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エス
2024-07-20 22:07:06
44944文字
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性癖パネルトラップまとめ
性癖パネルトラップのまとめになります。
四番だけR18なので気を付けて下さい。
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2 ワカ武・記憶喪失・まさるさん、ショタ・まろ主さん
「えっ」
友人の驚いた顔を見て、武道は思ったのだった。心外。
花垣武道七歳。人生二回目の小学生ライフを味わっている真っ最中である。同じく小学生二回目の男に、怪訝な顔をされたものだから、此方も此方で顔を顰めたのだった。
「えっ、タケミっち何してんの」
「宿題です」
「ワケ分かんねえ事言うなよ」
「分かるでしょ!? 普通の事しか言ってねえよ!」
小学一年生の帰宅は早く、また帰ったからと言ってじっとしているものでもない。ランドセルも放り出して遊びに行きそうなものだが、武道はランドセルを背負ったまま友人の家に押しかけていた。その結果が、宿題である。てっきり普通に遊びに来たと思った万次郎は、予想が外れ驚いているのだ。
「マイキー、タケミチ、スゲェアホっぽいけど、意外と普通」
もう一人、この場で武道同様真面目に宿題を熟している小学生が言った。此方は、小学生一回目である。大抵の人間そうである。
「明司君
……
!」
褒められてもいないが、貶されもしなかった事に、武道が感極まっている。感動のレベルが低い。そもそも、三途春千夜である。今は明司だが。武道にとっていい記憶ゼロの相手だった。なのでハードルが異常な程に低いのだ。人を傷つけず普通に生きているだけで百点満点。勝手に人生イージーモードである。
「字も思った程汚くないし」
そりゃそうだろ、と、春千夜の感想を聞いた万次郎は思った。花垣武道、見た目七歳、中身、二十六歳である。意外と普通も何も、小学一年生の問題が解けなかったら大問題である。字だって、周りに比べれば奇麗に書く事が出来て当然だった。何も驚くことはない。但し、佐野万次郎しか知らない事実である。
「マイキー君、宿題ないんすか?」
「あるよ!」
「えっ、やった方がいいんじゃないですか?」
「あのさ、オレ、精神年齢十七歳なんだけど」
「はい」
「出来ねえだろそんなこと」
「できますけど」
「オマエ、おかしいわやっぱ
……
」
得体の知れない物を見る目を向ける。その様を見た明司春千夜は首を傾げていた。この花垣武道なる子供が現れてから、佐野万次郎は変わったのだ。前はもっと子供らしい子供だったのに、急に大人びたのである。尤も、突然現れたこの子供は、見た目通りの子供である。中身が二十六歳と聞いても、絶対に誰も信じない位には。何せ、小学一年生の宿題を真面目にしているのである。
「お、今日も集まってんな」
ふと、上の方から声がした。子供たちが一斉に視線を其方へと向ける。佐野家は広く、交友関係が広い兄弟がいるため、ほぼ常に誰かが家にいる状態だった。現状のように弟の方の友人だったり、今声をかけてきた兄の方の友人だったり。よって、佐野家の兄弟のどちら側の友人もまた、相手の友人と顔見知りでもあった。それでも交友関係は広くとも、佐野家の中まで入ってくる者は、限られていた。つまり、余程に仲のいい相手である。
武道は、佐野真一郎を見る度、不思議な感覚に囚われる。前の世界線では会った記憶が薄い。でも確かに縁は繋がっていて、妙な感じだった。ただ何も難しい事を考えなければ、友人の気のいいお兄さんである。大抵何か食べ物だったり飲み物だったりをくれるので。
「こんにちは」
「ちは」
武道と春千夜が挨拶すれば、おう、と、返事をして、袋を出してきた。中には菓子が入っている。
「真面目にやってて偉いな。万次郎も見習えよ!」
「ヤダ」
答えは簡潔だった。武道は思った。反発せずに普通に熟す方が、子供っぽくないのでは? どう見ても精神年齢十七歳には見えない。しかし万次郎の方も、武道の事を中身が大人だとは信じ切れないでいるのだ。結局互いが互いを子供だと思っているのだった。
「
……
真ちゃん?」
万次郎が友人と一緒なように、真一郎も一人ではなかった。此方も友人連れだったのだ。武道はこの男を知っていた。今は兎も角として、前の時も面識があったからだ。ともあれ、そこまでの仲ではない。名前と経歴を多少知っているくらいで、為人ともなれば、今の方が多分知っていた。だが、ただ単に友人のお兄さんのお友達である。
「どうした?」
その友人のお兄さんのお友達こと、今牛若狭は、酷く驚いた顔で真一郎を見たのだ。
「なんで言ってくれねえんだよ!」
「えっ」
突然響き渡った大声に、子供たちは思った。何か始まったな、と。この家、急に何かが始まることが珍しくなかった。それ程、入れ代わり立ち代わり、いろんな人間が訪れるのだ。多分、長引くな。経験上悟った万次郎が菓子へと手を伸ばした。既に気分は観客である。
「アイツ、」
え、オレ? 驚いたのは武道である。アイツ、と、言いながら、今牛が指を差してきたからである。万次郎と春千夜を見てみれば、それぞれと目が合った。つまり、二人も武道を見ていたのだ。何かやらかしたと思われている事は明らかだった。心当たりはない。
