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乙麻呂
2024-09-15 18:27:38
37637文字
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かいこさんの現代AUネタまとめ
かいこさんの現代AU風情の芸能ネタに夢を見過ぎで、色々と書き散らかしてしまった物をまとめました。《三次創作》です。
仙京坂35の活動やその他色んな部分は捏造と妄想です。
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《風信が慕情のぬいを見つける話》
慕情の自宅のテーブルに異質な物が置かれているのが目に付いて、思わず手を伸ばした。
どこからどう見ても、ぬいぐるみだ。それも子ども用のおもちゃではなく、そこそこ複雑な作りになっている。
「これは?」
怪訝に呟くと、慕情はチラリとこちらを見て興味の感じられない声で言った。
「今度のライブのグッズの見本だ」
「お前、この前もライブしてなかったか?」
疑問に思った事をそのまま言えば、慕情は馬鹿にしたような笑みを浮かべた。
「私達のライブのスポンサーは一箇所じゃ無いんだよ。特定の企業だけを立てるわけにもいかない」
アイドルにしてはやたらと捻くれた言い方に、風信は眉を寄せた。
「それはそうだろうが
……
」
似たような世界に身を置く自分の前で取り繕ったりはしなくて良いが、それにしたって言い方があるだろうに。
下手な奴に聞かれたら、それこそ活動を減らされかねない。
慕情は悪びれもせず、フンと鼻を鳴らした。
これから仕事があるらしく、その姿は《アイドル仕様》だ。
高い位置で結んだポニーテールと、大きな青いリボン。
局でメイクをしてもらうからと化粧はごく軽くだが、それがかえって生々しい存在感を放っている。
いっそガチガチのアイドルメイクでもしててくれた方が、まだ一線引いた見方が出来るだろう。
もっとも、慕情は俺が「宅デートみたいで落ち着かない」なんて言った所で小馬鹿にするか怒るか呆れるかのどれかだろうが。
「へぇ、ライブって言うのは光る棒とか団扇とかタオルを売るものかと思ってた」
風信が呟くと、慕情は腕を組んで言った。
「そう言う物もある。ライブに直接関係無いような記念グッズみたいな物も作るんだ。サコッシュとかシュシュとか、あとエコバッグとか」
「へぇ」
風信の片手にすっぽり収まってしまうような人形は、慕情を模しているのが分かった。
トレードマークの、髪を結ぶ大きな青いリボン。黒を基調としたワンピース。
「ふぅん」
前、後ろと色んな角度から眺め、そのままひょいとひっくり返した。
「
………………
」
「変態か?」
害虫でも見るような目で慕情が吐き捨てる。
風信は何でも無い顔でまた人形を元に戻した。
(なんだ、スパッツか
…………
)
がっかりなどしていない。
ただ、《再現度が高いな》と思っただけだ。
いや
………………
「
…………
何だ?」
風信の何とも言えない目に、慕情は片眉を上げた。
私服だろうワンピースは芸能界の女優
…………
いや、男優に比べてもシンプルなデザインだが、後ろに深くスリットが入っており、後ろを向くと膝裏がチラリと見える。
襟元が大きく開いたデザインなのは、肩幅があるからだろうが
……………
(ぬいぐるみより本体の方が露出度が高いな)
思ったが、口には出さなかった。慕情は訝しげな顔をしていたが、風信が慕情の人形を握りしめたまま離そうとしないのを見ている内に口元に悪戯じみた笑みが浮かんだ。
「何だ、お前でもそう言う人形に興味があるのか?」
「そう言う訳ではないが
…………
」
自分にはおおよそ所縁の無い製品に、好奇心は刺激されていた。
風信は、ぬいぐるみとしてぎりぎり許せる範囲だろうムスッとした顔をじっと見つめながら言う。
「これ、師青玄のもあるのか?」
「当然だろう」
「ライブだけで売るのか?」
「当然だろう。まぁ、事前通販があるから
……………
」
答えかけ、慕情はまじまじと風信を見つめた。
「何だ、まさか買う気か?」
「聞いただけだ!」
風信の手に思わず力が入る。
ぬいぐるみの慕情はくしゃりと潰れるが、本物の慕情は潰しても潰れなさそうな太々しい顔で笑いを漏らす。
「残念だが、買うならまずはファンクラブに入る事だな」
「ハァ?グッズを買うのにわざわざファンクラブに入るのか?」
「ライブのチケットはファンクラブの会員しか申し込めない。なら、そのグッズも当然会員しか買えない」
「面倒くさいな」
思わず渋い顔をする風信に、慕情はフンと鼻を鳴らした。
「そう言うシステムなんだから仕方ないだろう。それに、変なやつにチケットが渡らないようにしたり、転売防止だとか利点もあるんだよ」
そのわりに投げやりな口調だ。慕情も面倒臭いとは思ってるらしい。
「はぁ
…………
」
風信はぬいぐるみを改めて見つめた。
ファンクラブだとかそう言うのは全く分からない世界だが、少なくともこのちっぽけな人形は人形にあるまじき値段がすると言うことだろう。
そう言われてみれば、このぬいぐるみもひどく気位が高そうな顔をしている気がしてくる。
服の生地も良いものだし、ぬいぐるみ自体の手触りも悪くない。
手をフニフニと揉んでみたり、衣装の構造に舌を巻いたりしていると、慕情がふと吐き捨てた。
「ハ、そんなに食い入るように見て、よからぬ事でも考えてるのか?お前はそんな人形でも食指が動くんだな。私にさせたい事でもするのか?」
「
……………
」
特に複雑な思考も無く、ただぬいぐるみを触っていた風信は一瞬ポカンとした。
その顔に、本物の方の慕情の、リボンと化粧で彩られた顔にジワリと天然の赤みがさす。
「いや、何でも無い」
「ああ、えっと
………
」
風信は遅れて慕情の嫌味の内容を理解した。
ぬいぐるみに欲情なんて思考、微塵も浮かばなかったから考え付かなかったが、成る程。
慕情のぬいぐるみを見て、それからそのモデルであるアイドル本人を見る。
ぬいぐるみにアイドルの姿を重ねるなら、そう言う見方もあるのか。
風信は首を傾げた。
「つまり、服を捲っても良いのか?」
ぬいぐるみにした事で、許されるなら慕情本人にしたい事と言ったらまずはそれである。
慕情の白い顔は、化粧でも隠しきれない程に赤く染まった。
「いいわけ無いだろう!?変態か??
」
慕情は風信の手からぬいぐるみを引ったくった。
さて、胸の奥にモヤモヤとした何かが引っかかった風信が仙京坂35のライブグッズを検索し、ファンクラブ入会に誘導されかけたのはその数日後の話である。
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