enoki181
2023-04-22 22:56:44
49533文字
Public リプレイ
 

【フタリソウサ】グレイ・スター・デイ(雅信×真矢)【リプレイ】

PL:黝さん、エノキ
シナリオ https://talto.cc/projects/I0RwWqZgY-bmcLmfs_hv2


◇真相フェイズ

曙館燈希:『――カムパネルラ』

GM:雨音の中でもはっきり響く、凛と張り、あるいは柔らかな、確かな呼びかけ。
この世でいちばんたいせつなものに話しかけるように、彼は台詞を続ける。

曙館燈希:『また僕たち二人きりになったねえ、どこまでもどこまでも一緒に行こう』
『僕はもうあのさそりのように、ほんとうにみんなの幸のためならば僕のからだなんか百ぺん灼いてもかまわないんだ』

GM:語りかけた彼の顔が不安げに揺れた。視線が隣の席から列車の扉へ流れるのに合わせて、がたんと立ち上がった。
どうして、と小さく吐息をこぼす。行こうって言ったよ、という声が虚空にこだまする。

曙館燈希:『カムパネルラ。ぼくたち、どこまでも一緒に行こう』

GM:その声が誰にも届いていないことは、もう誰から見ても明白だった。
彼の隣にいたはずのカムパネルラはいない。ひとりぶんの空白に、ぽつんと雨粒が落ちた。

静かに立ち上がり、割れんばかりの拍手となる。

星空の列車に背を向けて、「曙館燈希」は舞台袖に戻ってくる。

曙館燈希:「――探偵さん」
「真相は、わかりましたか? この“銀河鉄道の夜殺人事件”の真相は」

GM:舞台袖には劇団“ほしつくり”の他の面々もいる。

注目が探偵と助手の二人に集まる。

雅信:「……真相、と断定できればよかったんですが」

「俺の本業は物書きです。ある程度行間を読んで創作しているかもしれない。……不謹慎ですかね。あなた方ほどではないでしょうけど」

「まずは俺の話を聞いてくれませんか」

GM:犯人の指名について

“銀河鉄道の夜殺人事件”において
・殺したのは誰か
・殺されたのは誰か
この二点を指定すること。

雅信:知ってたカード1を公開する。

知ってたカード1:公演の開始間際、事件は起きた。
この雨では警察を呼ぶのに時間がかかる。
被害者はカムパネルラ役の向坂蛍地(さきさか・けいじ)だ。
死因は「①後頭部を強く打ち付けた」ことによる即死だ。
現場には争った形跡があったが、遺体には「②死因の傷以外」はない。
「③雨漏り」しており、そこで足を滑らせたのだろう。
劇団員たちはこの劇に『❹強く執着』している。

雅信:「この状況で公演するのだ、とあなた方は言いましたね。俺からすれば、異常としか思えないですが」
「劇団員が『銀河鉄道の夜』に並々ならぬ思い入れがあることはわかった。5年前まで人気であった劇団の名声を復活させるため、再起をかけた公演だと」
「しかし、今回の公演にはいわくが付いている。その話をしないといけないんですよ」

真矢:「えぇ?!いわく??」

先生の言葉に後ろで「ええ?!」っと、それは初耳だというように反応する。

「まぁ、でも確かに人死んでますからねぇ……

ぼそぼそと独り言ちるように呟く。

雅信:「一見すると向坂さんは事故で死んだようにも見えますが。“殺人事件”と称するのなら、全部解き明かしてみせましょう」

曙館さんの方をちらりと見遣る。

雅信:知ってたカード2を公開する。

知ってたカード2:現場以外にもいくつか雨漏りが確認できた。
修繕を繰り返していた痕跡はあるが、最近のものではない。
その稽古場の隅には「⑤古びた血痕」がある。
かつてこの場所で曙館燈希(あけだて・ともき)が『❻転落する事故』があったらしい。
その事故により公演は一年の延期が決まり、曙館燈希は『❼ジョバンニ』役に変わった。
その配役変更には向坂蛍地の進言があったようだ。

