enoki181
2023-04-22 22:56:44
49533文字
Public リプレイ
 

【フタリソウサ】グレイ・スター・デイ(雅信×真矢)【リプレイ】

PL:黝さん、エノキ
シナリオ https://talto.cc/projects/I0RwWqZgY-bmcLmfs_hv2


◇カーテンコール

雅信:家に届いた封筒の差出人を見たとき、とてつもなく驚いた。あの事件ももうしばらく前か、と感慨に浸る。

すぐ中を読み、なんとも形容しがたい気持ちになった。
これは俺たち二人に宛てられたものだ。タイミングよく今日はちょうど桐ケ谷さんが来る。共有するものだろうと、机上に置いておくことにした。
来るまでの一人の時間が手持ち無沙汰だ。
もやもやした気持ちを呑み込むため、家にある酒を煽った。次々と日本酒を注ぎ、体に入れる。

「あ、きりがやさんだ……ふ、ふふ」

だから、桐ケ谷さんが来た時にはすっかり出来上がっていた。
インターホンの鳴った玄関で彼を迎え、上機嫌に部屋へ案内する。

「手紙来ててぇ……読んでくださいよぉ」

真矢:いつものように様子を見に先生の家に訪れてみたら、もう既に出来上がっている先生に出迎えられて俺は少しばかり呆れながらも、先生に招かれながら家の中へと入る。

「酒くさっ!ちょ、なんでお酒飲んでんですか?!」

「え〜?手紙〜?なになに~……

そして酔っぱらった先生が手紙を見せてきた。
送り主はどうやら曙館和燈のようだ。久しぶりに見る名前に思わず「えっ」と驚くも、その手紙を素直に受け取る。

隣の酔っ払いを置いて、俺は既に開けられた手紙を取り出して読む。
そして暫くして手紙を全て読み終わった俺はふぅっと息を吐いて先生を見た。

「先生、これ読んだから一人で耐えられなくてお酒飲んだんでしょう?」

雅信:「んん、だって……あれでよかったのかどうか、わからないんだ」

むっと唇を尖らせ、また酒を煽った。

「俺が解決したことで、今も彼に演劇を続けさせてのるかも、とか」

「和燈さん、褒められたんじゃないかって思うんだよ。弟に、演技をさ。そしたらさ……踏ん切りつかないと、辞められないよな」

「わかるよ。俺もそうやって小説書いてるから。もういない奴のために」

「桐ケ谷さんは、それ読んで、なんか感じた?」

真矢:「でも、手紙にもある通り、彼も今自分の『幸』を探してる途中なんですよ。見つけるために役になりきって掴もうとしてるんです」

こうして酒を煽る先生も珍しいなと思いつつ、止めることはしない。まぁ、誰しも飲みたい時はあるものだから。

「きっと、それを見つけたら彼の役者としての舞台は幕を閉じるでしょう。ですけど、生きている限り彼の物語はまだ続きます。それって素敵な事だと思いませんか?また彼の新しい物語が紡がれていくんですよ」

「先生だって、俺と一緒に作品を世に出していってるでしょう?先生の言うその人は今はいないかもしれないけど、きっとどこかで見ていますよ。それに、貴方には沢山のファンがいるでしょう?」

そして、この手紙を読んで何を感じたのかと問われたので素直にこう返した。

「きっと、諦められない人、なんだろうなと思いました……不器用な、だけど愚直なまでに何かを突き詰められる、そんな人。きっとこの手紙も僕らに劇を観に来て欲しくて送ってくれたんじゃないかなって。そう思ったら、応援したくなったなって……

「なんて、うまく言えないんですけどね」

はははと笑いながら俺は頭を搔いて、先生のお酒を勝手に拝借して同じように俺も酒を煽った。

雅信:「不器用か。だから逆に、一年間も入れ替われたのかな」

……わかんないじゃないか、というか、多分見てない。そこそこ名も売れてきたのに。もう興味をなくしたのかもしれない」

完全に拗ねた声だ。普段ならこんなこと思わないのに。そいつ一人のために書いてるんじゃないんだからさ。

「それ、見に行きます?チケット二枚あるから、二人でってことでしょ」

酒を飲まれても止めはしない。ぽやっと顔を眺める。

……あ、そうだ、えーと……シンヤ」

桐ケ谷さんの下の名前だ。

「シンヤ……マヤ……やっぱり、似てるな?」

手を伸ばして、桐ケ谷さんの瞳にかかっている前髪を退かそうとした。

真矢:「まぁ、それはその人にしかわからないですから、俺もわからないですけどね」

「劇も行きましょうね~、俺も楽しみです!」

なんて返事を返して、拗ねた先生も可愛いなぁなんて思いながらまたぐびぐびと酒を煽っていたら俺の名前を呼ぶ先生の声が聞こえてくる。

「マヤ」それは高校の頃に呼ばれていたあだ名みたいなもんだ。真矢(しんや)をマヤと呼ぶこともできるから皆そう呼んでいた。のだが、何故先生が?少しびっくりしながらも、前髪に触れてくる手にピクリと反応してしまった。

