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普賢とその他CP
トリミング その他いろいろ編7
twitterにアップしていた極短編まとめです。乙普、楊普、玉普、望乙、玉雲、紫陽洞、楊戩と太公望ほか。お題をいただいたものやワンドロに参加したものなど。腐向けもあります。
「今回が最後だって言ったよね」
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【乙普】ポップコーン/「楽園」より
ジリジリと耳障りなベルの音が響きわたった。
ベルベットの椅子はくたびれて座り心地が悪いが、それでも姿勢を正して上演を待った。隣に座る人の手からポップコーンを二、三個取り上げる。ぽんと口に放り込むとふわっとバターの風味が口に広がった。やっぱり手がベタベタする。塩バターじゃなくてキャラメルにすればよかった。
「普賢、コーラは?」
小声でストローをこちらに差し出すので、かるく身を傾けて口をつけた。しゅわしゅわした刺激がのどを潤して、そうこうしているうちに照明が落とされる。隣にいる人の目はもうすっかりスクリーンに向けられている。
街の映画館が閉館になると聞いた。
オーナーが趣味でやっている映画館で、マイナーな映画ばかり選んでいるから普段から客はほとんどいなかった。閉館の話を聞いても逆に「まだやっていたのか」としか思わなかったほどだ。
「最後に行ってみようか」と誘ったのは太乙で、映画鑑賞の趣味があったのかと首を傾げる。全然知らなかった。
「あそこはああ見えて、ちゃんと古き良き正しい映画館なんだ。ポップコーンもコーラもある。そういう休日もたまにはいいんじゃないかな。娯楽はデトックスだよ」
ここのところ忙しかったし、太乙のいうとおりたまにはいいかもしれない。図書館にこもる予定を変更して、研究室に寄ってから映画館の前で待ち合わせた。
「それにしても最後だというのにホラーなんだ
……
」
「完全に趣味だねえ
……
」
最終上映日のラインナップは世界中のホラー映画で、映画賞を取った名作からコメディタッチのB級ホラーまで、上映開始から終演まで延々と流し続けるらしい。ホラーじゃなければもっと人が来たかもしれないのに、見れば自分たち以外に客はおらず、文字通り貸し切り状態だ。ど真ん中後方の特等席で「よほど他人に見せるのがイヤなんだよ」と太乙は笑うが、あながち間違ってはいないのだろう。自分のための自分だけの空間を、最後に独り占めしたいのだ。
映画が始まった。嵐の夜、どこかから聞こえる叫び声、ときどき振り返りながら走って逃げる男とそれを追うモンスター。ようやく隠れたと思ったら背後の扉がバーンと開いて見つかる展開は、呆れるほどバカバカしいのにドキドキする。
うわあとかギャアとか二人で大げさに声を出しながら、笑ったりびっくりしたりした。握り合った手はどちらも汗をかいていたし、コーラの紙コップを落としそうになるのもおかしかった。驚いた拍子にポップコーンをこぼしたから、きっと足元はポップコーンだらけだ。
甘いバターの香りに酔いそうになるころ、絶体絶命の主人公を間一髪で救ったのは途中で崖から転落したはずの恋人で、一発の銃弾がモンスターを貫通してジ・エンド。ホラーなのに実に安易なハッピーエンドに、笑いすぎて叫びすぎて涙が出たけれど、これはこれでスッキリ気分爽快だった。確かにデトックスだ。結局、四本見たところで疲れ果てて映画館を出た。
ポップコーン売り場にいた老人がぼそりと「ありがとうございました」と呟いた。
「あなたがオーナー? いやあ、たいへん貴重なものを見せていただいたよ。最後に来て本当によかった!」
太乙がその手を取ってぶんぶんと振った。迷惑そうに、それでもどこか「してやったり」な表情で二人を見てから「それはよかった」とにやりと口の端を上げた。最後の客としては合格だったみたいだ。
一歩外に出れば、まだ夏の気配が残るくっきりした青空がまぶしかった。
「どこかでご飯でも食べていくかい」
「もうとっくにお昼すぎてるし、おなかすいたね」
そういえば映画に登場する食べ物はどれもおいしそうだった。どれもモンスターに蹴散らされていたけれど。
「お店を選ぶならモンスターが来なさそうなところを選ばなきゃだね」
「もし襲ってきてもすぐに逃げられるところにしようよ」
笑いながら街を歩く。秋はもうすぐそこまで来ている。
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