ろく
2026-07-07 11:18:23
12604文字
Public 極光の流星
 

序章 失われた流星へ

CCA後if。シャアは直前にアムロから離され生存。



 アクシズショックから2か月。
 セイラ・マスは、戦いに参加した行方不明者の死亡を確定したとのニュースを辺境の海辺の別荘で知った。

「これで、アムロさんは戦死したことになるわけですね。」

 そばにいたカミーユ・ビダンという、セイラとは面識がなかったはずの若き医師がつぶやく。

「ええ。でもまだ油断はならないわ。連邦軍はアムロの遺体をしつこく探すでしょうし、匿われている可能性も考えて当然ね。」

 事実、こうして匿っているのですもの。とサンルームのソファを流し見、そっと安堵の息を吐く。
 そこには、戦死判定されたはずのアムロ・レイがブランケットに包まれて眠っていた。

 家主であるセイラはともかく、なぜカミーユがこの辺境にここに居るのかも含めて、不可思議なことが続いた。ニュータイプであるカミーユでさえ戸惑うような不可解なことが。

 アクシズショックのことを強いニュータイプであるカミーユはずっと月面で感じ取っていたし、知り合いだったアムロやシャアのことを想い、苦しんでいたともいう。そして唐突なアムロの閃光のような思惟とともに、彼を感じなくなったと。

 そこからだ。カミーユはかつて愛した女性、フォウの声を聴いた。
 ———彼を助けて、カミーユ。コッチよ
 その声に導かれるまま地球に降りる手はずをし、パートナーのファを残してシャトルに乗った。
 ———コッチ、コッチよ
 たびたび聞こえるフォウの声から、アムロが地球に落ちたのだと確信した。理屈ではない。だったら、早く早く、と焦りながらエアポートを乗り継ぎ、レンタカーを走らせた。宿など取っていられなかった。
 一昼夜以上かかってたどり着いた先が海辺のセイラの別荘で、戸惑った。どう名乗っていいのか、うかつにアムロの名を出すわけにもいかなかったわけだから。
 その時だ、すぐ近くの海辺から閃光が走り、緑色の燐光を放ったガンダムの機体が現れた。

「アムロさん!?」

 確かにアムロの存在を感じたカミーユの叫びに、家主であるセイラがカミーユとガンダムを交互に見て、二人とも走った。
 いまだ燐光を放つガンダムは迎え入れるがごとく片膝をついて二人を待っているようだった。
 コクピットのハッチまでよじ登り、外部開閉操作をしたカミーユは、やはり燐光を放つコクピット内をのぞき、操作パネルにぐったりと身を預けたアムロの赤茶のくせ毛を見る。

「アムロさん、アムロさん!!しっかり!」

 コクピットから意識のないノーマルスーツのアムロを、セイラも手伝いながらようやっと砂浜にそっと寝かせたところで、燐光とともに存在を誇示していた機体が、現れたと同じように視界から消えた。むしろ最初からそこには何もなかったかのように、佇んでいた場所に痕跡すらなかった。
 あるのは面識のない男女と、意識のないアムロだけ。しばし呆然としても仕方がないだろう。
 しかしカミーユはすぐにアムロの呼吸と脈を確認した。幸い、危険な状態ではない。

「あなた、誰?」

 カミーユは壮絶な美女であったセイラに拳銃を向けられていて、こんな荒唐無稽な状況を、アムロのことをどう説明したものか、焦っていると。セイラからアムロを案じる思惟を感じ取り、明らかな関係者だとわかり、微笑んだ。

「まずはアムロさんを安全な場所に。僕はカミーユ。彼の後輩で、医師です。」
「貴方は、連邦軍の関係者?」

 セイラはなかなか銃を下ろさなかった。アムロを思って相当警戒している。
 突然現れたアムロに戸惑うことは当然ながら、セイラの警戒ぶりがカミーユには理解ができなかった。

「まずはアムロさんを休ませて、診察させてください。」

 この時は、カミーユには理解が及ばなかったのだ。アムロの生存を軍に知らせることの危険性を。
 セイラという、かつての一年戦争をアムロとともに過ごした彼女のことも。

 アムロは衰弱し、打撲は多数あるものの、命に別状はないと、駆け出しの医師であるカミーユは診た。
 診察中、セイラからの説明でおおよその事情を把握する。それと同時に、消えたガンダムから感じたたくさんの思惟の理由を考える。アムロを死なせまい、守ろうとする複数の思惟。その奇跡がカミーユを此処に、セイラのいるこの場所に導いた。彼ら彼女らの意思が、二人にアムロを託したのだと、自惚れではなくカミーユはセイラと語り合った。
 二人は、こうして同志になったのだ。