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サブさぶれ
2026-05-09 19:03:58
18530文字
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ワンドロワンライ
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ワンドロワンライ②
ワンドロワンライまとめ②
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ひとくちちょうだい
お題「一口ちょうだい」1h+5m
黄色いカバンはお菓子でいっぱい。購買で大人気のチョコレート、たくさんの種類のフルーツキャンディ、グミ入りのぷにぷにマシュマロ、私のあげた下手っぴな手作りクッキー。
お菓子以外にポケモンの道具やボールも入ってるけど、数はちょっと控えめ。最近はそこに、端がボロボロになりかけの『がんばりノート』が加わった。他の人のバトルを見て気付いたことをメモしたり、ひらめいた新しい戦法を書き出したり更に広げたりするのに使っているらしい。
——
真面目で努力家でがんばり屋さんなスグリらしい、ステキなノートだ。
この日もちょうど二人でバトルを見ていた。エントランスコートの一番上段、隅の席。こっそり手を繋ぐのに最適な場所。試合が始まる前まではお互いの指をこちょこちょしあってはしゃいでたのに、バトルが始まった途端、目の色が変わった。
「あのポケモンっこ、相当鍛えれてんな」
「だね。進化前なのにスピードもパワーも申し分ない」
「耐久力もある。進化の輝石持たせてんのかな」
より高いステータスを求めて最後まで進化させたポケモンを選びがちだけど、鍛え方や戦略を工夫すれば進化前の子だって十分強い。それを強烈に教えられた、とても見応えのある試合だった。スグリもすっかり感化されたようで『がんばりノート』に思いついたことを一生懸命書き出しはじめた。こうなったときは邪魔しない。真剣なまつ毛を見つめながら、スグリの手が落ち着くのを黙って待つ。
少しして考えが煮詰まってくるとスグリはお菓子に手を伸ばす。口の中でチョコや飴をカラコロ転がして「アオイも食べていいよ」と勧めてくれる
——
私の方を見ないまま。
君が頑張ってる姿を誰より近い場所で見られるの、とっても好きだしとっても嬉しいって思ってる。けどね。
丸いほっぺばかり見てるのは、やっぱりちょっと寂しいよ。
そんな子供じみた気持ちを込めて、そろりそろりと腕を伸ばす。
「ね、スグリ」
「ん?」
「それ、ひと口ちょーだい」
「いいよー。好きなのあげる。どれがいい?」
ノートに夢中な人は私の動きに気付かない。
そのまま気付くな、でも少しは気付いて、やっぱりまだ気付かないで。
感情がくるくる巡る。心臓がドキドキ騒ぐ。息をひそめる。やがて、もちもちほっぺの数センチ前に到達した。私は目を閉じると、
「これ」
スグリが持ちうるものの中で最も甘くて美味しい、大好きなものを優しく食んだ。
「わぎゃっ!」
突然ほっぺを甘噛みされたスグリは案の定飛び上がって驚いた。
「好きなのあげるって言われたから、一番好きなの食べちゃった」
えへへってごまかし笑いをしてから机の上に散らばっていたレモンキャンディを頬張った。酸っぱいはずのレモン味はなぜかひどく甘ったるかった。
スグリは大声を上げた状態のまま数分固まっていたけど、やがてその場に座り直した。愛おしさとおどけた怒りがないまぜになった複雑な笑みをたずさえて。
「アオイだけ食べんのずるっこじゃ。俺にも、ひと口ちょうだい」
もどかしげにとろけた蜂蜜色が私を捕える。わざとらしい低音に、心が甘く焦がされた。
「
……
どうぞ」
腕を真横に垂らし、あごを突き出しまぶたを伏せる。レモンキャンディが入ったままの頬に、あたたかな指が添えられた。
——
どうぞ、お好きなものを食べてください。ひと口じゃなく、全部でも。
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