enoki181
2023-04-22 22:56:44
49533文字
Public リプレイ
 

【フタリソウサ】グレイ・スター・デイ(雅信×真矢)【リプレイ】

PL:黝さん、エノキ
シナリオ https://talto.cc/projects/I0RwWqZgY-bmcLmfs_hv2


◇事件発生フェイズ

GM:桐ケ谷真矢、君は知人から観劇のチケットを貰った。

森の奥にある、小さな劇団“ほしつくり”という劇団の「銀河鉄道の夜」のチケットだ。
本来は一年前に公演が行われるはずだったが、急な配役変更があり一年の延期となったのだという。

劇団“ほしつくり”は五年前まで有名だったが、最近は名前を聞かなくなった劇団だ。
「銀河鉄道の夜」は当時、最も有名な演目だった。

もしかしたら、スランプ続きの担当作家にはいい気分転換になるかもしれませんね。

真矢:「先生〜!」

俺は慌ただしく先生の家へと訪れる。
玄関を開けて出迎えてくれた先生に俺は嬉々として話しかける。まるで子供が親に自慢するみたいに。
自分でも少し恥ずかしいけど、これは先生にもいいかもって思ったらすぐ言いたいに決まってるじゃん。

「先生、これ!これ見てくださいよぉ〜!なんかある劇団の劇っていうか、舞台みたいなんですけど!さっき俺の上司がこの日予定があるから行けないって譲ってくれたんですよ!」

俺はペラリと2枚のチケットをヒラヒラとさせながら言う。

「これ、作品のネタになるかもと思ったんですけど、先生一緒に行きませんか?」

雅信:「お、銀河鉄道の夜!」

気圧されながらチケットを見て、ぱっと目を光らせる。よく眺めようと桐ケ谷さんの手を取った。

「まあ定番の題材だけど、それだけに劇団ごとの色が出るんだよな~!なになに小さな劇団なんだ。じゃあ演出は工夫凝らしてんのかないいよなぁ

うんうん、と一人で喋りまくって満足げに頷く。

GM:劇団“ほしつくり”は、森の奥にある古い劇場を持っていて、そこで公演を行っています。向かうには車になりますね。どちらかが運転するか、タクシーを使うか、になると思います。

真矢:「お、先生も興味津々みたいですね!」

俺の手をとってチケットを眺める先生を見て、俺は嬉しくなってにこにことその様子を眺めていた。

「なんか場所見てみたらな交通の便があまり良くないみたいなんで、当日俺が迎えに来ますんで一緒に行きましょうね」

そして、2枚あるうちの1枚を空いてる手で取って「はい、先生の分」と俺は先生に手渡した。

「銀河鉄道の夜」俺はあんまり詳しくないんだけど、これを見て知れたらいいなぁと思った。当日が本当に楽しみだ。

ーーそして、数日後。

俺と先生は俺が運転する車で劇場へと向かった。

GM:当日、しとしと降り敷く雨の中、劇場へ向かう。
森の途中にある駐車場に車を止め、そこからは傘を差して歩いていく。
傘と葉を跳ねる雨音に、ぬかるんだ路。

木々の中から現れたのは、木造の小さな劇場だ。
入り口でチケットの確認をしているのは、ふたりの少年だった。
いや、少年役をしているだけで、ふたりとも成人はしているのだろう。少年衣装を纏っているとはいえ、役者というのはすごいものだ。
どうも主演ふたりのようだが、主演がチケット確認をするほど人が足りないのだろうか。

「はい、チケットを確認しました。どうぞ、楽しんでいってくださいね」

ジョバンニ役と思しき少年が、人懐こい笑顔でにこやかにチケットにサインをする。隣に控えたカムパネルラ役と思しき少年は口を引き結んだまま、こちらを見なかった。

雅信:「主演二人がチケット確認か人手足りてないのかな」

呟きに、桐ケ谷さんはあまりピンときていない様子だった。

「銀河鉄道の夜、あんまり知らないですか?ジョバンニとカムパネルラっていう二人の少年が、銀河を走る不思議な鉄道で旅をする話なんですよ」
「多分、あの二人が主役なんじゃないかな。カムパネルラの方、愛想があんまりよくなかったけど

真矢:「へぇ、主演さんなんですねぇ!」

へ〜!なんて言いながら俺はチケットの確認をする2人をじっと見る。
確かに先生の言うとおり1人はこちらを見向きもしないし挨拶をすることもなかった。何かあったんだろうか?

