camellia57
2024-09-02 06:47:23
38497文字
Public
 

君の横顔に恋してる

アリスに一目惚れした青火村くんの話。


 試験が終わった!
 手応えは……なくは、ない、気が……する。レポート課題も提出済だし、これで無事に夏季休暇に突入できる! と晴れ晴れとした気分で図書館に向かう。この二ヶ月強の夏休みの間に新しく小説を書き上げたいのだ。
 春に応募した新人賞の結果が出るのはまだ先だが、あの投稿作は最終的にクオリティを上げきれなかった。どこまで通過できるかわからないが――せめて一次選考は通過して欲しいものだが――最終選考まで残っているイメージは正直湧かない。ここで落選になっても諦めるつもりはない。ただ結果を待つだけではなく、次に向けて一つでも多くの作品を、文章を書いて筆力を上げるに越したことはないだろう。

(火村はまた読んでくれるやろうか)
 はじめて自分の言葉に興味を持ってくれた、はじめての読者。
 火村の言葉がどれほど心に響いたのか、あれから何度思い出したか、きっと言った本人はわかっていないだろう。でもそれでいい。自分の中にずっと消えずに残っていることは確かなのだから。

(あ、先にいた)
 図書館の奥にある六人掛けのテーブルの一つ、その右端に火村が座っていた。火村も試験が終わったというのにそんなことは彼の目指す研究に関係ないことなのだろう。隣に座ってお疲れと目線で伝え合う。
(いつも火村の隣空いてるよな? 今日はそんなに人おらんけど試験準備期間はまあまあおったのに。来るかもわからん俺のためにほんまに隣を空けてくれてるんか? と思ったけど別に荷物とか置いて確保してるわけでもないよな。この間は女子に囲まれてたけど……基本は近寄りがたく思われてるんやろうか? でも一緒にいると視線感じるのは……火村のせいやよな? 観賞用に思われてるんか……? 火村は気にしている素振りもないけれど、もしそやったらあんましいい気はせんな……俺がそんなことを思う権利もないんやけど)

 今日はやたらと火村のことに思考が引っ張られてしまう。頭を軽く振って創作ノートを取り出す。詩人探偵を主役にした違う話を作れないだろうか? アイディアの種を取り出してマインドマップを作成する。頭の中の漠然とした考えを見えるようにすることで別の視点が生まれることがある。種を芽にして咲かせるために自分の中を深く掘り進んで見つけ出すしかないのだ。正解なんてわからなくて孤独な作業。でもやるしかない。
 
 薄っすらながら使えそうなトリックの輪郭が浮かんできてそれを掬い上げたとき、視線を感じてちらりと隣を見ると火村と目が合った。気がつくと思っていなかったのかバツが悪そうな顔をしている。……いつから見ていたんだ? そんな疑問が顔に出ていたのか火村が立ち上がって帰り支度を始める。話は外で、ということらしい。

「試験お疲れ様やったな、お互いに」
「ああ、アリスもお疲れ。……さっきは悪かった。別にずっと見ていたわけじゃなくて、あのときたまたま目が合っただけだから」
「お、おう。そうか、そやったら逆に悪かったな、気にしすぎてしもたみたいで」
「いや、アリスが悪いわけじゃないから。ただ、アリスが小説のことを考えているときの横顔に無意識で惹かれてしまうだけなんだ。最初にも言っただろう? 一目見たときからそれを思い出してばかりだって」
 インパクトが強すぎて忘れられそうもないアレのことか。
「それ言うなら俺も君の横顔はたまに思い出しとるよ」
 鼻筋の通った綺麗な、とは言わなかった。
……そうかよ」前髪で隠れて表情はよく見えないが火村の耳が赤く染まる。
 こんな言葉、今までに飽きるくらい聞いているのでは? と思うけれど、不意の褒め言葉には弱いのかもしれない。
「おい、にやにやするなよ」
「してへんわ」バレたか。


