森野 霞
Public
 

変わらない8月と君がいる9月_メインストーリー_8月

公式Twitterアカウントで画像で投稿しているメインストーリーを文章の形でまとめ直しております(複数画像やツイートに分かれていて見返しにくい部分もあるため)。
日付でページを分けています。こちらは8月更新分です。ストーリーをまとめて見返したい際などにどうぞ。
※多少修正や変更、増減している部分もあります。内容に大きな違いはありません。


■8月30日(火) 曇りのち雨


アオバくんと連絡が取れなくなって、1週間。
――引退配信から、1週間が経っていた。

「はぁ〜〜〜…………

私の口からはため息しか出ない。相変わらず返信も既読も付かないメッセンジャーアプリの画面を開く。

「アオバくん、」

何とはなしに、彼の名前を呟く。……と、突然、私から送ったメッセージに既読マークが付き、直後にメッセージが飛んできた。

驚きに思わず端末を取り落としてしまいそうになる。うっかり落としてしまわないよう、慌てながらもしっかり持つ。アオバくんからのメッセージを確認しようと、画面を覗き込む――そこには、簡潔な一言が記されていた。

『今夜、事務所の屋上に来れるか?』

----------

「はっ、はぁっ、」

吐息が弾む。早く、会わなくちゃ。会って聞きたいことがたくさんあるんだ。
――結果的には、何も知ることは出来なかったけど。

----------

「アオバくん!!!」

事務所のエントランスを通り、階段を駆け上がって屋上の扉を勢いよく開く。
人気のない屋上、フェンスに凭れてアオバくんが立っていた。

「よー。早かったな」

彼はまるで連絡もせず、消息不明となっていたことも無かったみたいに、いつも通り笑っていた。あんまりにも変わらないから、拍子抜けしてしまった。

「はぁっ!走ってきたから疲れちゃったよ〜!」

私は膝に手を付き、そんな感想を洩らす。アオバくんは楽しそうだった。嬉しそうに、笑ってた。

……ねぇ、聞きたいことが――

……俺は」

「俺は、何も言う気はねぇよ」

ただ……、俺はお前を助けたいんだよ、心晴」

私が何かを言う前にアオバくんは静かにそう呟いた。
もうアオバくんは、笑ってはいなかった。真剣な瞳で私を射抜く。私は何かを言おうとして、唇を動かす。でもやっぱり声は出なくて、吐息だけが洩れた。

――、えっと、その……

「そんな顔すんな。大丈夫だから」

アオバくんは固く目を閉じて、もう一度目を開く。その時にはまたさっきと同じように――アオバくんは微笑んで、いた。……アオバくんは目の前にいるのにどうして遠くに感じるんだろうか?

私は少しの間、呆然としていたが、カシャン、と音がして、アオバくんがフェンスの向こう側にいることに気付いた。彼は後ろを向いていて、もうどんな表情をしているのか、分からなかった。