まぁ、部外者の俺達が気にしても仕方ないことかもしれないし先生には「何か落ち込んでるのか、変なもの食べてお腹痛いのかもしれないんですよ、きっと!」なんて言っておいた。

「それより、劇楽しみですね!」

それはそうと、と言うように俺は席に向かいながら先生にそう話を振ったのだった。

雅信:「えぇお腹壊して劇すんの、大変そう

GM:ちょうど中へ入るとき、雨が土砂降りへと変わった。
ここまでの路を考えるに、この雨へ変わる前に着いていてよかった。このぬかるんだ路に車では乗りつけられない。
この雨では来ることを諦めた客もいるのではないだろうか。

二百席程度の小さなホールだった。
天井が高く、音の響きが良さそうだ。ここにいると雨の音もあまり気にならない。
品のよい赤い布が張られた座席へ腰を下ろす。客席の埋まり具合は半分程度だ。
開演時刻まで、パンフレットに目を通す。演目のあらすじと、役者の一言コメントのみで構成されたシンプルな二つ折りだ。

雅信:パンフレットを熱心に見て開始時間まで過ごすかな。

真矢:そわそわと落ち着きなく辺りをキョロキョロとしている。

GM:開演時刻。低めで静かな声で、観劇上の注意事項を読み上げられる。
公演は前後半に分かれていて、途中休憩は一時間。
私語と飲食は控えること。
特段変わった注意事項はなく、「それでは、銀河の旅路をお楽しみください」との声とともに明かりが落ちる。
間もなく開演ブザーが鳴り。

――雅信はそのブザーにかぶせて悲鳴が上がったのを聞いた。

雅信:「……えっ、今の」
きょろきょろとあたりを見回す。

真矢:「先生?どうしたんですか?」

先生の様子に気がついて隣に座る先生に小声で話しかける。

雅信:「悲鳴っぽいのが……
桐ケ谷さんはもちろん、他に気付いた人はいなさそう。聞き間違いかもしれないと自信がなくなってきた。

GM:悲鳴に気づいた人は、探偵のほかにいないようだった。
ブザーが鳴ったのに幕が上がらないことを疑問に思う観客がざわざわと波立つ。
注意事項を読み上げたのと同じ声で、放送が入る。

「たいへん申し訳ございません。お待たせをしております。開演まで、いましばらくお待ちください。繰り返します――

水面を揺らしもしなそうな平坦な声は、まるでこの不測の事態すら舞台の一部であるかのように思わせた。

思わず探偵は席を立つ。
その性(さが)で悲鳴の出所を探し、ホールを出る。

狭い劇場内で探せる場所はさしてなかった。ホールの裏側へ回ると、控室と倉庫、稽古場があった。人の気配があるのは、練習場だ。

雅信:あの悲鳴が気になって仕方がない。周りを気にせず足を動かす。
ホールを出ると雨の音が耳についた。
「こっち、か?」
ふらふらと誘われるように歩く。

真矢:「先生〜!もう、勝手にまた1人でどっか行かないでくださいよぉ!」

こっちを見向きもしない先生の後ろ姿に少しだけムッとなりながらも、俺はめげずにその後を追う。
本当に先生は仕方ないんだから。

ヤレヤレと首を軽く振ってから、俺は歩きながら先生をただまっすぐ見つめていた。

雅信:桐ケ谷さんの声は耳に入ってないみたいに、前だけ見て歩くよ。

GM:練習場の扉を開けると、衣装に身を包んだ役者たちが一斉にこちらを向いた。
その足元には、ひとり、人が倒れている。たらりと、赤い血が流れて液溜まりを作っている。

「カムパネルラ役の向坂蛍地(さきさか・けいじ)さんが、事故で亡くなってしまったんです」

口を開いたのは、サスペンダーとハーフパンツが特徴的な少年だった。
受付でチケットの確認をしていた、ジョバンニ役の役者だ。

彼は美しい顔で、薄い唇をわずかに動かして言葉を紡ぐ。

「香織さんの悲鳴を聞いて、まず僕がかけつけて、次に万望さんがきて。千速さんが来たときには、もう」
「ですが、この嵐の中、警察も呼べません。公演は、続けないと」
――失礼、あなた方は?」

