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いまち
2022-01-23 02:10:36
28972文字
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ティナの借金返済記(とちゅーかも
いただきネタその3。続きは書けたら書く(゜ω゜
8/28 6P~増えた。ついでに借金も増えた。
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いざ出てみると、キッチンで感じていた通り、ラウンジ内はお葬式のような静けさだった。心なしか、空気も冷たい気がする。
なにがあったらこうなるのかと不思議に思いながら、とりあえず言われた通りに7番テーブルに行こうとすると、お茶を淹れていた子に声をかけられた。
「キースリンクさん。どうしたんだい、君はキッチンだろう?」
「えと、7番テーブルに行きなさいって言われて
……
あの、何があったんですか?」
「え
――
あぁ!」
その子もまた、あからさまにほっとしたような顔をすると、お冷とおしぼりをのせたトレーを出して、私に押し付けてきた。
「そうかそうか、それじゃあ頼むよ!」
「え? あの
……
」
「ほらほら、お待たせしたら悪いだろう?」
「え? えと、はい
……
?」
なんなんだろう。トレーに乗ってるのは4人分。怖い人が4人いるってことなのかな? そんな人たちなんて思い当たらないけど。
うすら寒い空気の中、働いてる子も、お客さんもみんな居心地が悪そうに俯いている。何があったのか分からないけど、怖い雰囲気なのはいやに伝わってきて、私も不安になってきた。
ついでに、オクタヴィネルの人たちって優しいと思ってたんけど、厄介ごとを人に押し付けたりするんだなって思って、ちょっと悲しくなった。
怖い思いはしたくないなぁって思いながら7番テーブルに近づくと、見覚えのある頭が4人分、椅子の間から覗いていた。
「マレウスさん! リリアさんたちも
……
どうしたんですか?」
そこにいたのはマレウスさんとリリアさん、それにシルバーさんとセベクくんだった。マレウスさんとリリアさんを真ん中に、二人を挟むようにしてシルバーさんとセベクくんが席に着いている。
声をかけると、メニューを見ていたリリアさんが顔を上げていつものにこにこ顔を見せてくれた。
「おぉ、キースリンクよ。なぁに、お主の働きぶりを見たいとマレウスが言うてな、邪魔しておる」
くふくふ笑うリリアさんも、みんなも、見た感じいつも通りだ。よその寮だからかシルバーさんとセベクくんは少し警戒しているような感じはするけど、それもまぁ、いつも通りかな?
それなら、なんであんな雰囲気になってたんだろ? 疑問には思うけど、それよりも思ったような怖いことにはならなさそうで、すごくほっとした。
「そうなんですね。えへへ、いらっしゃいませ、ご注文をお伺いします」
お冷とおしぼりと配って注文を聞いた。
王子様なだけあって、マレウスさんはこういう所でお食事をしたことがないそうで、ちょっと楽しそうにしている。これはなんだ? こっちはどういう料理だ? と聞いてくるのが、好奇心旺盛な子供のようで、なんだかほかほかした気持ちになった。
「
……
以上でお間違いありませんか?」
「うむ」
「ああ」
「承りました。お飲み物をお持ちしますね。少々お待ちください」
注文をキッチンに伝えて四人分の飲み物を用意した。コーヒー二杯と、トマトジュースと、ダージリン。席まで運んで、ついでに他のテーブルの注文を聞きに行こうとすると、ホールで働いてる子が慌てた様子で声をかけてきた。
「キースリンクさんはキッチンで待機してて!」
「え、でも」
「いいから。その代わり、料理が出来たらすぐ運んでね」
「えと、わかりました
……
」
待機ってことはお皿洗いとかもするなってことかな? 一応、お仕事しに来てるのに何もしないのは落ち着かないかも。
そうは思っても、キッチンに戻ってお皿洗いをしようとしたら止められて、他のテーブルのお料理を運ぼうとしたらまた止められて、で、何もさせてくれない。
なんだかなぁ、と思うけど、何もするなと言われれば従うしかない。待って、待って、できたお料理をワゴンに載せてマレウスさんたちのテーブルに運んだ。
