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いまち
2022-01-23 02:10:36
28972文字
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ティナの借金返済記(とちゅーかも
いただきネタその3。続きは書けたら書く(゜ω゜
8/28 6P~増えた。ついでに借金も増えた。
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連れて来られたのはモストロ・ラウンジの奥、おっきな金庫のあるお部屋(VIPルームというらしい)だった。そこで、ふかふかしたソファーの応接セットを挟んでアズールさんとお話しをした。
やっぱり、モストロ・ラウンジでお仕事をしながらお皿の弁償をすることになるようだ。そして、お仕事の時間や内容、お給料についての契約をするため、と私の目の前に「労働契約書」と書かれたプリントと割れたお皿の領収書がある。プリントの一番下の欄にサインをすれば契約完了だということだ。それにしても、特注のお皿というだけあってとんでもないお値段だ。これを働いて返すとなると、一体何ヵ月かかるんだろ。
「内容に同意していただきましたら、一番下の欄にサインをお願いします」
と、ペンを渡された。大事な約束事だからちゃんと確認しなきゃいけないんだけど、目を通した感じでは難しい言葉が並んでいて、なかなかどうして分かり辛い。学園長さんが許可を出してやっているお店らしいし、そんな変なことはないだろうから、とりあえずサインしちゃえばいいかな? 23時までっていうのは起きてられるかちょっと心配だけど、なんとかなるかな? 読むだけなのに、あまり時間かけてもアズールさんに悪いしね。でも、もう少し早く上げてもらいたいってお願いしてもいいのかな? でも私が悪いんだし、あまりワガママを言うのも良くないよね。どうしよう。
悩んでいたら乱暴にノックする音がした、しっかり防音されているという部屋なせいか、いやに大きく響く。そしてアズールさんが返事をする間もなくドアが開かれる音がした。アズールさんが不快そうに顔をしかめながらドアに目を向けて、つられて私も見てみると、そこにはフロイドさんがいた。アズールさんに負けず劣らず機嫌が悪そうでかなり怖い。
「フロイド、今は大事な契約をしている最中です。誰も通すなと言ったでしょう!」
「だってさぁ
……
」
「案内、感謝するぞ」
フロイドさんが答えるより先に、リリアさんが部屋に入ってきた。アズールさんは「は?」と少し焦ったような顔をした。リリアさんは小気味良くヒールを鳴らして、誰に断るでもなく私の隣に腰掛けた。そして契約書を一目見ると小さく息をついた。
「あぁ、まだ契約は結んでおらなんだか」
「リリアさん
……
」
「お主がここ連れて行かれたと知らせがあってな、間に合うてよかったわ」
言いながらリリアさんは「くふふ」と笑うとアズールさんに目を向けた。
知らせって、やっぱりトレイさんかな。またいらない心配かけちゃったのかも、と内心ちょっと落ち込んだ。でも、リリアさんが来てくれたのは正直とても心強い。今度トレイさんに会ったらお礼言わないとだね。
「こやつは異世界人ゆえ、物事に疎いところがあってな。わしも同席させてもらう。
……
よいな?」
聞いているふうだけど、リリアさんの目は返事を聞く気はないと言っていて、アズールさんもそれを察したらしい。少し引きつった顔で「構いません」と頷いた。
「不備や思い違いなどあってはお互い困りますからね」
「じゃろう? では、契約内容を改めさせてもらう」
リリアさんは魔法でプリントを取り上げるとじっとそれを読み始めた。
「最低賃金ギリギリではないか。キースリンクはこれでも飲食店経験者だが、そこは考慮せぬのか?」
「メインは壊れた食器の弁済ですので。それに、経験者とは仰っても異世界の、でしょう?」
「勝手はそう変わらぬだろうに、昇給は考えぬのか?」
「その場合は弁済に充てるつもりでしたが、そうですね、確認しましょう。キースリンクさん」
「あ、はい」
「ここでは働きに応じて昇給
……
給料の値上げを行っておりますが、キースリンクさんの給料を上げた場合、割ったお皿の弁済に充てますか? それとも、そのままお給料に反映させますか?」
「お給料?」
ここで働いた分の報酬ってまるまるお皿の弁償に充てるんじゃないんだ。てっきりお皿の弁償が終わるまでタダ働きするものだと思ってた。そっか、お給料貰えるんだ。確かに、ここで夜までお仕事するとなると、お夜食作りのお小遣い稼ぎはできないもんね、それならちょっとありがたいかも。