「新作書き始めるのか?」
「うん、夏休み中に書き上げたいとは思ってる。な、完成したら読んでくれる?」
「読ませてくれるのか?」
「頼んでるのは俺の方やで? ミステリ小説好きなわけやないのに、申し訳ないけど……
「アリスの書くものには興味あるよ。だから読みたい」
「そんなら、頼むわ。でもなぁ、家と図書館の往復だけやなくて、違う作業でのインプットが必要な気ぃするんよな。机に向かわな書けんけど、それだけでも駄目っちゅうか……
「それなら下宿に来るか?」
「え、行ってええの?」
 前々から火村の下宿が気になっていた自分にとってありがたいお誘いだ。
「お盆中は大学の図書館閉まってるだろ。下宿も帰省する人が多いから人が少なくなるしちょうどいいよ。大家さんに確認してみるけど、アリスに会いたがっていたから大丈夫だと思う」
「俺に?」
「弁当作っただろ? 俺が勉強とバイト以外のことするの、なんでか嬉しそうだったんだよな。友達、と食べるって言ったら目細めて笑ってた。その子いつでも連れておいでって。あ、そうだ、アリスが来る日は唐揚げをリクエストしとくよ。揚げ立てはもっとうまいからな、楽しみにしてくれ」

 友達。今の関係を説明するのにそれが一番近い言葉だろう。まさかプロポーズした相手、と正直に言うわけにもいかないだろうし。それは理解できるのになぜだか胸が微かに痛んだ。

「まだいつ行くかも決まっとらんのに気が早いで。俺も親に言っておかなあかんし」
 おにぎり作りを始めたとき、うちの親の反応も似たようなものだった。お弁当のお礼にと手土産を両手いっぱいに持たされそうである。
「下宿の電話番号、伝えておくよ」とメモ用紙を渡されたのでこちらも家の電話番号を書いて火村に渡す。
「君に直接連絡できたらええのにな」
「掛けてくる時間がわかれば電話の前で待つけど」
「学校で会えんのにその時間をいつどうやって君に伝えたらええの、ってことにならん? 伝書鳩でも使うん? そう言うことを気にせずに君と話ができればなぁ、って思ったんや。いつかは離れていてもテレビの中継みたいに顔を見ながら話せるようになるんやろか?」
「持ち運べる電話が登場し始めたようだし、企業だとテレビ会議ってやつを導入しているところもあるみたいだぜ。個人でもそういうことが出来るようになる未来はそう遠くないんじゃないか? 俺たちが爺さんになるよりもっと前にそんな日が来ると思う」
「ふぅん、じゃあ俺たちの未来は明るいんやな」
「そうかもしれないな。今はそんな未来よりこの夏の過ごし方を考えないか? また明日も来るだろ? そのときに色々決めようぜ」
 そんな手段を持たない今の自分達はこうやって顔を合わせて話すしかないのだ。