真矢:「あ、突然すみません。先生がなんか悲鳴を聞いたって仰っていたもので。それで気になって2人でこちらに来てみたんですが……何やら事件みたいですね」

こちらに来た経緯をその場にいる全員に簡単に伝えると、俺は話を区切ってから再び話し出す。

「申し遅れました。俺はとある出版社で先生の担当編集をしてる桐ヶ谷と申します。そしてこちらが……

そう言ってチラリと先生の方を向いた。

雅信:「その担当作家の、一色雅正といいます」

ペンネームと本名と、どっちで名乗るかを迷って。桐ケ谷さんが仕事モードで話してるなぁ、と思ったから仕事用で名乗っておいた。

「あの。公演、やるんですか?」

眉間に皺を寄せて訊ねる。

GM:「はい。僕らは予定通り、劇を続けます。この日を、僕も、僕らも、待ち望んでいたのですから」

ジョバンニ役の青年が答える。

真矢:「でも、やれるんですか?主演である1人がこんなことになってるのに……

血溜まりを作って倒れている人をこのままこの場所に置いて話している図も中々に中々な現場だなぁと思うものの、俺と先生はこういう現場を何度も経験しているし、若干慣れてきている自分もいる。

それに少しため息にも似た息を吐き出すと、俺は先生に話しかける。

「先生、これ、どうしましょうね?」

雅信:「えーと事故で亡くなったって?事件性がないにしても、警察が来るまでは現場保存を
何度かこういった事件に出くわしたことがある。慣れた調子で段取りを説明する。

GM:「だめ、だめだめだめ……! ここまで来たのに公演中止なんて絶対にだめです!」

公演の中止を申し出た探偵の言葉に、ここの代表らしき女性が長い髪を搔きむしり、譫言のように捲し立てる。

万望泰葉:「人が死んでいる、ですって? わかっています、でもそれ以上にこの劇団の再興は大事なことなのです。ああ、この子だってそれをきっと望んでいるはず……! 公演は一日限り、私の劇団は今日にかかっているのです……!」

GM:取り乱す万望泰葉に同調するようにして、若い女性も強く同意する。

百瀬香織:「ええ、ええ。向坂さんも劇団の再興を強く強く望んでいましたから。ご自分の死で、この大事な公演が中断されることは望まないんじゃないでしょうか……!」

曙館燈希:「あなたは……探偵さんですか?」

雅信:「えー……似たようなことは、してる、かなぁ」
巻き込まれる形でと心の中で呟く。何としてでも公演を行なおうとする姿に、微妙に引きながら。

曙館燈希:「そうですか。では、警察が来るまでの間、彼の死因が何なのか、探してもらえますか?」

真矢:真矢も引いてるよ。

曙館燈希:「僕らは予定通り、劇を続けます。この日を、僕も、僕らも、待ち望んでいたのですから」
「大丈夫ですよ、僕らは舞台へあがれば逃げられない。この嵐では、観客も誰も逃げられない。この雨の中でなら、銀河鉄道は走ります」

GM:パンフレットによれば、ジョバンニ役の彼の名前は曙館燈希(あけだて・ともき)だ。
彼のほかに、団長である万望泰葉(よろもち・やすは)、少女役の百瀬香織(ももせ・かおり)が揃っている。
曙館燈希の「劇を続けます」の言葉に、もちろん、ほかのふたりも異論はないようだった。

雅信:「は?いや……えぇ?」
桐ケ谷さんに困惑した顔を向ける。

真矢:「あー、ははは……さすがプロ。と言いたいところですけど、本当に大丈夫なんですか?まぁ、先生は探偵もなさるから事件を解決することはできますけど……

正直めちゃめちゃに3人にドン引きして、めずらしく歪んだ口で苦笑しながら俺はその3人を眺める。

「死人に口なしとはよく言ったもんだ……

いやいや、「ダメダメダメ」って言いたいのはこっちの方だ。
ここに、現に死人が出てるんだぞ。しかも同じ団員が!!と突っ込みたいが、これだと数的に分が悪い。
色々と物申したいところだが、ここは少し大人の対応をした方が賢明だろうか?そう判断した俺は若干顔を顰めながらも口を開く。