雅信:「一年前のこの時、向坂さんは『燈希を殺した』と言っていた。そうですね、千速さん」
千速さんが頷くのを確かめる。

「けれど、翌日には曙館さんは稽古に出ていた。だから、向坂さんの見間違いか夢でも見たんだろうで片付けられたものだ」
「そうやって片付けてしまったんですよね、ここの人たちは」

言葉にじっとりと不快感を滲ませる。

真矢:「掃除屋じゃないんですから、ほんと勘弁してほしいですよね~」

うんうんと頷きながら先生の言葉に同意する。

雅信:「桐ケ谷さん……
なんだかちょっと脱力する。

真矢:「え?なんか変なこと言いました?」

きょとんとしながら先生を見る。

雅信:「いやわざとじゃないんですか?」
溜め息。

真矢:「はて?至って真面目ですが?」

「ではではそんな感じで先生には続けてもらって~」

にこにこしながら先生にそう言う。

雅信:「……
どっちだ、って怪しむ目線を数秒だけ向けた。
……じゃあまあ、続けますけど」

「皆さん、今日の公演は観ていますよね。それぞれの場所から。曙館さんが一人で演じた、今日の公演です」

雅信:知ってたカード3を公開する。

知ってたカード3:舞台上の曙館燈希を見て、千速陽治(ちはや・ようじ)は『➑呪い』だと言って錯乱してしまった。
舞台に上がれる役者はすでに曙館燈希しかいないが、それでも彼はひとりで舞台を続行している。
万望泰葉(よろもち・やすは)が言うに、彼は配役変更を境に「⑨まるで別人」のように演技力に磨きがかかったらしい。
この劇を成功させて、もう一度劇団の名前を轟かせたいと願う彼らは、曙館燈希だけで作られる劇であったとしても構わないようだ。
もはやひとりきりになった“銀河鉄道の夜”は、しかし『❿二人芝居』をしているように見える。

雅信:「聞いたところによると、曙館さんと向坂さんは、ほとんど二人で稽古をしなかったそうですね」

「それであんな演技はできるんでしょうか。俺には疑問で仕方ないんですよ」

真矢:「そうですよ〜!!それ、俺も思ったんですよね!ちょっとおかしくないですか?」

ねぇ!と先生の同意を得るように言ってから、俺は先生の後ろからヤジを飛ばすように言う。

「本当は何か隠してるんでしょ~?」
『そうだそうだ~(裏声)』

雅信:「んんっ……
笑いそうになったのを咳払いで誤魔化した。格好付かないだろ!

真矢:「先生?!どうしました?お水いりますか??」

ペットボトルの水を取り出しながらそう言う。

雅信:「いや大丈夫で
ってもう出してるのかよ!
「桐ケ谷さん、ちょっと黙っててください」
つい言ってしまった。

真矢:「は~い、わかりました~」

しゅんと大人しくなって先生の後ろで取り出していた水を自分で飲む。

雅信:飼い主に構って貰えない犬みたいに見える……
気になるけれど、咳払いで仕切り直す。

「もう少しだけ、一年前の話をさせてください」

雅信:知ってたカード4を公開する。

知ってたカード4:百瀬香織(ももせ・かおり)が言うには、曙館燈希は確かに「⑪死んでいた」。
翌日何でもない顔をして帰ってきたため、劇団員たちは悪い夢だったのだと思うことにした。
曙館燈希はその日、「⑫誰かを観劇に招待する」約束をしていたらしいが、結局果たされなかったらしい。
しかし、本当は果たされていたのだろう。
劇団の誰もが気づけなかったとするなら、その相手は『⓭顔のよく似た双子の兄弟』だったのだ。
彼はきっと、無念を晴らすために星空を走る列車に乗っている。

雅信:「――この推理には、決定的な証拠はないんですよ」
「今までのこれを真相と呼んでいいのかわからない」

「だから――曙館さん。この先はあなたの口からきかせてください」

「あなたは“銀河鉄道の夜殺人事件”を解き明かしてくれ、とずっと言っていましたね」
「あなたが明かして欲しかったのは、列車に乗って行ってしまった“彼”のことですね」
「向坂蛍地さんによって曙館燈希さんは殺された。これが一年前に起きたことだ。夢なんかじゃない、本当のことなんだ」
「あなたはそこを見ていたんだろう。それか、曙館燈希さんが埋められるところを見ていたのか」
「あなたがどういうつもりで行動したか知らない。俺はそこまで想像が及ばなかった。この先はあなたの口から聞かせて欲しい」

