mishiadd
2024-07-31 22:03:01
21710文字
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カルデア剣陣営は恋愛ができない

カルデアの宮本伊織は普通に恋愛できるらしいことが発覚して「生前私とは恋愛してくれなかったくせに今更なに自分だけ普通の恋愛しようとしてんの?」ヤマトタケルvs「いちいち生前の宮本伊織と比べるのやめてもらっていいですか?」宮本伊織の雰囲気最悪ギスギス恋愛白書。左右決まってないシュレディンガー剣陣営。200000%ハッピーエンド…の筈!(ダメだったら教えてください…)
概要:https://www.pixiv.net/artworks/121033117
概念的裏面「アンダー・ザ・ローズ」:https://privatter.me/page/66be9dee6457e


甲の章・その二



うっかり口にしてしまったのは、きっと想いが大きくなりすぎて、それ以上隠し通すのが困難になってしまっていたからだ。

イオリと並んで、蜜のかかった団子を食べていたときだった。たまたま目の前で咲いていた桜の樹の下を、一組の男女が通り過ぎていった。
初々しい様子でつかず離れず、隣り合って歩きながら、時折目線を交わしては幸せそうに微笑み合う。それを不思議そうに眺めていたイオリに、思わず言ってしまった。

「誰かに恋をする心持ちとは、とても素敵なものなのだ」と。

「そういうものか」とイオリが頷き、既に小さくなりかけていた男女の後姿を眺めている。その端正な横顔に、思わず――衝動的に、重ねて言ってしまった。

「イオリ。私と、試してみないか? 恋とは一体どういうものなのか」

遠くを見ていたイオリが視線を戻し、隣に腰かけている私を見る。私の心臓が、ばくばくと飛び出しそうな程に暴れ回っている。相変わらず不思議そうな顔で私を見下ろすイオリの癖毛の前髪が、少しだけ首を傾げた拍子にさらりと揺れた。

「試す、といっても、やってみようとしてもそう簡単にできるものでもないのだろう。『恋』とは」
「そうかもしれない。――でも」

できる限り、努めて――平静を装って、床几の上に置かれたイオリの左手に、私の右手を重ねる。

「私は、イオリが好きだ。この想いが、きみに伝われば嬉しいし――もし、きみが同じ想いを返してくれたら、」

イオリの手の甲を握りこむ。自分の手が、小刻みに震えているのを感じた。

「とても嬉しい――と、思う――

とても幸せだ、とか、泣いてしまいそうだ、とか。
きっと、もっとうまく感情を伝える言の葉があったんじゃないかと、思う。それでも、それが私の精一杯だった。もしもきみが私を好いてくれたら、とても嬉しいのだ、と。
もしもきみが、私と同じように――私が、きみに恋をしているように。きみが、私に恋をしてくれたら。

イオリの、月夜の色をした涼しげな瞳が、ふっと細められる。それから、いつもの通りの穏やかな声で、言った。

「ああ。試してみよう。――おまえがそこまで言うのなら、きっと恋とは余程素晴らしいものなのだろうから」

そのときの、天にも昇るような気持ちを、今でもよく覚えている。






三日間、イオリは精一杯頑張ってくれた。
私の想いに応えようと、懸命に努めてくれた。私に恋をしてくれようと、本当によく頑張ってくれたのだ。

――そして、三日目の夜、イオリは私に告げた。

「元の関係に戻りたい」と。

そうして、我らはただのマスターとサーヴァントに戻った。――私の恋心は、なかったことになった。