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鹿
2023-12-31 16:22:03
13248文字
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CPシチュスロットまとめ
スロットメーカーさんの #CPシチュエーションスロット で出てきたシチュのSSをその日のうちに書いてみるチャレンジのまとめ。全部土斎。現パロだったり謎時空のパロだったりデア軸だったり。
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空調の効きすぎた部屋で/酔った勢いで/写真を焼く
手が冷たい。イラついてエアコンの温度を下げすぎたせいだろうか。頭の中の疑問を自分で馬鹿らしいと思う。
僕はさっきから手の中の安いオイルライターを何度もつけ損ねている。手が震えているせいだった。それは室温のせいでも、腹立ち紛れに飲んだウイスキーのせいでもないことは自分でわかっている。さっきから僕が吸ってる煙草はこのライターでつけたのだし。
ではなぜ今になって何度も何度も失敗するのか。酒のせいでぼやける頭でも理由は明白で、そして認めたくはなかった。
「
……
クソ、見てるだけで腹立つのに
……
」
目の前のテーブルの上の灰皿には、写真が突っ込まれている。中央に大きく映った男は、煙草の灰にまみれてもなお美しい顔をしていて、ますます僕を苛立たせた。
写真の男の名前は土方歳三。僕の恋人だ。だったという方が正確かもしれない。
土方さんは僕より歳上で、顔がすこぶる良くて、セックスが上手い。歳上風吹かせて僕に色々奢るのが好き。けど深夜にカップ麺を食べようとすると咎める。そのくせ自分は沢庵しか食ってないんじゃないかみたいな極端な食生活をする。部屋の掃除はまめにする。使ったものを元あった場所に戻さないと怒る。僕が適当に畳んだ洗濯物をきっちり畳み直したりもする。本来はノンケで巨乳好きなので、デート中でも豊満な女子とすれ違うとそっちに視線を向ける。
「
……
好きだ好きだって浮かれてないと、まじで全部むかつくなあの人」
どうして喧嘩してしまったのか、発端がなんだったのか自分でも覚えていない。とにかくあの人のやることなすこと、僕には合わなかったし、その逆もそうだろう。相手の全てが良く見えたのは片思いをしていた頃。恋心で誤魔化せたのは、付き合いはじめの数ヶ月程度までだった。
「はなからうまく行くはずないってわかるだろ、馬鹿じゃねえの」
自分に言い聞かせてるのか、写真に文句を言っているのか。手に持った煙草はじりじりと指を焼きそうになってきていて、慌てて灰皿に押しつけたが、無意識に写真を避けてしまった自分に舌打ちする。
むかむかした気分を紛らそうと、手元に転がっていた箱から一本取り出そうとした時、ふと気づいてしまった。
「
……
なんであんたの趣味の煙草をいつまでも吸わなきゃいけないんだよ!」
この銘柄、とにかく辛いし重いし全く僕の好みではないのだ。けれど一足先に大学生になったあの人が、僕の知らない匂いをさせて、喫煙室にひとりで向かうようになったのが嫌で、まずいまずいと思いながら同じものを吸うようになったんだった。
『無理すんな、美味いもんでもねえよこんなの』
せがんであんたからもらい煙草して、案の定盛大に咽せた僕を、笑って眺めながらそう言ったんだ。みっともない僕を見るその表情が、やっぱり美しく頭の中で再生されるのが悔しくて仕方がない。
ライターを持つ手はもう震えていない。今度はちゃんと火をつけられた。ゆっくり、確実に灰皿の中の男に火を近づけていく。
「もううんざりなんだよ、本当に
……
さようなら!」
音もなく火のついた男は、当然ながら抵抗もせず燃えていく。大した時間もなく写真は全て灰になった。
手こずっていたのが馬鹿らしい。紙の燃えた臭いが妙に鼻につくが、これだけ空調が効いてればきっとそのうち空気も入れ替わる。そうだ、こんなまずい煙草も捨ててしまおう。勢いづいて立ち上がり──
「っっってえっ!!」
机に膝をぶつけた。
「
……
~~~っさいっあく
……
」
それだけでなく、机の上の灰皿が落ち、灰がそこらじゅうに散らばる。舞い上がったのをうっかり吸い込んで思いきり咳き込んだ。
膝は痛いし咳は出るし部屋は臭いし、もう何もかも嫌になってしまった。掃除をしないと不愉快なままだと理解してももう動きたくない。へたり込んだタイミングで携帯が鳴った。
とにかく億劫で、こんなタイミングで電話してくる方が悪いと完全に無視を決め込んだが、呼び出し音が止む気配はいっこうにない。その上──
「おい! どうした! なんで出ねえんだ!」
玄関の方から聞き慣れた声が響く。いったいどういう了見だこの野郎という怒りが倦怠感を上回った。
「全部あんたが悪いんだよ! 何もかも!」
灰を蹴散らしながら玄関へ走り、叩きつけるようにドアを開け叫ぶ。部屋の外にいたのはやはり、今世界で一番憎らしい、恋人の顔だった。
「あんたの写真未練がましく見てるのが嫌で燃やしたら臭いし、あんたの好きな煙草なんて捨ててやろうとしたら足ぶつけるし灰は散らかるし、もう散々です、あんたが嫌なら出てっていいとか好きにしろとか言ったせいでこんな、どうしてくれるんですか!」
「お前
……
」
改めて口にするとなんの正当性もない主張だ。それでも言わなきゃ収まらない。
「
……
あのな、俺だって言いてえことは色々ある。俺の部屋に置きっぱなしのお前のスウェットとか飲みかけのペットボトルとか、本棚から出すだけ出して積んであるままの本のこととか
……
」
別に勝手に捨てればいいし勝手に片付けたらいい。別れ方まで合わないのか僕らは。
「俺は少し頭冷やせくらいの気持ちで言ったのに、お前はまさか別れるつもりなのか、とか」
「
…………
は?」
「なあ、俺のせいだってんなら灰の掃除くらいする、上げてくれねえか。どうせそのまんまにしてるだろ」
「そういう! 見透かした言い方が! 腹立つんですよ!」
「不満は全部顔見て言え、少なくとも、俺はまだ別れるつもりはねえ」
本当に、僕とこの人はとことん噛み合わない。どうせまたそのうち喧嘩になるに決まっている。それでもまだ終わりではないことに、ほっとしている自分がいるのも事実だった。
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