ろく
2026-07-07 11:18:23
12604文字
Public 極光の流星
 

序章 失われた流星へ

CCA後if。シャアは直前にアムロから離され生存。



 三人掛けのソファで気絶するように眠り込んだアムロをカミーユはそこに横たえ、セイラはその頭の下へクッションを差し込んだ。
 用意してあったブランケットを慣れたように掛けてやる二人の行動をシャアはじっと見ていた。

「慣れているな。いつもこうなのかね?アルテイシア。」
「ええ、そうよ。体力がなくて、眠ってしまうの。」

 三人の表情は厳しい。
 眠りに落ちる前にアムロと話したことが、決して明るくはなかった。ただ、皮肉にも本人は穏やかなままだった。

「今日は泊まっていかれて?兄さん。」

 妹からの意外な申し出に、シャアは驚いた。

「いいのかい?」
……離れがたいと、そう顔に書かれていてよ?」
「そう……だな。本来なら、アムロの許可を得たことだし、早急に帰還して準備を進めたいところだが。」
「準備するわ。まだ、話したりないでしょう?」

 実際そうだった。ずっと反抗的だったカミーユも反論しない。アムロからの告白が衝撃だったのだろう。

 『俺はもう、長くはないから』

 だから、自分が連邦にされたことを暴露して、政府との交渉、牽いてはスペースノイドのための揺さぶりができるというなら、いくらでも。
 そう、アムロは、ネオ・ジオンではなく、シャアという友として、自分の過去を公表しても構わないと言ってくれた。
 シャアは、今日着いていきなりアムロを連れ出せるなど最初から思っていたわけではない。ただ、本人の許可なしにアムロの過去を連邦への揺さぶりに使うのは誠実ではないと思ったからだ。
 シャアはもう、アムロに対しては誠実であろうと心を改めたのだ。そうでなければ、共には来てもらえないと痛感したからだ。

「いや、時間が惜しい。近々また来よう。」

 シャアは、ブランケットからアムロの指先を探り出すと、そこにそっと口づけた。

「必ず、君を連邦政府から自由にしてみせよう。」

 アムロは決して口を割らなかったが、セイラが暴露した。
 一年戦争後、軍を辞めさせてももらえず、進学どころか士官学校すら行かせてもらえず。あまつさえ人体実験の検体の憂き目、そして体を壊して軟禁されていた事情。
 アムロがその境遇を受け入れざるを得なかったのは、かつてのホワイトベース、すなわち、セイラたちを人質に取られてのことだったと。
 アムロが受けた仕打ちを知ったのは、セイラですら近年だったという。
 カミーユも初耳だったようで、憤怒の形相をしていた。

「とりあえず、護衛を配備する。アムロ君を頼む。」

 シャアは決意を決め、セイラの別荘を後にした。