「お待たせしました、温野菜サラダと、グリーンサラダと、サーモンのカルパッチョ。セットのスープと、チキンとポテトフライのバスケットです。残りのお料理もお持ちしますので、少々お待ちください」
温野菜はシルバーさん、グリーンサラダはマレウスさん、カルパッチョはセベクくん、スナックバスケットはみんなで食べられるようにテーブルの真ん中に並べた。なんだかんだで結構注文を貰ってるけど、カトラリー足りるかな? あとでもう一セット持ってきた方がいいかも。
ワゴンを押しながらホール内を見回す。さっきよりはいくらかマシになったけど、ここの空気は相変わらずしんとしたものだった。よく見ると、どの席の子もマレウスさんたちのいるテーブルを気にしているみたいだ。
マレウスさんは色んな人から怖がられてるって聞いたことがあるから、この空気もそのせいなのかも。
でもなぁ、たしかに強い力を持ってるけど、マレウスさん自身はおおらかな人だから、怖がることなんてないんだよね。案外人懐こいところもあるのに、こうやって遠巻きにされるのはマレウスさんの望むところじゃないと思う。これはこれでなんだかなぁ、と思いながら残りのお料理を運んだ。
「お待たせしました。空いてるお皿もお下げしますね」
ビーフシチュー、きのこのリゾット、海鮮丼、厚切りステーキ。それぞれ並べて、空になった食器を下げて、空いてるグラスにお冷を注ぐ。カトラリーは足りてるみたいだからいいかな?
「デザートは食後お持ちしますので、食べ終わったら呼んでください」
教わった通り言えてるよね。ちょっとドキドキしていると、マレウスさんが不思議そうに首を傾げた。
「キースリンクは席に着かないのか?」
「私はお仕事中ですので」
「なんじゃなんじゃ、この店では従業員を指名して席に着かせることはできぬのか?」
「なんですかそれ? 聞いたことないです」
「なんと、ではアレは違うのか?」
そう言ってリリアさんが指さした先では、フロイドさんがエースくんたちの席に座ってカレーを食べていた。
……
あれ、売り物だったと思うんだけど。フロイドさん、なんてことしてるんだろ。
「
……
アレはサボりですね」
「むぅ、つまらんのぅ」
「あはは
……
えと、ごゆっくりお召し上がりください」
お辞儀してテーブルから離れる。
ワゴンをキッチンに戻そうと押していると、いやに慌てた様子のアズールさんとすれ違った。なんかトラブルでもあったのかな? ヘンなことにならないといいなぁ、とひっそり祈る。
キッチンに戻ると、相変わらずじっとしてろと言われた。じっとしていろと言われても、みんなが食べ終わるまでは結構かかると思うんだよね。マレウスさんなんかは特にゆっくり食べるし。やっぱり、お仕事しようかな。
そう思ってお皿洗いをしてる子に声をかけようとしたら、すごい勢いでドアが開けられて、アズールさんが入ってきた。険しい顔をしてるから、やっぱりさっきのはトラブルだったのかも。
危ないこととかにならないといいなぁ、なんて思ってたら、アズールさんはまっすぐ私の所に来た。また面倒ごとの予感がして思わず「げっ」って思っちゃった。
「キースリンクさん、今、よろしいですね?」
「えと、はい
……
?」
「よろしいですか?」ではなく「よろしいですね」といやにはっきり聞いてくるアズールさんにとってもイヤな予感がした。
「ではこちらへ、歩きながらご説明します」
早足で歩くアズールさんの後をついて行きながら話を聞くと、私にマレウスさんたちの相手をして欲しいということだった。
理由としては
1.他のお客さんがマレウスさんたちを気にしてラウンジの空気が重くなっている
2.マレウスさんが私とお話したがってる
3.それならマレウスさんの相手を私にさせれば、マレウスさんの意識が私に向いて、他のお客さんは安心してお食事を楽しめるかもしれない
……
ということらしい。お客さんたちもだけど、アズールさんもマレウスさんをなんだと思ってるんだろう。とはいえ、今のラウンジの空気は私もよくないとは思う。私がマレウスさんたちとお話することで、この空気が良くなるのなら、まぁ、いいのかな?
「わかりました。でも、私のお仕事はいいんですか?」
「構いません、貴方一人分の仕事など、どうとでも穴埋めできます」
そりゃあ、今日で二回目だから大したお仕事はできないけど、はっきり言われたらちょっと悲しいかも。
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