに。
どこまでも、どこまでも、あなたは優しくて、私の耳元で何度も、何度も謝ってくれて。
いつしかあなたの腕まで、小刻みに震えているように感じられた。
「
……
縁談のこと、聞いたんだね」
観念したように呟いたあなたの声が生々しくて、 ずきん、と私の胸は痛んだ。
視界が
瞬
またた
く間に、ますますぼやけていく。
頷くこともできないほど強い、あなたの腕の力。あなたは、私の沈黙で察したらしい。
「
……
本当は。
……
本当は、こんなつもりじゃなかったんだけど」
「ッ
……
! わ、たし。私、は
……
あなたが、幸せに、なって、くれるのが
……
う、れし
……
」
「違う。違うんだ愛弟子、そういう意味じゃない
……
!」
不自然に小さく声を
綻
ほころ
ばせて、あなたは私に愛しそうに告げる。
これは幼い頃の私に『何も心配いらないよ』と微笑んでくれた時の、あなたの声だ。
「
……
今、キミを離したら
……
きっと、キミは二度と戻らない。だから、愛弟子。このままで聞いてくれる?」
腕の力をますます込めて、あなたは、私を抱きしめる。
もう『離れたくなくなってしまうから、触れないで』なんて我儘は、戯言は通じない。
いつの間にか、分厚い雲の隙間から、蒼を帯びた月光が、私の涙を煌めかせる。
あなたが後ろに居て、この情けない顔が見えなくて良かったとほっとした途端、あなたの唇が、ますます私の耳の近くに寄ったのが分かった。
「縁談は、断ったよ」
「
……
え
……
!?」
──断った?
──せっかく、幸せになれるのに?
稲妻に打たれたように、私の全身はぞくっと痺れるように震えて、涙が、ぴたりと止まる。
「う
……
嘘
……
! ど
……
どう、して
……
!?」
「ふふっ
……
。
……
全く、キミは
……
本当に、昔から
……
」
どうしてあなたが笑ったのか分からないし、今のあなたの言葉も、分からなかった。
どうして自分から、幸せになれる機会を投げ打ったのか。
私は視線を地面に向けるしかなくて、その時、ふと、テントの近くに小さな赤い鳳仙花が咲き並んでいるのが見えた。
不穏にしか見えなかった赤が、輪郭を取り戻しつつある中でも微かに滲んで、ゆらゆらと揺れて、とても綺麗な赤に見える。
涙の止まった私の耳元で、あなたが小さく息をつく。
その息は微かに震えていて、不思議な緊張を感じた。
──どうして?
先ほどの私の問いの答えの前に、あなたは私を、後ろから優しく抱きしめ直して。
そして、改めて耳元に唇を寄せた。
「──俺は、キミを
……
愛しているから」
1
2
3
4
5
6
7
8
@acadine
広告非表示プランのご案内