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サブさぶれ
2026-05-09 09:43:57
12889文字
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成長if
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成長if SS置き場①
成長ifのSS・短編置き場①です。
ページリンクから作品に飛べます。
話の繋がりは無し。それぞれ単独のお話です。
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モーニングコーヒー
普段行かない店で買った特別な豆にお湯を注ぐ。浅煎りの、やや酸味を感じる苦い香りが狭いキッチンを満たす。
朝が来た。新しい朝が来た。
どんな類に分類されるか分からないため息を静かに吐き出す。一人で抱え込むにはあまりにも複雑すぎる心境だった。
レモンイエローのカップに半分ほどコーヒーを淹れ、汚れがないか確認したら今度は自分のカップへ。その前に牛乳を取りに行かねば。
冷蔵庫へ足を向けたタイミングだった。
「ねえ、」
背後から届いた少し不服そうな声。伝えたい意図が分からず、幸福感に浮かされた脳みそを必死に回転させる。
「
……
身体、平気?」
「平気だけどぉ」
腰に細腕が絡みつく。ポスン、と肩甲骨の間に柔らかいのと硬いのとが収められる。服越しの触れ合いなんて学生時代から散々してたくせに、昨晩の記憶のせいで異常なまでに反応してしまう。
彼女は背中越しに、この早鐘を聞いているだろう。ああ、恥ずかしい。恥ずかしい。
俺はどうにか離れる口実を考えた。
「冷蔵庫行けねから」
「どうだっていいじゃん」
よくはない。約束は守らなきゃならないのだから。そう言って誘ったのだから、完遂する義務があるんだ。
へその上あたりで大人しくしていた腕は段々と大胆になってきて、今は平たい胸をすり、と撫でている。
朝に似つかわしくない、妖しげな手つきで鎖骨を摩る。元々ゼロ距離だった距離はどんどん圧迫されていく。
柔らかい肌。ついに知ってしまった彼女の透明感。神秘。永遠を願いたくなるほどの幸せ。愛おしさ。
熱が、再び膨張しかける。
茶色い雫がぽたり、ぽたり、キッチンを一滴ずつ汚していく。苦い香りと「綺麗にしなきゃ」という意識で理性を繋ぎ止める。
「アオイ」
スウェットの中にまで侵入し始めたシビシラスの手に自分の手を重ねる。止めたいだけなのに、それすら甘い記憶を呼び起こした。
「なに?」
彼女はなおもご機嫌斜めだ。女心はポリゴンZより難解なんてよく言うけれど、彼女(ついでにうちの子も)存外分かりやすい。常に前向きで明るいし、機嫌を損ねることなんて、それこそ
——
。
ああ、そうか。分かった。不機嫌の理由。
振り返って彼女を見る。真っ赤な頬は片方だけぷく、と膨れていた。空気を潰してやるように、その部分に口付けを落とす。
「おはよう」
「
……
おはよ」
「約束、守れなくてごめん。だけど、」
至近距離で見つめる。コーヒー色に映った俺は、何とも情けない顔をしていた。
不意に目の前が暗くなる。一瞬だけ、口を塞がれる。熱く潤んだ瞳の中の俺と目が合った。
「もう一回、いれなおして
……
」
砂糖よりも甘くうっとりした声に、叶うはずもなく。
俺はゆっくり頷くと、可愛い肩を抱いて出てきたばかりの寝室へ戻った。
特別なコーヒーは、冷めても美味しかった。
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