……すごい量だな」
 下宿の最寄り駅の改札口で待合せた火村に会うなりそう言われた。手土産が歩いてきたようなものなのでそう言いたくなる気持ちもわかる。
……これでも減らしたんやで。あれも持っていけ、これも持っていけって、勢いがすごくてな……。そんなにしたら相手が逆に気を遣うやろって言っても聞き入れんくて。日持ちするもんが多いはずやから。あとええとこの昆布とかも入ってるからお味噌汁とか和食の出汁取るのに使ってもらってって。大阪と京都やとちょっと味の好みが違うかもしれんけど」
「へぇ、それは楽しみだな。荷物、半分持つよ」
「俺別にか弱い女子ちゃうし」
「俺が手ぶらなのにお前が両手と背中に荷物抱えてるのはどう見てもアンバランスだろ。非力だって言ってるんじゃないから。ほら」
 片手分の紙袋を火村に手渡す。正直手のひらの感覚がなくなりかけていたから助かった。
「今日はさ、荷物もあるからこのまま下宿行くけど、今度は橋を渡ってあっちの方にも行こうぜ。聞いたことあるだろ? 鴨川デルタ。少し歩くと下鴨神社もあるし。車だと中々停める場所ないらしいんだけど歩きなら問題ないしな。雰囲気のいい喫茶店もあったぜ、喫煙可の」
 降りた後、出口を確かめに案内板を見ながら周辺を調べてさすがに有名スポットが多いな、と思っていたが火村の方からこんなにあちこち紹介されるとは。当たり前のように『今度』の話をしてくることがなんだかムズムズする。
「アリス?」
 少し前を歩いていた火村が振り返る。返事がないことが気になったのだろうか。
「あ、ああ、うん、俺も興味あるから行きたい」
「大丈夫か? この荷物での移動で疲れたか? それともこの夏の暑さに参った?」
「いや、大丈夫や。はじめて来た場所やからなんや珍しくてキョロキョロしてしもうただけで。体調悪いわけやない」
「ふぅん……
 なにやら思案した後で、こちらに向かって手を伸ばされた。
 荷物を寄越せということだろうか?
「これ以上君に持ってもらわんくても大丈夫やで」
「そうじゃなくて」
 そう言うと、伸ばした手でこちらの空いた手を掴んでくる。掴むと言うかこれは。
……え? え、ちょ、ひむ、」
 そのまま手を繋いで歩き出す。
「あちこちふらふらされて迷子にでもなったら困る」
「な、なるわけ、あるか! 俺のこといくつやと思てんねん!」
 こちらが振りほどこうと思えば離せてしまうくらいの力で握られた手。
 きゅっ、と力をこめると火村の手がぴくりと震えてこちらをちらりと見てくる。
……下宿まで、もうすぐだから」
……そか」

 ただ手と手の表面が触れているだけなのに、どうしてこんなに胸がざわつくんだろう。いつかの喫茶店で指を絡めたときよりももっと。しかし自分からしてきておいて基本無言なのはどうなんだ、火村。



「着いたぜ」
 築年数は感じるけれど丁寧に手入れされていることがわかる日本家屋。二階が下宿生の部屋なのか同じ大きさの窓が並んでその下に小さな木製のベランダがある。
 長年この土地で下宿を営んできているんだろう。周囲に溶け込んでいる。もしこの下宿が近所に建っていたら少し浮いてしまうかもしれない。隣同士なのに大阪と京都でこうも空気が違うものなのか。私の探偵が住むとしたらどちらが似合うだろう。
「アリス?」
「あ、すまん、立派な建物やなって」
「詳しく聞いたわけじゃないけど大家さんの旦那さんが遺してくれたものらしい。毎年春には下宿の前で店子みんなで写真を撮るのが恒例なんだ」
「へぇ。そういうのええなぁ」
「まぁ、立ち話もなんだから中へどうぞ。大家さんも待ってる」

 火村が玄関引戸を開けて入っていうので後に続く。

「ただいま帰りました」
「お、おじゃまします」
 中から穏やかな笑みを浮かべた小柄な女性が出迎えてくれる。
「火村君、おかえりなさい。いらっしゃい、外は暑かったでしょ?」
「婆ちゃん、これいただきました」
「あ、有栖川です! 火村君にお世話になっております! お弁当も! ありがとうございます! これみなさんで! あ、どこに運びましょうか!」
 火村に持ってもらっていた分と合わせて大量の紙袋を差し出すとその数に驚かれてしまう。
「あらあら、こんなにぎょうさんもろてええんでっしゃろか」
「は、はい! ご迷惑でなければ!」
 ガチガチに緊張しているのがおかしかったのか火村が隣で吹き出す。
「取って食われるわけでもないんだからもっと肩の力抜いていいのに。婆ちゃん、手土産はとりあえず居間に置いておきます。アリス、俺の部屋は二階だから。階段がちょっと急かもしれないから気をつけろよ」
 今度は手を伸ばしてこなかった。