雅信:「犯人はお前だ」の指名はこんな感じ。

・殺した→向坂蛍地
・殺された→曙館燈希

GM:シナリオ想定の犯人を指定できました。
このまま[真相は暴かれる]にはいります。

曙館燈希:「――ほんとうの幸は、どこにあるのでしょう」
――ほんとうの幸は、どんなかたちをしているのでしょう」

GM:曙館燈希――曙館燈希に成り代わっていた人物は目を伏せて、人差し指を口元に立てる。

曙館燈希:「僕はずっと問うています。あの雨の夜から、ずっと、ずっと」
「探偵さん、最初に嘘をついてごめんなさい。舞台が中止になる……いいえ、僕が舞台に出られなくなるのが嫌で、嘘をつきました」

曙館和燈:「探偵さんの言うとおり、僕は曙館燈希の双子の兄、曙館和燈(あけだて・かずき)です」

曙館和燈:「劇団のことは、弟からよく聞いていました」
「千速さんに面倒を見てもらっていることも、香織さんに団のことを教えてもらっていることも、団長さんがこの劇団のことを思っていること、――向坂くんに避けられていること」
「銀河鉄道の夜の役が決まってからも、……決まってからはなおのこと。だから弟は僕と読み合わせをしていました」

GM:人差し指をおろし、曙館和燈は力なく目蓋を開く。
この世の何をもうつさない、どこか遠くをみているような暗い瞳。

曙館和燈:「公演前、向坂くん、僕に。……僕に『本当は誰なんだ』って訊いたんです」
「あの日死んだはず、なのにどうして生きているんだって」
「だから、僕は、弟の名前を答えました。まだ弟が願った舞台の成功をおさめていなかったから」
「雨漏り、ひどいでしょう、ここ。誰も整備しなくなったから。燈希がやってたんですよ」
「僕を突き飛ばそうとした向坂くんは足を滑らせて。……ああ、ねえ、向坂くん。向坂くん、燈希のこともそう、そうやって……

GM:がば、と顔を上げた曙館和燈は大きな瞳を見開いて探偵を見つめた。
ともすれば泣き出しそうな顔にも見えて、怒っているようにも見えるのに、その実感情が読み取れない。
それは、曙館和燈自身も同じのようだ。

雅信:「――

息を飲む。
得体の、底の、何も知れない瞳に、吸い込まれて落ちていきそうだ。

こんなもの、俺の語る“真相”にはなかった。知らなかった。

真矢:「は~、なるほど~……自業自得、因果応報ってやつなんですねぇ」

なんて先生の後ろから聞いていた俺はふむふむと小声で頷きながら顎に手をやって話を聞いていた。

曙館和燈:「……わすれちゃったよ、おこりかたなんて。一年も優しくて勤勉で眩しい燈希のふりしてたから」
「向坂、蛍地。さきさか、けいじ。ねえ、なんで死んじゃったの。聞きたいこと、いっぱいあったんだけど」

GM:それは、この世のものとも思えない透明で美しい演技をしていた舞台上の彼とは、かけ離れた様子だった。
わななく唇からはかたちにならない言葉が溢れて、まるめた背筋には迷いが滲んでいる。

曙館和燈:「千速さん。本当に気づかなかったんですか、僕が入れ替わっていたこと」
「百瀬さん、何も思わなかったんですか、泥の中に弟を埋めたときのこと」
「万望さん、――あなたが希望の星と祭り上げたあの子は、僕の唯一の弟だとわかっていますか……っ」

GM:じわじわと声に震えが混ざり、怒りに似た熱が漏れ出てきた。
ぐしゃ、と前髪を掴んで曙館和燈はしゃがみ込む。だん、と床板を叩き、その拳の上に滴が落ちた。

曙館和燈:「向坂蛍地。ねえ、どんな気持ちだった」
「弟を殺して。殺したはずの人間が現れて。同じ舞台に立ち続けて。ねえ、怖かったかな。後悔したかな」
「僕は、……ずっと許せないでいるよ。おまえも、この劇団も、弟を魅了した演劇も!」

