しくるの納戸
2024-10-05 22:44:48
45524文字
Public 影日
 

桜のしたに埋めてきた

影日/三年になった影←日の日が恋慕を殺す話。


裏話的なもの。読まなくていい。

◆ひなたのひるのこ
 ”桜の降る中、淡々と自分の恋心を殺し続ける日向翔陽”
 を頭の中に思い浮かべながらプロットを切った、第一話。まさかここまで湿っぽく(長く)なるなんてこの時は思っていなかったのです。
 タイトルはそのまんま水蛭子(ひるこ)から。イザナミとイザナギが最初に産んですぐ棄てた不吉の子。イコール日向にとっては生まれてはいけない感情(恋)。というのを主張したかったのでこの題にしました。日向が一番最初に恋慕を殺した際に排水口に流したのも、生まれた水蛭子を葦の舟で放流したことを意識しています。ひらがなの可愛らしいフォルムで不穏なこと書いてあるのが好きです。
 しょっぱなからモブの原田さんが出張ってきますが、彼女に裏話は無いです。日向の前の席になれて人口の多い苗字、とのことで原田にしました。
 影山は、日向が恋を自覚した辺りから視線が違うことに気づいてはいたのですが、丁度日向が自分の道を考え始めた時期というのもあって気にしてませんでした。で、このタイミングで明確な引っ掛かりになり初めて本人に訊ねてみたのですが、答えは「踏み込むな」だったのでバレー関連じゃないなら放置でいいや……で、コレです。


◆生者に梔子
 性欲が先行するならまだしも、他感情に情欲が結びついたらもう後戻り出来ないんですよ、な話。
 思えば、この話が全体の湿度を底上げした原因かもしれませんね。自分のヘキが出まくった回なので書いていてとても楽しかったです。私は世俗的な欲のある受が大好きなので、受が攻を思って自慰する描写があると高らかに拳を突き上げてしまいます。貫通済みでも自慰は前でして欲しいタイプの変質者。
 影山は自己管理に厳しく菅原から優しさを学んだ人間なので、この時日向に甲斐甲斐しくしているのは純粋な善意からです。日向もそれがわかっていて、だからこそ余計に後ろめたいのでした。日向くんおめでとうポイントを挙げるとするなら、それでもジャージを渡すまでしてあげるのは日向相手だけだよ、というところですかね。そこに恋慕は無いのですが。
 お気に入りは「何枚も、何枚も、何枚も、」の下りです。梅雨のホラー。繰り返し回数を増やしたり減らしたり変更のたびに黙読しながら、どれが一番凄みを出せるか試行錯誤した記憶があります。心地よいテンポからすこぉしだけズらすといいかんじ。
 題は「死者に口無し」の駄洒落です。死者に喋る口は無いが、生きている人間は口を噤むのだ。ところで梔子って初夏の花らしいですねタイトル付ける時初めて知りました。


◆胎児
 連作の途中で差し込まれた別の話、に見せかけた前日譚というものをやりたかったのですが、早めに同じモーメントへぶっこんだのであんまギミックにはならなかったですね。日向が第一話で忘れていた恋のはじまりの話。
 因みにこれは「嬰児」というタイトルで過去に投稿した作品のIFなのですが、これはこのシリーズの原型となった没作の一話目になる筈のものでした。水蛭子じゃねえか。
 嬰児と胎児は話の流れ自体ほぼ同じで、ただ最後に山口が「まるで恋」という言葉を実際に口に出すか否かの差があります。山口が日向に告げて恋慕を自覚させたら「嬰児」、言わずに産み落とさせなかったら「胎児」になります。山口に背負わせる役割がでかすぎる。
 唯一まともにバレーをしているのが番外編みたいなところなので、なんというか申し訳ない気持ちになってますいつも。でもバレーやる二人は原作で書き尽くされているので……二次創作オタクが埋めるのは原作で描かれないだろう隙間なので……ゆるして。
 試合の描写も嬰児からはいくつか修正してるのですが、一番大きいのは「日向は囮だ。最強の囮」から「日向の武器は素早さと存在感だ」ですかね。この時点で最強の囮を名乗るのは早すぎるのと、あと原作で日向自身が言っていた「自分を囮だと思うことはたぶん一生来ないけど」と矛盾してしまうので慌てて修正しました。自分で自分に解釈違い起こすところだった危ない。