「はぁ~……
 火村の出してくれた座布団の上に座ってやっと落ち着けた。
「そんなに緊張するもんか?」
「するやろ。君がお世話になってる人やで? 失礼あったらあかんやろ。できるなら印象良く思われたいしやな」
 そう言うと火村が目を瞬かせる。そんなに不思議なことを言ったか?
「あ、君、大家さんのこと婆ちゃんって呼んでるんやな」
……ああ、うん」
「女性の年齢のこと言うのもなんやけど婆ちゃんって歳には見えんかったな。でも大家さんって呼ぶより親しみが込められてる感じがしてなんかええなあって思った」
「そうだな、仇名みたいなもので下宿生みんなそう呼んでるよ。ああ見えてお孫さんもいるから。だから『婆ちゃん』なんだ」
「そうなんや」
 この下宿から第二の実家のような空気を感じるのはきっと大家さん――婆ちゃん――の人柄なんだろう。意外にも他の下宿の人たちとうまく生活しているようだし、火村は自分よりも他人と暮らすことに向いているのかもしれない。実家にいても部屋に籠りがちな自分は初対面同士で共同生活なんてできるだろうか。自室があったとしても完全に一人の時間を確保するのは難しそうで、一ヶ月……も耐えられないかもしれない。もし火村とだったら一緒に暮らせるだろうか? 出された麦茶を飲みながら火村の部屋を軽く観察する。六畳二間の片方が寝床のようで、もう片方――今二人で居る部屋――に溢れている蔵書が気になってつい本棚を見てしまう。自分の書棚には並ばないラインナップだ。
「コソコソ見なくても堂々と見ればいいし気になるのがあるなら貸すよ」
……バレバレやったか」
「これとか比較的読みやすいし執筆の参考になるんじゃないかな」
 火村が本棚から数冊取り出して渡してくれる。
「あ、ありがと。じゃあ君推薦の本、借りることにするわ」
 それにしても。
「畳のせいやろか、君の部屋、不思議と落ち着くな」
 この部屋に今までに何人もの下宿生が暮らしていたんだろうけれど、今はここは『火村の部屋』なんだという空気で満ちていて、それが心地よい。
……俺は少し、落ち着かない」
「え、なんでや? 自分の部屋なのに?」
「そりゃ、アリスがいるから」
「やから、それがなんで?」
「わかんないならいいよ」
 ふいっと目を逸らされてしまう。急にどうしたというのだ。
「そう言えば君って自動車免許持ってるん?」
「そんな金ねぇよ、わかってるだろ?」
「確認しただけやないか。俺も持ってないし。うーん、車も免許もないと移動手段はやっぱり電車かな。行ける範囲は限られてくるけど近場にもええとこありそうやからええか」
「何の話だ?」
「夏の計画立てようって話してたやろ? せっかくやったら一緒に旅行したいなって。たまにはバイト代を本以外のことに使うのもええやん。金はなくても時間があるのが大学生やしな。君はどこか行きたいところある?」
「旅行」
「うん」
「誰と、誰が?」
「俺と君が」
「二人で?」
「そのつもりやけど?」
…………
「火村? どうした?」
 長い指で唇を撫でるように動かして火村が黙り込む。
 ここまでの会話に推理するようなことはないはずだが?
……考えたこともなかった。アリスと二人で旅行なんて」
「えっ?」
 そう……なのか?
「あ、ご、ごめん、俺、急に距離詰めて。気が早すぎたよな。君とやったら楽しい気がして、その、」
「誤解しないで欲しいけど迷惑だなんて思ってない」
 こちらが言おうとしていたことを先回りされてしまう。
「そう、なん?」
「なんというか……講義のない夏休み期間でもアリスに会えて、アリスが俺の下宿に遊びに来てくれるってことでもう充分だったからそれ以上のこと、考えてもなかった」
 ……なんだか熱烈な告白を受けているような気持ちになるけれど、これはあくまでも火村にとって友人の範囲の話だということを忘れてはいけない。だって火村に恋愛対象として見られているわけではないのだから。その証拠に『好き』だと言われたことは一度もない。
「君は、欲がないんやな」
「欲? あるだろ? 俺が言ったこと忘れたのか?」
 結婚云々の話のことか。それを聞いたときだって恋愛感情がわからないと言っていたしその話を持ち出すこともなくなっていたから気が変わった可能性も考えていた。
「忘れてなんかないけど」
「けど?」
「火村は今も気持ちが変わってないんか?」
「最初に言ったときからは多少変化してる」
 やっぱり、そうなのか。
「おい、誤解するなよ?」
「誤解ってなんや?」
「アリスのことだから悪い方向に想像したんだろ? そうじゃなくて、あのときよりもっと結婚したいと思ってるし1日でも早く付き合いたいよ」
 そんな顔でそんなことを言うのは反則だ。
「た、タイム……
「返事が欲しいわけじゃないし困らせたいわけじゃない。アリスのタイミングでいいんだ」
「そんなん、俺にとって都合よすぎやない?」
 火村からの好意を受け取るだけ受け取って、そのことに甘えればいいのだと言う。本当にそれでいいのか?
「そもそも、君は俺といて楽しいんか? つまらなく……ないん? 君と共通の趣味があるわけでもないし、本かって興味のあるジャンルが違うやろ? ま、まあ、君が聞いてくれるからつい好きなミステリ小説の話してまうけど……
 後ろ向きな心情を吐露しだすと俯いてしまうのはどうしてだろう。こんな話をされても困るだろう。火村の反応がこわくて顔が見れないでいると頭の上でくくっと笑う声が聞こえる。……笑うところ、あったか?
「本人が一番気づかないものなんだな。アリスといてもつまらないって? そんなこと言うやつがいたらアリスのことをわかってなさすぎるんじゃないか? アリスは俺にない視点を持っていて自分とは違う人間だと思うけどその違いが面白いのに」
「君ってほんまに変わってるな?」
「まったく同じである必要ないだろ? アリスはアリスで、俺はそのアリスがいいんだから」
 手を伸ばしてこようとするので思わず身体を引いてしまう。
「わ、わかった、から」
 旅行の話からなぜこんなことに。
「君と付き合ったら、甘やかされすぎてどろどろのダメダメになってしまいそうや……
「へぇ、それもいいな」
「俺はよくないわ……
「残念だな。まあそういうわけだから俺はアリスと一緒にいて楽しいし、アリスも同じ気持ちだったら嬉しい。旅行……は考えたことなかったけどアリスとだったらどこに行っても楽しめると思う」
「じゃあ、いつか二人で行きたい場所できたときに行こうや」
「あぁ、そうだな」


