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camellia57
2024-09-02 06:47:23
38497文字
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君の横顔に恋してる
アリスに一目惚れした青火村くんの話。
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おかしな出会い方をしたおかしな男は十四年経った今も隣にいる。
疏水通りのベンチに座って満開に咲いた桜を二人で眺めていると心地よい風が吹いて花びらがハラハラと舞う。掌を差し出して見れば薄ピンクの桜の花が落ちてきた。
「何度見ても見事なもんやなあ。今年の桜も綺麗や」
「そうだな」
通り過ぎる若者たちはスマートフォンを向けて写真や動画を撮影している。
私たちの間にはない習慣だ。
「君の言うた通りになったな?」
「何の話だ?」
「持ち運べる電話を個人でも持つようになるって。今はもう電話どころかパソコンくらいの機能あるよな。技術の進歩ってすごいわ」
「いくら進歩したってそれを持ち歩いてくれなきゃ連絡も取れないんだけどな」
心当たりがありすぎて言い返せない。
「スマホを持たずに散歩。画面を開きっぱなしで既読がついても返事がないことはしょっちゅう。どこにいるのかと聞けば『今四天王寺』あそこがどれだけ広いと思ってるんだよ。せめて四天王寺のどこにいるのか言え」
「いや、ほら、君が来たときに同じところにおるかわからんやろ?」
「
……
それは待っててくれよ
……
」
はぁ、と肩を落とす火村。
「合鍵渡してるんやし、俺のマンションに好きに入ってええのに」
遠慮があるのか、使われたことはほとんどない。
「主不在の場所は落ち着かないもんなんだよ」
「ふーん?」
「アリスの言った通りにもなったじゃないか」
私の右手を握りながら火村が懐かしそうに言う。
「俺の?」
「いつかは『先生』になるって。有栖川センセイ」
「君の言うた通りにもなったで、火村センセ」
遠い過去に話した通りの将来の姿。二人ともその夢の入り口には立てた。まだ道は途中で歩き続けている。
「限定的でも近い将来には認められる日が来るって」
「あぁ」
火村とパートナーシップ制度で家族になるのはまだ先の話だが、きっとそう遠くない未来に訪れるだろう。
「そろそろ帰らんと君の愛猫たちがお父さんを恋しがってしまうな」
「チュールを手にしてればアリスのところにも寄ってきてくれるぜ」
気がつけば三匹に増えた愛猫に囲まれて、縁側で、二階の角部屋で、光を浴びて微笑む火村の姿を見るのが好きだ。本人には教えないけれど。
立ち上がった火村が差し出した手をまた繋ぐ。指の間に指を絡めて。
春の日差しに照らされて、気がつけば増えていた火村の若白髪が銀色に輝く。
出会った季節がまたやってくる。
あの日に生まれた種がゆっくり芽吹いて、今も二人の中に咲いている。
ともに過ごす時間が栄養になるのなら、この先もきっと枯れることはないだろう。
ずっと、君の横顔に恋してる。
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