鹿
2023-12-31 16:22:03
13248文字
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CPシチュスロットまとめ

スロットメーカーさんの #CPシチュエーションスロット で出てきたシチュのSSをその日のうちに書いてみるチャレンジのまとめ。全部土斎。現パロだったり謎時空のパロだったりデア軸だったり。


朝の公演で/いけないと思いながら/飯を食う


 なんだか泣きたくなってきた。
 けど僕は大人なので我慢します。いや大人でも泣きたい時くらいあるじゃない? 泣かせてよ?
 いやこんな朝っぱらの公園で泣くわけにもいかないでしょ、しかもカロリーバーを貪りながらとか……
 いや、そもそも僕が泣きたいのは朝から公園でカロリーバーを食ってるこの状況に対してなんだけど……? どうして僕を泣かせてる状況のために、泣くのを我慢しないといけないわけ? それが大人ってこと?
……っべぇ! 時間無いってのに!」
 自分はサラリーマンなので、無限に落ち込みたい時でもギリギリで営業に向かわなければならないことを思い出せる。しかしそれを立派な社会人だと言うのなら、自分はなんとつまらない存在になってしまったのだろう。
『斎藤、お前また隈がひどくなってねえか?』
 同棲中の恋人に、そんな風に言わせることが、大人のあるべき姿だろうか? 営業先に向かう電車に揺られながら考える。
 実のところ、毎日会社に行って仕事をしている以外に、自分の大人らしいと言えるところなんて無いのだ。その毎日会社に行くというのにしたって、一緒に住んでる恋人の土方さんがリモートワーク主体で、家事のほとんどをやってくれてることを考えると、到底胸を張れることには思えなくなる。
『作り置きは冷蔵庫にある。忙しくても、朝は何かしら食えよ』
 そう言ってくれるあの人の心遣いを、寝坊して受け取ることさえ出来ず、コンビニで買ったカロリーバーを摂取していたのが先ほどまでの自分だ。
「土方さん、ごめんなさい……
 マスクの中でぼそりとつぶやくと、自分の情けなさにまた涙が溢れそうになったが、周囲の目を気にしてできなかった。
 けれど、世間体ばかり気にして、申し訳ない気持ちを外に出すことさえできない自分は、かえってみっともなく感じられた。
「おう、帰ったか」
 家に帰ると土方さんはすっかり夕食の用意を済ませて待ってくれていた。具沢山の味噌汁、鶏の照り焼き、蒸し野菜には手作りのソースが付いていて、土方さんの好物のたくあんも自分で漬けたものだ。
「どうした? もしかして風呂が先の方が良かったか?」
 いよいよ涙が溢れてくるのを止められなかった。
「お、おい、なんだ急に⁉︎」
「ごめんなさい……朝ごはん食べられなくて……
「はあ?」
「ごめんなさい、帰ってくるまで泣けなくて、ごめんなさい、帰った途端こんなに泣いて、ごめんなさい、外面ばっかで、あんたに甘えてて、ごめんなさい……
 スーツを着替えもせず突っ立って泣いていること、泣き言の内容がことごとく情けないこと、泣いたところでまた明日もいつも通り出勤するのだろうこと、全てが申し訳なくて仕方がない。
…………ふ」
 なのに、どうして泣かれている当人が笑っているんだ?
「僕泣いてるんですけど」
「おう」
「なんで嬉しそうなんですか」
「いや、悪いとは思ってる、すまん」
 どうして謝っていたはずの僕が謝られてる? しばらくの間、くく、と喉の奥で笑う恋人を鼻をすすりながら見つめていた。
……格好つけで働き者のお前が、俺には甘えてるって思うと、どうにも嬉しくてな」
「僕本気で落ち込んでるんですよ」
「だからすまんと」
「一緒に住んでるんだから、本当はもっと僕も家事分担したくて、でもあんたに頼ってばっかで、そういうの辛いんですよ、わかってます?」
「わかったわかった、次の休みは気合い入れて掃除したいと思ってんだ、頼まれてくれるか?」
…………しょうがないですね」
 なんで僕が許している形になっているのだろう。
「早くご飯食べましょう。終わったら僕が皿洗います」
「ああ、助かる」
 正直完全に納得できたわけではないのだけど、こうやって譲り合いながらやっていくしかないのだろう。お互い、大人なので。