黑野羊
2024-03-24 00:45:13
5375文字
Public 意味不明小説
 

意味不明小説《3》

意味不明で、ちょっと怖い、不条理だったり、シュールだったりする、短いお話集
掲載作品)
黒/いつもの事ですから/灰/飼/忘/赤イ花/ある晴れた日/冷たい夜空の下で/僕は自分で自分を殺しました。/私が手放したもの


赤イ花


「とある森の中に、それはそれは綺麗な花畑があると言う。

そこは、突然森が終わっていて、辺り一面を所狭しと咲いているのだと言う。
香しい花の香りが充満し、そこに辿り着いた者は皆、俗世を忘れてしまうのだと。

しかし、そこが何処なのか、正確な位置は誰にも知られていない。
何故なら、皆そこを探しに行って、帰ってこないから。

噂によれば、その花の色は鮮やかなアカイ色をしていると言うこと」



そんな、伝手のない噂話を、僕は半分信じ、半分疑いながら、探しに行った。
よくそんな暇が、と思われるかもしれないが、実際問題、暇だったんだ。

死にたくなるくらい、ね。

噂話が始まった山の麓で、地元の人間に話を聞くと、やはり、その山で合っているらしい。
何人もその噂を何処からか聞いて、山へ行き、ある者は見つけられず戻って来て、ある者は戻って来なかったと。
麓の人間が戻らなかった者を山中探したこともあるが、花畑を探しに行った者は見つけられた事がないのだという。

僕は花畑を見つけても戻って来ます、と麓の人間に念を押し、山へ入った。


かなり奥へ行ったかと思った場所で、休憩を取ろうと腰を降ろした。
すると、ぼんやりと見つめていた先に、森が終わっているかのように、木が突然なくなっている場所が見えた。
慌ててそこへ駆け寄ると、むせ返る程の花の香りと、視界いっぱいに花畑が広がった。

あぁ、此処か。
あまりの光景に、僕はそこに寝転んだ。
空は青く澄み、木々の生えた方からは鳥の鳴き声。

なんて心地よいんだろう。

寝そべったまま、身体をうんと伸ばす。
何かが腕に当たった。
何だろうとそちらに視線を向けると、花の下から腕が伸びていた。

小さく悲鳴をあげ、起き上がる。
花の下から伸びていた腕は、すでにひからび、まるでミイラのような状態である。

顔や身体があるはずの方へ、腕から辿っていくと、そこにはすでに鮮やかな赤い花がたくさんの花びらを広げていた。


あぁ、そういうことか。

僕はそのまま、また寝そべった。
探しに行った者が、見つからないはずだ。




花畑に近づいて来る足音。
「お花が増えているわ」
嬉しそうな声。
プチン、プチン、と花の茎を切る音。
「うふふ」
嬉しそうな笑い声。
「さぁ、売りに行かなくちゃ」
軽やかな足音が、花畑から遠ざかっていく。