「んぇ?!……ちょっと〜、先生くすぐったいですから〜!やめてください~!」

なんとか誤魔化すようにそう言うと、先生の手を掴んで「めっ!」と言ってから手を離した。

「先生に触られると俺ビックリしちゃうんで~」

マズイ、変なこと言ってる……俺ももしかして酔ってきたか??

雅信:なんだよ、なんでそんな嫌がるんだよ。いつも俺の手を取ったりして、そっちから近寄ってくるじゃないか。ムッとしたまま、追い掛けて再び手を繋ぐ。

「減るもんじゃないしいいだろ。こっち見ろよ」

頬を掴んで、こっちを向かせようとした。

真矢:「ふぇ?!」

いきなり顎を掴まれて先生の方を向く羽目になる。いや、こんな酔っぱらってる俺を見られるのは流石に恥ずかしいんだけど。

それに逆の手で手を繋がないでもらっていいですか?!酔っぱらってる先生ってもしかして甘えん坊で触りたがりなの??

これはこれで可愛いけど、ど、どうしよう。俺の心臓が持たない。
供給が過剰過ぎて俺どうにかなりそう!

雅信:「ん……やっぱ、似てる、けどなぁ」

ぐっと顔を近付けて顔を覗き込むと、額が触れ合った。
目がアイツと似てる気がするけど。こんな感情を大きく出す反応、しなかったよなぁ。髪色も違うし。

「アイツなわけないかぁ……桐ケ谷さん?」

すりすりと頬を撫で、指を擦り合わせる。
どんどん桐ケ谷さんの反応が……なんだ、変?不思議になっていって、首を傾げた。

「あれ、酔っぱらいました?」

とかいう俺も酔っていて、唇が触れそうな距離であることに、全然気づいていなかった。

真矢:「似てるって、あいつって誰ですか?!」

ムッとしてそれだけ返すけど、今俺と先生の距離はめちゃくちゃに近い。なんで?どうしてこんなことに??

「あの、ちょっと……ち、近いですって、あっ……何してんで……っ、んんっ」

「そりゃ、お酒飲んでるんで酔っぱらってますよ!」

だから触らないで!そう言いたいのに言えなかった。ああ、先生にこんなことされるのも悪くないかもなって思ってしまう俺もいた。

雅信:なんで微妙に怒ってるんだ?気分を害することしてないよなぁ。
観察するうち、賑やかに言葉を吐き出す唇が気になる。頬から後頭部へ手を移動させ、逃がさないようにする。そうしてから、むちゅ、と唇を合わせた。

……似てる、かぁ?わかんないな」

まあそうだよ。アイツとキスなんてしたことねぇもん。完全に酔ってる俺は、そんなことを考える自分にケタケタと笑う。

しかしまぁ、抑え込んだとはいえ、桐ケ谷さんが大人しくないか。

『お前、逃げないの?』

桐ケ谷さんに言ったそれは、確か、アイツに初めて掛けた言葉だった。
授業をサボって向かった先で、俺に見つかったからって慌てないアイツの姿に、思わず言ってやったんだ。

真矢:キス、しちゃった。先生と、キス……?!しちゃった?!先生?!俺とキスしてますけど?!いや、もしかしたらこれも次の作品のネタになるかもしれないし、ここはするのもアリなのでは?

そう思って俺はキスを許すことにした。

「似てるって、大切な人ですか?そんなに似てますかね?俺」

あいつって、マヤって、そう言う事か……合点がいった、くそっ!
最近先生が言ってる大切な人が名前のくだりやらを思い出して、ようやく自分であることを理解して頭を抱えたくなる。過去の自分に嫉妬してどうすんだよ馬鹿!と思うけど正体を明かせない以上これは仕方のないことである。
つまり後輩(俺)=大切な人ってことかよ!!

