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サブさぶれ
2026-05-09 19:03:58
18530文字
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ワンドロワンライ
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ワンドロワンライ②
ワンドロワンライまとめ②
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六月の花束をきみに
お題「ダズンローズ」 ※ラストだけ成長ifです
街に行ったのは本当にただの偶然。何かと忙しい四天王に代わり、部活の買い出し係に抜擢されたため。元部長だから勝手も分かるだろって、絶対忙しくなんてなさそうなカキツバタに言われてちょっと腹立ったけど、部のみんなの役に立てるんならって思って引き受けた。
イッシュの六月はキタカミと違ってカラリと晴れて清々しい。そんな天候だからか、歩く先々で結婚式が開かれていた。キラキラ輝く笑顔たち、鮮やかな花びらをめいっぱい振りまく草ポケモン、花嫁さんと花婿さんの傍らで何かのお手伝いをしているらしき二匹のイエッサン。ベロバーが見たら一目散で逃げていきそうなくらい幸せな光景が広がっている。
——
いいな。いつか俺も。
将来なんてどうなるかちっとも分からないけど、あの白くてきれいなドレスを着た大好きな人を誰より近くで見てみたい。めんこい三つ編みに花を挿してあげて、手を取って、一緒に笑って、それから
……
。
「って、何考えてんだ俺」
頭を振って身勝手な妄想を強制終了させる。アオイが将来どうしたいかとかまだ少しも聞いてない上に、自分のことすらちっとも上手くできてない奴が都合のいいことばっか考えてどうするんだ。
ひとまず任された仕事をきちんとこなそう。小さなことからコツコツ頑張って、アオイにもっとかっこいいとこ見せよう。日常に戻りかけた俺を引き止めたのは、結婚式の進行のアナウンスだった。
『続きまして新郎より新婦へ、ダズンローズのプレゼントです』
——
だずんろーず? 何だべそれ。
知らない単語を拾おうと、耳が勝手に教会の方へと吸い寄せられる。会場の中心でははにかんだ花婿さんが真っ赤な花束を花嫁さんに差し出していた。
ただの花束贈呈? 首をひねっていると司会の人が高らかに説明をし始めた。
『ダズンローズとは、新郎から新婦へ贈る想いの結晶です。感謝、誠実、幸福
……
』
教会の柵に身体をくっつけ、朗々と語られるダズンローズの逸話を脳に染み込ませる。ロマンチックでうっとりしちゃうほど素敵な意味を持つ花たち。もしこれをアオイに渡せたら。気持ちのすべてをアオイに受け取ってもらえるなら。
「そうだ!」
*
学園に戻った俺は他の荷物を背負ったまま一目散にアオイの元へと向かった。活発で普段からいろんな場所に出入りしてるから最悪のケースも覚悟してたけど、アオイは自分の部屋にいた。
「あ、スグリ。よかった、そろそろ買い出しから戻ってくるかなって思って待ってたんだぁ」
あたり一面をパッと照らす笑顔が俺だけを見つめてる。ミルクチョコの瞳には「大好き」が浮かんでいた。きっと自分と同じ温度の感情を俺も持ってるとアオイは思ってるだろう。だけど本当は、俺はもっと
——
。途端にむず痒くなってきた俺は勢いをつけて両腕をアオイに突き出した。
「こ、これっ! よかったら」
「わぁ、バラだー。いい香りー」
鼻先に突きつけられた十二本のバラをアオイは難なく受け取った。
「買い出しさ行ったときにたまたま花屋さんの前通って、いい匂いだったからアオイにもお裾分けーって思って」
「そうなんだ。えへへ、ありがとう」
「
……
うん」
本当の意味を教えずに渡すなんて、我ながらずるいし臆病だと分かってる。でもこれは俺の独りよがりな決意表明だから。必ずアオイに見合う人になるって誓いの表れだから、今はどうかただのお土産だと勘違いしててほしい。
教会で見た新婚さんの真似して全部赤いバラにしたかったけど、さすがに恥ずかしくて無理だった。赤、白、ピンク、オレンジ。炎の色一色じゃない分たくさん可愛くなるようにってお願いして包んでもらった花束をアオイは静かに撫でた。
「お花、十二本なんだね」
「え? あ、うん」
何かまずかっただろうか。まさかダズンローズってのが素敵な意味を持ってるのはイッシュだけでパルデアでは悪いものだったのかな。地域で風習が違うから一応気をつけてねって、前にアカデミーから来た先生言ってた気がするけど、もしかしてやっちまった?
心臓がドクドク嫌な感じに騒ぎだす。そういえば花婿が花嫁さんに渡す十二本の花の意味にばかり気を取られてて続きの話はちゃんと聞いてなかった。
指先の感覚がツンとしてきたが、そんなのどうだっていい。失敗したなら取り返さなきゃ。ぐらぐら揺れだした視界を瞬きで払い「ごめん」と言おうとした瞬間。
「え?」
「はい、これ。私の気持ち!」
差し出されたのは一本のバラ。花束の中で一番ツヤツヤで鮮やかな赤色の
——
自分の中でこっそり『これが愛情』って決めてた花だった。反射的に受け取ってしまう。惚けるばかりの俺にアオイがふわりと微笑んだ。
「ありがとう。ずっと大切にするね!」
そう言ってアオイは部屋の扉を閉めてしまった。残された俺と愛情の花は展開の速さについていけず、しばらくその場に立ち尽くしていた。
「なんで一本だけ返されたんだろ」
アオイの意図は分からない。でも機嫌よさげに笑ってたから怒ってるとか悲しんでるとかはなさそうだ。じゃあ、なんで? 何でよりにもよって『愛情』を突き返してきたの?
「もっとちゃんと調べればよかったかなぁ」
何がなんだか分からない自分が悔しい。見切り発車しちまった自分が恥ずかしい。肩を落としつつ、すごすご部室へと向かった。
その後部の方でもやることたくさんでバタバタして、結局ダズンローズについて調べるのを忘れてしまった。
この苦い記憶を思い出したのは数年後の六月。「二回目になっちゃうけど私もスグリに渡したいから」と十二本のバラを差し出された直後だった。自信満々な顔したアオイが「ね、返事は?」と小首を傾げる。
——
なるほど、そうか。
だからあの花が返されたんだ。時間差のメロメロ攻撃を食らった俺は迷わず真っ赤な花を抜き取った。
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