【リーマンパロ】

設定と小ネタまとめ。
出演:案内/律。友情出演:子守/こころ&じゅん(双子)
※案内と子守は世界観の都合上、名前を変更しています。




という会話を経て。
真夏の最中、北海道に来た2人。飛行機に乗って空港に着くと、灯春の家族全員が待ってくれていた。
「「ともにい!」」と真っ先に駆けつけてくる瓜二つな顔立ちの少女と少年。双子だろうか。小柄な灯春よりさらに小柄で幼い印象を受ける。年が結構離れているのかなと後ろに控えていた律が思っていると、灯春が紹介してくれた。
8歳年下の双子の弟妹だという。8歳年下。灯春と律の年齢差が10歳だから……あれ、もしかして。僕より年上……?しかも2歳上……つまり27歳?(宇宙猫になる律)。でもよくよく考えたら灯春さんも35歳には見えないし、よく中学生と間違われるくらい幼い見た目してるし……と謎の納得を一人でしていると。
「いらっしゃい。会いたかったわ」とにこやかに微笑む小柄な女性がゆっくり歩み寄ってきた。見た目も声も若い。灯春さんのお姉さんだろうかと思っていると、お母さんだった。
その後ろから柔和な笑みを浮かべたメガネの男性が「ようこそ」と静かな声で出迎えてくれる。お父さんだという。ここまで来れば紹介されなくても分かる。それにお父さんだけ小柄じゃないし顔つきも大人の男性だから雰囲気ですぐにわかった。
灯春さんの外見はお母さん似なんだなと新しい発見を得ていると、双子がじいっと律を観察していた。「な、何……」とたじろいでいると「ともにいが好きなタイプだね」「美人さんが好きだもんね」とひそひそ話をしていた(丸聞こえ)。
すると灯春は律の腰を抱き寄せ「ああ。好きだ。好きでたまらない」と仄暗い笑みを浮かべた。表情が見えず言葉だけを聞いた律は瞬時に顔がリンゴのように赤くなる。
律の反応に注目した灯春の両親は「あらあら可愛らしい」「青春だな」と微笑ましそうに感想を抱く。
その一方で灯春の表情に注目した双子は「独占欲丸出しだね」 「やりすぎて逃げられても知らないよ」とひそひそ話していた。灯春は双子にだけ聞こえる声量で「誰が逃がしてやるもんか。絶対に逃がさない」と低く呟いた。



その後、灯春の実家に行きみんなでご飯を食べる。食べ終わったあとはおしゃべりしたりゲームで遊んだりする。終始一貫して律の傍から離れない灯春。トイレに行く時もついてくる(さすがに中には入ってこないが)。会社でも一緒に住んでいる家でもこんなにべったりすることは無いのに珍しいなと思いつつも、別に嫌ではないので好きにさせてる律。
そんな灯春を見兼ねたのか双子の片割れが「お母さんが手伝ってほしいことあるって。ともにい行ってあげて」とさりげなく2人を離そうと試みる。だが灯春は聞こえないフリして無反応。
「僕が代わりに手伝いに行きましょうか?」と気を利かす律だったが、「だーめ。りっくんはお客さんなんだからじっとしてて」と双子に制止される。いつの間にか「りっくん」と呼び始めた双子をじとりと睨む灯春。その眼光に怯えることもなく双子は「ともにいの力をお母さんは必要としているの。話だけでも聞いてきてあげなよ」と冷静に諭す。
灯春は深いため息をついて、渋々といった感じで立ち上がる。「悪いな。待っててくれ」と優しく律の頭を撫でて立ち去る。ドアが閉まったのを確認して双子は「やっと番犬をどかせた〜」「自由だよ、りっくん」とそれぞれ歓声を上げる。どう反応していいかわからず、とりあえず苦笑する律。


「大切なおもちゃを取られないように威嚇しながら守る犬みたいだったね」「家でもあんな感じ?」
「家ではあんなにべったりだったことは無かったですね。ここに来て初めてなくらい」
「そうなんだ。……自分で言うのもなんだけど、私たち山吹家はみんな心を許した相手には距離が近くなるから、ともにいはそれを警戒しているのかもね。私たちの誰かがりっくんを取るんじゃないかって」
「実はりっくんのことをともにいからあまり聞かされてなかったんだ。お母さんもお父さんも。たぶん事前に情報を与えすぎると必要以上に興味を持たれてしまうかもしれないって警戒したんだと思う。今日りっくんと初めて会って一緒にご飯食べたりおしゃべりしてやっとりっくんがどんな人なのかわかったし、ともにいの気持ちも少しわかったよ。こんなに素敵な魅力がたくさんつまっているんだもん。そりゃあ簡単に教えたくないよね」