◆金木犀を灰にして
 金木犀の花言葉のひとつ「初恋」を意識した話です。金木犀が好きです。
 もともとは「金木犀すらかなわない」というタイトルで、影山の髪についた花が風に攫われるところで終わる予定でした。”金木犀すら敵わない影山のにおい”と”金木犀(初恋)すら叶わない”のダブルミーニング。タイトルとしてはこちらの方が綺麗だったな、と思わなくないのですが、この先の展開と、肉付け中にやたら湿っぽく重たくなってしまった前話までのことを考えた時に、叶わないだけではあまりに弱すぎると思い、影山の手で灰にして貰いました。強火で行きましょう。
 実をいうと、追いすがる感情に鉈を振り下ろした先からは執筆しながらプロットを組み直すことになったので、めちゃくちゃ難産な話になりました。骨組みが甘いとこういうことになります。要件定義は大事。
 苦労の甲斐あってうまく2月の話に繋げられたんじゃないかなと思っています。
 個人的には、ここで同学年を全員出せたのが嬉しかったです。なにが個人的にはだ。個人的な話しかここにはない。
 ところで、たしかに金木犀の花言葉のひとつには「初恋」がありますが、どちらかというと銀木犀の方がその意味合いが強い、というのを知ったのはもう投稿直前になってからのことでした。時すでにお寿司。


◆バレンティヌスは待雪草の夢を見るか
 あまりに擦られまくった「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」のもじり。一行に収まるか非常に不安だった。
 スノードロップの花言葉は「慰め」「希望」。春の兆しの花であり、また、イギリスでは死を連想させる花でもあるそうです。
 冒頭の日向家の会話を、情報を出して展開を進めつつも不自然な言い回しにならないよう苦心した記憶。でも夏ちゃんとのやりとりも出せて楽しかったです。相手によって少しずつ態度の変わる様はとてもにこにこします。
 雪の中に並んでいると、二人きりになった感じがしていい、と日向が思っているといいなと思います。思うのかな、宮城雪降りすぎて特別感はないかもしれない。


◆桜のしたに埋めてきた
 これが書きたかった。これが書きたくて前提を積み重ねました。日向が自分の恋慕を埋めて、アイスの棒で墓にして、影山君本人に祈ってもらうことで封印。成仏できてない、を誇張するなら影山に手を合わせさせる必要もなかったかもしれませんが、殺した奴が殺した自覚なく冥福を祈っているおかしみは、何としても入れたかったのです。それと、ここで本当に一旦、日向の恋慕にはカタをつけさせる必要がありました。なので9月の金木犀の話で影山の手によって完全に殺される展開は、まあ正解だったんだろうなと今更のように思いました。
 このタイトルには、何の元ネタも掛詞もありません。
 ただ、この話このシリーズの為のタイトルです。


◆墓荒らしかく語りき
 元ネタは「ツァラトゥストラかく語りき」。これも散々擦られてきているであろう。このタイトルをしょっぱなに出すと流石にネタバレにも程があったので、最後に持ってきました。最終回と合わせて、キュ本物の演出っぽくなったのでニチャりました。
 本当は、前話から直で最終回に繋げようとしており、これもギリギリまで書くか迷ったのですが、日向の持ってる情報や前提についてあまりに読み手と共有ができてないのではと思い、情報整理のために追加した幕間でした。情報整理と、日向の進行方向決定の両方を及川さんに担わせており、便利に使って申し訳ないと思いつつ余りの都合よ、有能に舌を巻きました。リオでの二人の関係が好きです。人生の先輩後輩でありながら対等なライバル。


◆傲慢と青春とゾンビ
 「高慢と偏見とゾンビ」。これすら「高慢と偏見」のパロディゾンビ映画のタイトルなので、もう何のこっちゃって感じですね。前回で墓荒らしという、ゾンビ映画お馴染みのスタートダッシュを及川さんに切っていただいたのであとはもうゾンビを出すしかない。今回の便利枠は侑くん。関西弁エアプ勢で大変申し訳なく。エセを感じたらご指摘をお願いします。高校時代はうまーく周囲に恋慕を隠してたのですが(月島は見て見ぬふりしているかも)、及川さんに指摘されてからは大丈夫そうな人には打ち明けています。侑が大丈夫判定なのは大丈夫なのか?って感じですが、彼はいい塩梅で他人を背負いこまず面倒ごとから距離を置いてくれるので日向にとっては相談(愚痴)に気安かったみたいです。ちなみに、侑は日向の相談を聞きながら、いや言うてあっちも脈あるやろ、と思ってたら全然なさそうだったので戦慄してました。最後の「うちのスパイカー」も、なんかこれで引っかかってくれないかな、みたいな淡い期待半分ですね。残りの半分は挨拶文としてのセッターポジ煽りです。セッターには皆「自分がコートにいる間は、スパイカーは全員自分のだし?」みたいな意識をうっすら持っていて欲しい夢。
 影山と日向の感情については、ここで出した情報が全部です。むしろ、影山の感情経緯をここまで詳細に書かなくてもよかったかもなーなんて思いつつ。もったいないので全部のせちゃいました。
 今後はどうなるのか特に私も定めてないので、煮るなり焼くなり好きに想像してくださいなんですけど、一応ゾンビ映画としてはゾンビにかまれたらゾンビになるのが王道だよな、というのをゾンビ映画ではない小説の解説の締めとして置いておきます。


 改めて、最後までお読みいただきありがとうございました。