なんで逃げないの?なんてなんで先生は聞くんだろう?先生が俺をこんな風にしてるのにそれはないでしょ。って少し呆れた顔で言った。

『逃げるわけないでしょ、何言ってるんですか』

雅信:「あ、」

あの時と全く一緒だ。
偶然の一致に瞬きを何度もして、目の前の顔をしっかりと見る。
やっぱり似てるような、違うような……それより、どこか艶っぽい表情から目が逸らせない。

「これでも?」

もう一度口を重ね、舌で舐める。
眼鏡が邪魔で、外して床に放った。

真矢:「んふ……は、ぁ……せん、せ」

俺の唇を好きなように貪る先生を受けとめつつ、俺は先生にしがみつくみたいに先生の背中に腕を回して着物をぎゅっと掴む。

「せんせぇ、どうしたん、ですか……?」

「逃げないですって……これも、作品のネタに、なりますか?」

先生を見るけど、俺とこんなことして楽しいのかな?そう窺うように表情を見ようとする。

雅信:「は?ネタになるなら……

苛立ちから視線を向け、桐ケ谷さんの現状に気付いた。
蒸気した頬に蕩けた瞳、舌足らずな声。
これでなんで拒否しないんだ。調子にのりそうになる。

「大事な奴とは、やっぱ、違うかも……アンタはどこにも行かないもんな」

言葉には力がある。わかっている。
こうして言い聞かせてしまえば、担当編集なら拒否ができないかもしれない。
ここまで幾らでも拒否できたんだ。なのにしないって、あっちの意思でもあるんだ。
理性が焼き切れてしまいそうなのに、こんなことにばかり頭が回る。飲みすぎてるのに下半身がしっかり熱くなってるのもわかるし。酒だけじゃない熱さで頭がぼんやりする。

「ネタになるなら、ほんとに何でもする?」

桐ケ谷さんにのしかかり、繋いだ指に力を込める。

なあ、また間に合うだろ。アンタのが飲んでない、酔ってないんだから、なんとかしてくれよ。

真矢:「どこにも?多分、行かないですかね……編集クビにならない限りは……

頭がぼーっとする。先生の言葉になんとか返事はするけど、酒と先生から与えられる刺激でうまく思考が回らなくなっていた。

先生を拒まなかったのはきっと俺の先生への未熟な想いのせい。この行為が作品のネタになるなら喜んでこの身を差し出すこともできるけれど、それをしたら俺と先生は【編集と作家】の関係からきっと一線超えてしまう。
超えたらきっと今のままではいられないのはわかっているのに、どうしてだろう?その先を望んでしまう俺もいた。

俺、先生の作品のファンだとずっと思ってたのに、いつの間にか先生のことが好きになってたみたいだ。

このままじゃいけないと拒む自分もいれば、一夜の体の関係なら気にすることないじゃないかという自分もいる。
ぼんやりとそれを考えていたら先生が「ネタのためならなんでもする?」なんて聞いてくるものだから、つい言ってしまった。

「はい、男の俺でよければ……

俺は先生にされるがまま、くたりと火照った体を横たえた。

雅信:従順に答えた桐ケ谷さんに、また苛立ちが募る。
もし俺以外の奴に求められたとして、ネタになるならいいですって頷くのか?誰でもいいのか?
どこにも行かないっていうのも、仕事の都合じゃないか。

頭の片隅で警告が鳴っている。
今の俺は冷静じゃない。いつもなら考えもしない。
桐ケ谷さんのことをなんだと思ってるんだ。こんな自分によくしてくれた人に、酷いことを。

「性別は関係ない、アンタがいい」
……せめて優しくするから」

どの口が、と思いながらも止まれない。
服を剥いて、桐ケ谷さんの肌に触れた。冷たいかと思えば、俺と同じように熱を持っている。

次に観劇に行く時、俺たちはどんな顔をして隣に並ぶのだろう。
ぼんやりと熱っぽい頭で考える。
そんな先のことより、明日のことを考えた方がいい。俺たちはどんな顔をして打ち合わせをするんだろう。変わらずこの家に桐ケ谷さんは来てくれるのか?
不安を打ち消すように、一人乾いた声で笑った。

真矢:「んふふ。それなら、俺で気持ちよくなって……?」

俺がいいって言う先生の言葉に俺はめちゃくちゃ嬉しくなって、へにゃっと笑ってから先生の頬に手をやる。その頬を撫でながら、恐らく今の俺は溶けきった顔で先生に言った。

「せんせ……俺の体、熱いんで……どうにかしてください」

そうして俺から先生にキスをした。
先生の中を味わうように。

相変わらずお酒の味がするキスだけれど、それがより一層俺の頭をバカにさせた。
きっとこれは俺の都合のいい夢だから、それならいっそ楽しんでしまえばいい。そう思いながら、俺は先生との夜を過ごす。

先生、俺と沢山楽しい夢を見ましょうね?