双子は難儀な性格の兄にやれやれといった感じを出しつつも嬉しそうだった。


「りっくんはともにいのことをどう思ってる?」
「え? えーっと……


唐突に振られた話題に律は面食らいつつ、口を開く。


「灯春さんは僕が最も尊敬する大人の男性で上司です。器用で優しくて頼りになる、一緒にいてとても安心できる人。それに面倒見がとても良くて誰よりも忙しいはずなのに誰かが困っていたらさりげなく助けてくれたり支えてくれる。誰も気づかないようなことにもすぐに気づいて配慮したり褒めたりしてくれる。悪いところが何も出てこないくらい素敵な人。何より僕を同じ家に住ませてくれているのがとても幸せでありがたいです」


もはや惚気のように語る律に双子は「ごちそうさまです」「お似合いな2人で安心」とにっこり満面の笑みを浮かべた。双子の片割れはちらりとドアを見遣るとそっと立ち上がり部屋を出る。
ドアの外で顔を覆ってうずくまる灯春。表情は見えないが、耳は赤く染まっていて、照れているのが一目で分かる。
「盗み聞きとは感心しないね?」とからかえば「……うるさい」と突き返すような言葉とは裏腹に嬉しさが隠せていない声音が小さく返ってきた。



それからは灯春はべったりくっつかず一定の距離を取ってても涼しい顔をするようになった。からかい目的で双子が律にくっついていても、兄として微笑ましそうに見守るだけ。
「ともにいは意外と自信無いんだ。たまにでいいから、褒めてあげてね」と双子からアドバイスをもらう。灯春が盗み聞きしてたくだりは知らないので「?」となりながらも素直に聞き入れる律。



「灯春くんは人を甘やかすのは得意だけれど、自分が誰かに甘えるのは苦手なの。だから律くんに甘えられてる灯春くんを見てとても安心したわ。これからも息子と仲良くしてあげてね。困ったことがあったらいつでもLINEしてちょうだい。私からガツンと注意するから」
と灯春の母親。


「仕事の配属や同居を灯春が強引に事を進めたと聞いて申し訳なく思っていたが、律くん本人が幸せそうでよかった。年上だからと気にせず嫌なことは嫌とハッキリ言うんだよ。言いづらかったら僕や妻、双子たちに連絡してくれ」
と灯春の父親。


全員個性的だが心の広さは同じ。灯春の温かくて懐が大きい理由が分かった気がする。


帰りの空港で「またいつでも遊びにおいで」と灯春の母親にハグされる律。一瞬ギョッと肩を跳ねさせつつ、平静を装うように笑顔で腕組みする灯春。双子と違い母親には強く出られないらしい。それを見ていた双子はひっそりあっかんべーしながらクスクス笑う。「全くもう……」と困ったようにため息をつきつつも慈愛に満ちた目で面々を見守る灯春の父親。
温かい家族たちに触れて離れたくないなと名残惜しく思う律。泣きそうになっている律を察してか又は時刻が迫っていたのか、灯春は律の手を取り「母さん、もう行くから」と引き離す。
「来年の夏にまた一緒に帰ってくる」と端的に言うと灯春は背を向けて歩き出す。手を繋がれたままの律も強制的に歩かざるを得ない。
慌てつつも、律は別れの挨拶をしながら手を振る。家族たちもにこやかに2人の姿が見えなくなるまで手を振り続けてくれた。


「泣き顔まで独占するつもりだよ」「ずるいなぁ、ともにいは」「まあまあ。灯春の持つ特権だからいいじゃないか」「律くんいい子すぎて私の子にしたくなっちゃった。これを灯春くんが聞いたら怒りそうね」「お母さんには怒らないよともにいは」「怒ったらお父さんが出てくるから怖いもんね」



一方で飛行機に乗った律は指定座席に座って早々、べしょべしょに泣いていた。「いいご家族さんですね泣」とすんすん泣く律の涙をハンカチで拭う灯春。「まあ、そうだな」と素っ気ない返答だが満更でもなさそう。独占欲丸出しで家族を警戒していたが、それさえ無ければ灯春も自分の家族は大好きなのだ。
「それに」
数分して少し落ち着いた律は灯春の目を真っ直ぐに見て微笑む。
「灯春さんの子供っぽい一面を見れて新鮮でした」
「こどっ……
「いつも見ているのがかっこいい大人の灯春さんでしたから意外で。べったりされてたのはびっくりしましたがそれも嬉しくて」
愛おしいものを見るかのような表情で笑う律に灯春は顔が熱くなる。ゆっくりそっぽを向く灯春に「そういうところとか」と追い討ちをかける。「分かった。もういいから」とそっぽを向いたまま、けれど耳が赤いので照れてるのはバレバレだ。あまりにも微笑ましくて律は堪えきれず声を出して笑った。




「僕も実家に帰りたくなってきたな……
「オレもお前の実家にまた遊びに行きたい。冬休みに行くか?」
「いいんですか?」
「ああ。それにお前のおばあちゃんから「次はいつ来るの?」ってよくLINEをもらうからな」
「え、灯春さんいつの間におばあちゃんとLINEを……ってかおばあちゃんはガラケーだったはずじゃ……
「お前が独り立ちしてから2年後にスマホを買ったらしいぞ。今度帰ったときにLINE交換してもらえ。律とも話したいって寂しそうにしてたから」