「オマエの子だろ!」
「違いますけど」
何も考える事無く、武道の口から正解が出たのだった。花垣武道、花垣さん家の子であって、佐野さん家の子ではない。
「水臭ぇじゃねえかよ
……
」
「いや、だから違いますけど」
「え、オマエ、真一郎の子なの?」
「そうじゃない事は、一番マイキー君が分かってんでしょ」
「年齢的に無理だろ」
春千夜が一番的確な事を言った。年齢差を考えれば絶対にないと言い切れる話だった。
「いや、何言ってんだよワカ。知ってるだろ? あれは、タケ、」
「待った!」
「えっ」
「当てる」
何を? 全員が疑問を浮かべて、常に眠そうな気配の顔つきの男を見た。顔だけは酷く整っていた。言っている事は滅茶苦茶だが。
「武三郎だな!」
「違います」
どうやら名前を当てるつもりだったらしい。三郎とつけた時点で、完全に佐野家の三男である。真一郎、万次郎、武三郎である。実子につける名前ではない。
「よう、武三郎」
「違うって言ってんでしょ」
友人の悪乗りが早い。もう一人の友人は呆れている。くだらない、と、思っているのが丸分かりである。意味不明な事を言い出した友人をじっと見て、真一郎は言った。
「オマエ、酔ってんな?」
暫し考え、出た結論だった。聞いた子供たちは納得した。今牛若狭の酒癖の悪さは有名だったのだ。恐らくこういうのが、反面教師になるのだ。
「素面だよ」
酔っ払い、大抵己の状態を認めないものである。
「今日は一滴も呑んでねえ」
自信満々であるが、疑わしい一言である。麦芽になってビールに溺れたい等と言う男の言葉の信憑性は薄い。
「いや、記憶なくしてるじゃねえか」
「ある」
「ないんだよ! 現在進行形でないんだよ!」
頑張れ友人のお兄さん。武道は内心で応援していた。このままでは、武三郎が定着する可能性がある。尤も定着したとして困るのは本人だけである。二人の友人は我関せずの顔で傍観していた。
「オレは、覚えてる」
「いや、アイツの事忘れてんだろ」
「こないだ真ちゃんが、マンモスウレピーって言って、女子に引かれたの覚えてるぜ」
「言ってません」
言ったんだろうなあ。酔っ払いの言葉に信憑性はない。なかった筈である。なのに聞いた子供たちは信じたのだった。佐野真一郎そう言うところ、ある。元ヤンの兄が昭和の死語を使っている様を想像した万次郎の顔は死んでいた。
どんよりとした空気が流れる中、正気を失っているイケメンがとうとう動いた。子供たちは身構えた。此方に向かってきたからだ。但し、対象は一人だけだった。武道しか見ていなかったのだ。その武道の前で座り込むと、今牛は言ったのだ。
「オレはな、オマエの父親のダチだ」
武道は返答に困った。そもそも、佐野真一郎は父親ではないし、今牛若狭が佐野真一郎の友人である事など、百も承知である。
「つまり、オレとオマエが結婚したら、真ちゃんがオレの義理の父親にな、」
不自然に言葉が途切れた。漸く真一郎が鉄拳制裁に出たのである。遅い位だった。頭上から脳天に向かって拳を振り下ろしたのだ。大体根本的な事を言えば、同性同士で結婚は出来ない。何十年待とうと無理である。ただ、正気を失っている人間には分からないのだ。
「いい加減にしろよワカ?」
真一郎が口元を歪ませて凄味を利かせた。これに怯んだのは、武道だけである。今牛は平然としていた。
「挨拶は大事だろ!?」
「そこじゃねえんだわ」
「オレだって真ちゃんと家族になりてえんだよ!」
聞いていた子供たちは思った。話が変わった。こんな重い友人、嫌だな、と、思ったが、佐野万次郎と花垣武道も似たようなものである。自覚がないので、人の振り見て我が振り直せないタイプ。
「そしたら、コイツが出てきたもんだから、結婚するしかねえなって
……
」
「無理だから」
「お父さん、息子さんを下さい! 大事にします!」
「息子じゃねえんだわ」
「武三郎
……
オレが、幸せにするからな
……
」
「花垣武道です」
こうしてプロポーズをされた直後、漸く正式に自己紹介と相成ったのだった。順番などあってないようなものだった。最早、名乗ったから何だと言う話である。今牛若狭は花垣武道の事を武三郎と言う名の、佐野真一郎の息子だと信じて疑っていないのだ。
「見れば見る程、真ちゃんに似て
……
生き写しじゃねえか
……
」
「いや、似てないよね?」
「普通にマイキーの方が似てるよ」
それはそうである。花垣武道と佐野真一郎は赤の他人だが、真一郎と万次郎は実の兄弟である。比べる対象ですらなかった。
「嫁さんもちゃんと紹介してくれよな
……
」
「いねえんだよぶん殴るぞ」
「花垣さんて言うんだろ?」
あっ、そこは聞いてたんだ。花垣武道と名乗った子供の素直な感想である。武道は聞かない癖に、花垣は聞くらしい。他の子供二人は別の事を考えていた。花垣さんと聞いて頭に浮かんだのは、当然ながら花垣武道の実の母親である。そうして、確かに父親とは会ったことが無いな、と、そんな事を思ったのだった。尤も、会ったことが無いだけで、それが佐野真一郎である可能性はゼロである。
これ、酔いが醒めたらどうなるんだろう。
今牛若狭を除く全員の疑問だった。忘れていたことを思い出すのか、それとも、今起きているこの状況を忘れるのか。はたまた、全てを覚えているのか。何方にせよ、面倒な事になりそうだなあ、と、全員が思ったのだった。
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