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サブさぶれ
2026-05-09 09:43:57
12889文字
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成長if
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成長if SS置き場①
成長ifのSS・短編置き場①です。
ページリンクから作品に飛べます。
話の繋がりは無し。それぞれ単独のお話です。
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口説き文句
「わたしね、好きな人がいるの」
「うん」
とりあえず頷いておく。ついでにグラグラぽちゃぽちゃ揺れだしたグラスを回収する。前みたくグラスひっくり返したら大変だから。
「すっごく好きな人」
「うん」
薄暗いバーの中、それでも目の前の人の顔色が真っ赤なのが手に取るように分かる。軽く舟を漕ぎながらアオイはなおも話し続けた。
「昔っからずーっとかっこよくってね。すごく真面目で努力家で、でも頑張りすぎると自分のこと疎かになるのはちょっと心配。あとねー、バトルしてるときとか真剣なときの顔もかっこいいの。普段ふわふわーって顔してる分、キリッとしたときのギャップがすてきでキューッてなっちゃう。なのに笑ったらほわほわーって感じになって、本当にかわいいの」
「へえー」
片手を上げて店員さんを呼ぶ。チェイサー二つとさっぱり系のカクテルをあと一杯だけ頼んで、ついでにお勘定もお願いした。同年代と思しきお兄さんはアオイと俺を交互に見てから何とも言えない顔で微笑んだ。
「かっこよくてかわいくて強くて優しくて
……
。全部ぜーんぶ好きなんだぁ
……
」
「そっかー」
重ねられた手はそのままに席を立ち、アオイの隣へ移動する。アオイは抵抗することなくほんの少し
――
一人分にはちょっと狭いスペースをあけてくれた。火照った顔が腕にぴっとり寄せられる。
「ねえ、スグリ」
「なに?」
腰をかがめ、めんこい人を覗きこむ。たっぷりとろけた瞳と艶やかに潤む唇はたった一人、俺だけをとらえていた。
「いつ振り向いてくれるの?」
うっとりしたため息が唇にかかる。鼻先が触れあって、手の甲に細い指が優しく食い込んで、まつ毛が伏せられる気配を感じて
――
。蠱惑的な雰囲気に飲まれかけたけど、どうにか堪えてアオイの肩を押し返した。
「あのさ、」
「ん?」
琥珀色の海に浮かぶデレデレの締まりのない顔した自分を無視して息を吸う。
「いつ振り向いてくれるかって、とっくの昔に振り向いてんべ! 俺から告白して付き合いだして、もう五年だよ!? 好きっていっぱい言ってくれんのは嬉しいしわや幸せだけど『振り向いて』は何かちょっと違えべ!」
声は控えめ、だけど気持ちは十分込めて訴えかけたのに、アオイは口をめんこく尖らせるばかりだった。
「だって、私が毎日すき! って思った分スグリにももっと好きになってほしいんだもん。それに、」
言葉の途中でアオイは空いている方の手を俺の方へと伸ばしてきた。汗ばんだうなじに指が添えられる。アオイの指は存外冷えていて、俺は思わず喉を鳴らしてしまった。離したばかりの距離がまた一気に縮められる。
「酔うとこうなるのわかってて、デート先にこういうとこ選んでるの、だれ?」
甘く掠れた声が耳たぶを濡らす。心臓が二重の意味でドキリと跳ねあがった。
「
…………
俺、です、が」
だって疲れたときにアオイの「大好き」攻撃喰らうのが一番癒されるんだもん、仕方がねえべ。俺のしょーもないワガママを許すかの如く、アオイがしとやかに微笑む。
「ねーえ、スグリぃ
……
。わたし、もっともっとスグリに好きって伝えたいなぁ」
何もかもお見通しっぽい恋人は、俺の髪を小さく乱して誘いながら店員さんがこっそり置いていった細身のグラスを手繰り寄せ、半透明の液体を一気に煽った。
――
本当に酔ってるのか、酔ったフリなのかいまいち分からない。だけど、そんなのどうだっていい。
「うん。アオイの好き、もっと教えて」
三つ編みに口付けつつお誘いを受け入れる。肩に額が乗せられ、ダメ押しのようにもう一度「すき」の言葉が落とされる。のんびりしてたら今度はキスの猛攻が始まりそうだ。さて、急がなきゃ。俺は会計をスマホロトムにお願いすると、熱暴走を起こしかけてる身体を落ち着かせるべく、ほったらかしだった氷水を二杯飲み干した。
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