錘(つむ)
2026-06-01 20:33:42
14845文字
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水の怪

現パロというか この世ならざる者たちと縁の深い立香が出会った犬連れの少年は



 同じ場所に居続けるのも危ないと、歩きながら話す。とりあえず危なくなさそうなら神社を覗いてきて、危険なら引き返そうということになった。
 コーギー二色の背中が小刻みに揺れ、大きな独特のカーブを持つ耳がそれに合わせてぴよぴよぴよぴよ震える。時折、振り向いてこちらを見上げる。犬の散歩につきあっているだけのようなのどかさだ。
「なにか起きてるわけじゃないんだ、まだ。でも、このままだと絶対に、なにか起きる」
「さっきの。私が第一の犠牲者になってたかもしれないよね」
 少年はコクリと頷く。
「俺はこういうのの対処が上手いわけじゃない。正直に言う、苦手なんだ。俺がかき回すことで事態が悪化するんじゃないかって、今も思ってる。こういうのに強い身内がいて……」自分の言葉に目つきをじっとりとさせた。「いまそいつに任せればいいって思っただろ?」
「思ってないよ!」
 慌てて手を振る。嘘ではない、だってどんな人か知らないし。
……きっと、大事になったら来てしま……来てくれるんだよ。でもその前に、俺でもできることをやっておこうと思って。手がかりはないかと犬を連れ出したら、言うことを聞かず君に突撃を……
「犬の勘で、私に頼むといいと思ったのかも」
 二匹とも振り向いた。口を開け、そうですと言っているようだ。
「調子がいいんだ。こいつら」
 拗ねた口調で唇を尖らせる。
「あはは。私が危なかったから、助けてくれたんだよね」
 また、犬はそうですというような顔をした。少年は細い肩をすくめて「ほらな」と言った。
 少年は更に何か言いかけたが、口を閉ざした。犬も含めた全員に緊張が走った。道路下を何かがすれ違った気配がした。
……今も。なんか通ったね。この街、水源があるから水路も大きめみたいだし。水って厄介めのが多い気がする」
「わかる。水が繋がって、移動されるのが厄介だけど、もう始まってるみたいだな。呪いだとすれば、原因があるはずなんだ。原因を取り除けば、俺でも何とかできる、んじゃないかと思う」
「情報集めを、手伝えばいいのかな」
「頼む。俺はあんまり、その、知らないやつと喋るのも、得意じゃなくて。君は、そうでもないけど」
 口ごもる少年に、立香は笑いかけた。
「よかった。戦うとかそういうのだったら全然できないけど。聞き込みだったら任せて!」
「普通、戦わないだろ」
 少年も、ようやく笑顔を見せた。