「先生、ここは仕方ないかもしれません……

申し訳ない声を上げてそう先生に言った。

GM:困惑も当然だろう。
そんな君たちを残して、万望泰葉たちは練習場を出て行ってしまう。

ふたりの後ろを着いていく曙館燈希は、雨音の中で妙にはっきりと聞こえる声でひとこと残していく。

曙館燈希:「それでは探偵さん、どうぞ。この“銀河鉄道の夜殺人事件”の真相を解き明かしてください」

GM:そうして、返事を聞く前に出て行った。
此処には君たち二人だけが残される。

雅信:「なんか、引き受けたみたいに……

がくっと肩を落とす。返事してないのに。考える隙も与えられなかったぞ。
此処には俺たちと死体だけ。桐ケ谷さんの言った通り、死体は喋んないなぁ。何があったか言ってくれりゃ楽なのに。

「まさかこんなことになるなんて」

そもそも俺が首を突っ込まなきゃ巻き込まれなかった。
桐ケ谷さんがせっかく誘ってくれたのにな。嫌になったりしてないか?と、そっと様子を伺ってみる。

真矢:「先生、落ち込まないでください〜」

俺は先生を励まそうと背中をポンポンと軽く叩く。

「まぁ、劇を先生と一緒に見れないのは残念ですけど、先生と事件を解決するのもワクワクするんで俺は大丈夫ですよ」

まぁ、あんなこと言ってる人達の事を知らず、劇だけを見てたら感動したかもしれない。だけど先程彼らとやりとりをしたことで俺は別にこの劇は観なくてもいいかもな、とも思い始めた。
だからまた別の劇団が「銀河鉄道の夜」をやることがあったら、今度は俺がチケットを買って先生と一緒に観に行きたいなと思った。

だってその方が俺も先生も楽しめると思う、だからいいんだ。

「サクッと事件解決して美味しいものでも食べに行きましょ!」

こんな事件さっさと解決して、先生と他の事で今日の埋め合わせをしたくてそう誘ってみた。

雅信:ほっと胸を撫でおろした。桐ケ谷さんのムードメーカー的なとこにいつも救われるんだよな。
……逆に他のとこでも救ってるってことで、色んな人とうまくやってるんだろうな。引く手あまただろうから、手のかかる作家ってことで気を引き付けるしかないんだ。

「早く解決したいから、協力お願いしたいです。お礼に飯は奢るし」

真矢:「わかりました。まぁ俺と先生なら何があっても大丈夫ですって〜!ね!」

「え、飯奢ってくれるんですか?やったー!俺カルボナーラ食べたいです!」

そう言って俺は先生にまた笑って言うのだった。

[初動捜査]
指定特技は《法医学》。探偵は有利を得る。

・配布:知ってたカード1
・調査の障害「大雨の森、劇団員たちの閉口」
・捜査困難レベル:2

雅信:3DT 3DT(1,3,6) > スペシャル(助手の余裕を1点獲得)

真矢:AS AS(6,2) > スペシャル(余裕2点と、探偵から助手への感情を獲得)

[ 真矢 ] 余裕:3 → 6

[初動捜査後]
劇団員たちが去って行ったあと、遺体を調べる。
遺体はまだあたたかく、血液も止めどない。死亡推定時刻はあの悲鳴が聞こえた時間とさほど変わりがないと見ていいだろう。
死因は後頭部を強く打ちつけたことによる即死。傷口は後頭部にできた傷だ。遺体の近くには舞台セット用の木材が積まれており、それが一部倒れている。木材を調べれば、一部に血痕が付いていることがわかる。

キーワード①後頭部を強く打ち付けている

ともあれ、公演は開始される。しばらくしてから、開演のブザーが再び聞こえてくることだろう。

雅信:遺体の状況をかくかくしかじかと共有しているうちに、開演のブザーが鳴るかな。

「主演が片方いないけど……それに、あの執念っていうか。凄かったですよね」

困り眉で桐ケ谷さんに話しかけ。

真矢:「そうですねぇ、なんか並々ならぬ何かを感じた気がします。でも、仲間が死んでるのにそれを放置してまで劇をするのは、俺には理解できないですけど……

何かを成し遂げる為にこれを中止にはできない。とかそんな似たようなことを言う人は確かにいる。
切羽詰まっているならそう思うのは当然のことなのかもしれない。でも、俺はそれでいいのかな?って少し思ってしまった。

