鹿
2023-12-31 16:22:03
13248文字
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CPシチュスロットまとめ

スロットメーカーさんの #CPシチュエーションスロット で出てきたシチュのSSをその日のうちに書いてみるチャレンジのまとめ。全部土斎。現パロだったり謎時空のパロだったりデア軸だったり。

ソファの上で/考えが読めない表情で/髪を撫でる




 土方は、柄にもなく緊張していた。
…………
 ソファで土方の隣に座る斎藤は、先ほどから無言である。
「なあ、何かあんのか」
……いえ、何も」
 何もないのなら、なぜずっとそうしているのか。斎藤は、土方の髪を撫で続けている。
……白髪でも見つけたか?」
「いいえ、枝毛一本さえ見当たらない。綺麗なもんです」
 髪を撫でるだけなら別に構わない。かわいい部下兼恋人との触れ合いなのだから、好きにさせてやるし、土方の方からも撫で返してやるだろう。
 しかし斎藤の表情は何とも言い難いものだった。楽しさや喜びでないことは確かだが、悲しんでいるとも怒っているともつかない。ひどく切実で、こんななんでもない日に見るべき顔ではない気がした。
「そういえば最近シャンプー変えたんだったな、姉ちゃんが勧めてくれたやつ」
 言ってから土方は、なんとも自分らしくない発言だと妙に恥ずかしくなった。こういう世間話で気を逸らそうとするのはむしろ、この髪を撫で続けている男がよくやることだ。
「ああ、なるほど。香りもいいですね」
「お前も使ってみるか?」
「やめときます、僕じゃ髪質も合わないだろうし」
 そう言ってまた無言で髪を触る。今度は自分の髪と見比べるようにしていた。
「なあ、本当にどうした」
「僕は、枝毛あるんですよ。こないだ白髪も一本見つけました。あんたより年下なのに」
……シャンプー、選んでやろうか?」
「そうじゃないんです。あんたは老けないのかなって」
 もっと悔しそうだったり、羨ましそうであれば理解できない話でもなかった。しかし斎藤は今ひとつ焦点が合わない表情をしている。
「あんたが、しわしわの爺さんになったところが想像できない」
 目の前の土方に顔を向けているのに、どこか遠くを見ているような。
「別に、想像されたくねえよ。そんなヨボヨボのジジイになった姿」
「なんでですか、俺は見たいです。あんたが顔じゅうシワだらけで髪も真っ白で、腰が曲がるまで、生きて、それで昔は誰もが振り返る色男だったんだなんて言ったら、若いやつに嘘だあって言われて……でも、そんなことあり得ないって思っちまって」
 もっと愉快そうに言ってくれれば、失礼な冗談を言うやつだと言って終わりにできた。しかし真剣に答えようにも、何をそんなに追い詰められたようにしているのか、土方にはまるでわからない。
 結果、上手くもない冗談を言う羽目になった。
……なんだよお前、老け専だったか?」
 しかし、あまりに下手くそな冗談には、笑いどころか白けも起こらないらしい。
 言われた斎藤の顔は、泣きそうにも、待ち焦がれた救いを見つけたようにも見えた。
「大好きです。あんたが俺にちゃんと爺さんになったところ見せてくれたら、きっと一生好きになります」
 つまらない冗談に対する返しとしては、あまりに痛切な声だった。
 この男は自分が老けた姿を想像できないと言う。しかし土方の方は、見たことがないはずのその姿を、ありありと思い浮かべられるような気がしている。どうしてか、初めて出会った時から、どこか老人のような顔をする男だと思っていたからだ。