サブさぶれ
2026-05-09 09:43:57
12889文字
Public 成長if
 

成長if SS置き場①

成長ifのSS・短編置き場①です。
ページリンクから作品に飛べます。
話の繋がりは無し。それぞれ単独のお話です。


幸福のすべて


 朝。目が覚めて一番最初に見るのが君の睫毛だったことに、史上最上級の幸福を感じる。今だったら宝くじも当たっちゃいそう。毎日毎朝毎分毎秒、そう確信し続けてるくらい、幸せで堪らない。
 つまらない、くだらない、愛すべき日常を二人で揺蕩っている。肩を寄せて小さなスマホで映画の配信アプリを見て、「思ってたのと違ったね」って笑顔を突き合わせて、ついでにキスして、もう一回照れ笑いして。素足でくすぐりあう日もあれば、喧嘩してベッドの端っこで寝る日もあった。暑すぎって文句を垂れていても、「大っ嫌い」って嘘を吐いても、別々で寝ることなんて考えなかった。
 私、実はこんなことも知ってるの。楽しい夢を見てる時の唇はヘニョヘニョで、嫌な夢を見てる時の眉毛はしおしおで。どんな時でも素直な君は、いつも分かりやすく夢の内容を教えてくれる。ギュッて抱き締めると、どんなに寝息を立てていても抱き返してくれる。寝ぼすけさんの君は知らないよね。私のささやかで最大の幸せなんて。
 
 スグリ。
 初めての感情を私にくれた人。眼差しも言葉も頑張り屋さんなところも全部、全部が素敵な人。寝息のリズムだけで心を薔薇色に染め上げてしまう、特別な能力を持ってる人。私の薬指を埋めた人。私の幸福のすべて。
 君が起きたら新しい『今日』が始まる。肩書きが変わる。大した違いはないけれど、どうかもう少しだけ、恋人のままの私たちでいさせてください。
 願いを込めて抱き締める。ぽってりした唇から「ふふ、」と空気を揺らす音が漏れて、柔らかく抱き返された。

 結婚式の翌日はそんな、いつも通りの朝でした。