「片割れがいないのに、どうやって劇をするんだか……

「先生は、目的のためなら何かを犠牲にしてでも、それを成し遂げたいと思いますか?」

俺は血痕の残る木材をしげしげと眺めながら、先生に思ったことをそのまま聞いてみる。

雅信:「犠牲なぁ自分で賄えるものなら。他人に払って貰おうとは思わないな、それこそ命とかは」

目的のために手段は選んでないけどな。桐ケ谷さんを繋ぎとめるためにくだらない嘘を吐いている。

「まあ、あれだけ必死になる気持ち、わからなくもなくて。でも必死になってるとこを見せるのは……こわい、かもしれない」

幻滅されるだろうと思っているから、未だに隠しているんだし。そっと目を伏せる。

「桐ケ谷さんは?何か犠牲にしても成し遂げたいってこととか、あるんですか?」

真矢:「え、俺ですか?」

まさか先生に問い返されるとは思ってなかった。
確かに俺が聞いたんだから聞かれるのは当然だよなぁ、と思った後「そうですねぇ」と呟いてから続ける。

「俺は、ない……ですかね」

「そもそもそこまで成し遂げたいものとか強い気持ちが明確になくて、いつもフラフラしてるんです。だから『何か』を持ってる人は強くて、羨ましい……そう思います」

「勿論、俺は先生も羨ましいと思ってますよ」

フッと笑ってから「まぁ、あの人達は強いというかヤバいって思いましたけどね」なんて笑って先生の言葉を思い返す。

「人にそういうところ見せるの、怖いですか?」

雅信:「自分の素を見せるの、怖くないですか?まあ桐ケ谷さんならできるのかな」

ふふっと笑う。

「俺からしたら、桐ケ谷さんが羨ましいけど。だって、人とすぐ仲良くなれるし」

言いながら胸の奥の方が痛んだ気がして、そっと胸元を抑えた。

真矢:「まぁ、俺自分の素を隠せるほど器用でもないのでぇ」

けらけらと笑いながら頭をかいてそう言うと、先生が少ししょんぼりしている空気を感じて、俺は少しだけ下にある先生の頭を撫でる。

「大丈夫ですって。先生もいろんな人とお友達になれますから!先生には素敵なところがたくさんあるでしょ?俺が保証しますって!」

なんて言ってるけど、先生には誰も近付けたくないなぁ、近付いてほしくないなぁって気持ちがあって考えただけでもモヤモヤしそうになる。
だからそれを考えないようにして、そのモヤモヤを心のどこかに追いやった。

雅信:「ちょ子供扱いですか。一個差なんだから」

しっしと手を払いのける。本気で嫌じゃないんだけど。子供だと思われて、見限られるのは嫌だな。

「俺は器用じゃないから。ほら、スランプの気分転換に付き合ってくれる友達とかいなくて。だから、まだまだ桐ケ谷さん離れができないかも」

茶化して笑った。ほんと、俺は素を見せられるような器用さがないんだよ。

「だから、そのお礼も兼ねて。カルボナーラの美味いとこ寄って帰りましょうね。早く事件解決して」

雅信:(+):俺が落ちこまないように言葉選んでくれてるよなぁ

ロケーション・用語:
・劇団“ほしつくり”
小さな劇団だが、五年前までは有名な劇団だった。
五年前に団長が亡くなり、現団長に引き継いだころから徐々に衰え、今では経営難に落ちている。
森の奥にある古い劇場という立地も雰囲気があって人気だったが、先代団長がいなくなってからはそのアクセスの悪さが集客率を落としている。
団員は併設された寮で生活しており、家族や友人を泊めることも別段禁止されていない。

・“銀河鉄道の夜“
宮沢賢治著。
劇団“ほしつくり”の先代団長が最も愛した作品であり、劇団“ほしつくり”を有名にした演目。
新生劇団“ほしつくり”でも早くに公演は決まっていたたが、キャスト変更を理由に一年延期となっている。