改めて契約書を読んでみる。「基本時給:800マドル」ってことは、1時間800マドルもらえるってことだよね。えっと、17時から23時まで働くってことは800マドル×6時間だから
……
「1日4800マドル
……
?」
なんて大金だ、お皿の弁償をしなきゃなのに、1日でそんなにもらえてしまうなんて。
……
これだけお給料をもらえるなら、靴とか材料とかの欲しいもの、ほとんど買えちゃうんじゃないかな? 何を買おうかな、なんてわくわくしていると、アズールさんとリリアさんが驚いたような顔で私を見ていた。
「
……
まさか、日給のことを仰っているのですか?」
「え? はい。1時間800マドルの6時間だから
……
違うんですか?」
「拘束時間は6時間ですが、うち1時間は休憩です、ここに書いてますでしょう? 休憩中に賃金は支払われません」
そういってアズールさんが指さしたところには、たしかに言った通りのことが書かれていた。ちゃんと目を通したつもりだったけど、見落としていたようだ、ちょっと恥ずかしい。アズールさんは小さく咳払いをすると「それで」と続けた。
「昇給分はいかがいたしましょう、給料を増やすか、弁済に充てるか」
「えと、それならお皿代にしてください」
「
……
では、そのように」
アズールさんが杖を振るい、契約書の文面が変わった。
「となると、雇用期間はどうなる? こやつの働きによっては皿代を払い終えても働き続けることになるが?」
「
……
少々余裕を持って完済予定日プラス5日でいかがでしょう。もちろん、完済以降は皿代に充てていた分もお支払いいたします」
「そんなに緩い決め方でいいのか? シフトの都合もあるだろうに」
「気にして頂かなくて結構です。働き手は余るほどございますので」
「勤勉なことよ。あぁそれと、聞きたいんじゃが
……
」
「
……
はい、お伺いしましょう」
どことなく楽しそうなリリアさんの顔と、笑顔が消え始めたアズールさんの表情を見て、なんだか大変なことになってきたなぁ
……
なんて思いながら、私は書き替えられていく契約書を眺めていた。
アズールさんとリリアさんの長い長いお話しが終わり、契約書にサインをした。お話合いの結果、土日中心で週4~5日、16時から21時の5時間で休憩なしのまかない付き、時間ごとのお給料が800マドルでお仕事に慣れてきたら950マドルへ段階を付けて値上げ、値上げ分はお皿の弁償代に充てるから私の手元に入る金額は変わらず、お皿の弁償が終わる予定の5日後まで、という契約になったらしい。
お仕事内容はお料理と配膳、それと源素還元を使ってのゴミ処理だという。なんでも、ゴミの片付けには結構なお金がかかるそうで、私が処理するとその分費用を浮かすことができるらしい、そして浮いた分のお金もお皿の弁償に充てるのだという。これはリリアさんの案だ、そうすればお仕事時間を短くした分の費用も賄えるらしい。カボックでもお店のゴミはパパと私で片づけてたもんね、私たちは源素がとれるからいいなーって思ってたけど、そんな利点もあったんだなぁ。
「リリアさん、よく思い付きましたね」
「そうじゃろう?
……
まぁ、そうでもせんと延々搾取されるところだったしな」
「搾取?」
「なんじゃ、気付いておらなんだか」
リリアさんが言うには、最初にアズールさんが設定していた契約日数は2年近くあったそうで、言う通りにしていたらまともに弁償できなかっただろう、ということだ。何月何日までは見てたけど、何年かまでは見てなかった。そんなに働くことになってたのか、カボックへ帰るための研究もしたいから、その時間がとれないとなるとさすがに困るもんね。
「えうぅ
……
」
「まったく、手のかかる娘よ」
「えぅー
……
ごめんなさい」
「構わんよ。寮生の面倒を見るのもわしらの仕事よ」
「う、ありがとうございます
……
」
そんなわけで、早速明日からお仕事になるそうだ。契約書の写しをもらって、リリアさんと寮に帰った。
リリアさんは私のことを経験者って言ってくれたけど、おじいちゃんのお店とモストロ・ラウンジは随分雰囲気が違うみたいだから、うまくやっていけるかとても心配だ。帰りにちらっとお店の様子を見てみたけれど、お料理も飲み物も種類が多いし、盛り付けもとてもオシャレだった。あんなお料理作ったことないし、飲み物だってお酒しか作れないんだけど、ちゃんとできるかな?
今日一日でたくさんの人に心配や迷惑をかけてしまったし、考えれば考えるほど気分は落ち込むばかりだ。
「
……
がんばらなきゃ」
とはいえ、落ち込んでいても仕方ない。気を取り直そうと、私は明日持って行くエプロンを洗うため、クローゼットを開けた。
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