GM:呪うような口ぶりで、曙館和燈は団員たちへ告げる。
星も見えない、暗い夜のような瞳だった。

曙館和燈:「この劇はあなたたちの名声にはならない」
「きっとあなたがたはこの劇団から遠く離れた土地で死ぬほうが苦しいし、地獄に思えるのでしょうから」
「これは弟と、――燈希と僕との最後の旅。僕らの旅にあなたたちはいなかった」

GM:事実、彼はひとりで銀河鉄道の夜を演じ切ってしまった。
演劇の才能は彼にもあったのだろう。あるいは、弟以上に。

その彼の拒絶の言葉が、万満泰葉をはじめとした団員の心に深く深く突き刺さる音を聞いた。

――探偵と助手は、そんな気がした。

崩れ落ちる彼らを前に、曙館和燈は涙となって溢れ出す感情を隠しもしなかった。
そのまま、彼は探偵と助手に目を向ける。

曙館和燈:『けれどもほんとうのさいわいは一体何だろう』

『僕にはわからない』

『あすこにいるのは、ぼくの弟なんだ。きっとあそこがほんとうの天上なんだ。――ねえ、そうでしょう、探偵さん」

雅信:「っ、俺は、」

喉が張り付いていた。さっきあんなに喋ったのに。だからか?

「桐ケ谷さん、水を」

手を差し出す。

真矢:「はい、ど~ぞ」

そう言ってさっき飲んでいた水のペットボトルを先生に手渡す。そして先生が水を飲んでいる間に、俺は彼の話を聞いて思ったことを述べた。

「それにしても、本当に何もかもを拒絶した目、ですね。呪いたくなる気持ちもわかるし、そうしたところで貴方の『幸』になるとは思えない」

「許せとは言いませんし、忘れろだなんて身勝手な言葉も言いませんよ」

「ね、先生!」

雅信:「……そうですね」

水を飲んで落ち着いて、曙館和燈へと改めて向き直る。

「曙館和燈さん。俺は、あなたの言葉に同意できない」

「離れて行った相手に“ほんとう”だとか“しあわせ”を見い出せません。行ってしまったら、それで終わりだ」

非情だろうか、と思いながら続ける。

「昔、俺も大事な奴をなくした。弟さんみたいに亡くなったんじゃないんだから、追いかけようと思えばできたんだ。なのに、しなかった」
……怖かったんだ。本当のことを知るのが。俺のことを嫌いになったのかも、とか。だから、待つことしかできなかった」

「そんな俺に、『ほんとうのさいわい』『ほんとうの天上』なんてものを、あなたと語る資格はない、と思う」

「俺に同じことが起こったなら、一人であんな風に演じられない。あなたと同じものは見えない」

「あなたと同じものが見える人がいるのなら……一緒に銀河鉄道に乗っていた、弟さんだけなのかもしれない」

何が言いたいのやら。書き付けないで喋るのは苦手だ。それ以降、俺は口を噤む。

真矢:「先生……

そんな人が、先生にも昔いたんですね。羨ま……いやいや、それは今は置いておいて。
今は真剣な話だと気を引き締めて再び曙館さんに向く。

「俺も、大切な人を亡くしたことはないです。でも、亡くなった方もきっと死にたくはなかったと思うし、貴方の前から消えたくはなかったと思います。だって彼には何よりも大切なものがあったでしょうから」

俺は何故か高校の卒業式の時のことを思い出していた。
あの時、あのいつもの「あいつ」と話していたあの場所でじっと座ってた。誰も来ないってわかってるのに、離れたくなくて。でも、もう「さよなら」しなくちゃいけないんだって少し泣きそうになりながら帰ったんだっけ。

曙館和燈:二人に笑いかける。
それは演技なのか、本心からなのか。
誰にもわからない。
「明かしてくれて、ありがとうございます」
「これでやっと、弟を見葬ることができる」

GM:遠く、雨に紛れてサイレンの音がする。
遠く、雲に隠れて星が輝いている。
遠く、――いつかの未来で分かたれた双子がまた会えることを祈って、この事件は幕をおろす。