「ここが今の君の帰る家、ってなんかええな」
「帰る家?」
「うん。俺にとっては実家がそうなんやろうけど帰る家って言うのとはちょっと違う感じがする。生まれた……、育った場所? って言うんかな。近い内に出ていくことになるやろうし」
……じゃあ、部屋が空いたらアリスもここに住む?」
 ここに? 火村と同じ下宿に? 大阪を出て?
「それは……魅力的なお誘いやけど……難しいと、思う。ごめん……
「だよな。言ってみただけだから気にしなくていい。わかってるよ」
 頭にぽんっと手を乗せて「そろそろ夕飯の時間だから台所に行こう。今日は婆ちゃん特製の唐揚げだぜ? あ、降りる時も階段、気をつけろよ」と言って部屋を出ていく火村。

 出来立ての唐揚げは非常に美味でご飯のおかわりがとまらなくなりそうだった。
 これがもし毎日食べられるのなら下宿に住む……のもやぶさかでは……。いやいや……。しかし……。悩まし気に唸っている様子が余程おかしいのか火村の肩が震えてる。。
「やっぱりアリスの心を掴むには胃袋からなんだな」
「有栖川さん、見とってきもちがええ食べっぷりどすなぁ。そんなに気に入ってもらえて嬉しおす」
 最初は緊張したけど三人で囲む食卓は笑い声が絶えなくてずっと木漏れ日が差しているようなそんな優しさに包まれているようなこの場所が心地よかった。