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ウリュウ
2026-05-03 15:44:51
21458文字
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船遊びの夜
【RKRN】五年生、ほんのちょっとだけ水軍
五年生がおのおの実習をがんばる話。全部つながってます。
時代考証は素人です。
ある:あらゆる捏造 ない:CP
(目次)
序 忍術学園 1⃣
一、鉢屋三郎、ウシロタケ城にて 2⃣
二、久々知兵助、街にて 3⃣
三、不破雷蔵、ウシロタケ城下にて 4⃣
四、竹谷八左ヱ門、忍術学園にて 5⃣
五、尾浜勘右衛門、牢屋にて 6⃣
六、五年生の船遊び ~終章 7⃣
1
2
3
4
5
6
7
●四、竹谷八左ヱ門、忍術学園にて
竹谷八左ヱ門は、忍術学園の生物委員会が管理する生物小屋で、梟や犬に餌をやっていた。
「よしよし、いっぱい食べろよ」
言いながら犬の頭を撫でてやる。気持ちよさそうなその顔を見て彼は顔をほころばせた。生物委員会委員長代理は、まことに彼にとって性に合う役割である。
それから彼は、ふと顔をあげ立ち上がった。向こうから歌声が近づいてくる。手裏剣がどうのというその歌は、一声聴けば誰が歌っているのかわかる、いつもの選曲だ。小屋から顔を出すと、すぐに姿が見えた。
聴いているこっちまで元気になりそうな声で歌いながら歩いてくるのは、やはり一年は組の乱太郎、きり丸、しんべヱのお気楽な三人組だった。
「やあ、おまえたち」
「あ、五年ろ組の竹谷八左ヱ門先輩」
「生物委員会のお仕事ですか?」
八左ヱ門の手元をのぞき込んだきり丸が尋ねる。
「いや、これは委員会活動というより
……
こいつらちょっと仕事してきたからね」
きょとんとしたお気楽三人組が質問を重ねる前に、八左ヱ門の方から質問する。
「おまえたち、外に出るようなかっこうしてるけど、どこかへ遊びに行くのかい」
「はい!」
「これから兵庫第三共栄丸さんのいらっしゃる兵庫水軍の海に」
「磯遊びに行ってきまーす!」
口々に答える三人組に、八左ヱ門は素直に「いいなあ」と言った。それから、「あ」とつぶやいて、懐に手を突っ込む。
「ちょうどいいや。この手紙を、第三共栄丸さんに渡してくれないか?」
そう言って、折りたたんだ短い手紙を手渡した。
……
学園長先生からのお使い慣れしているこの三人なら大丈夫だろう。
「わかりました!」
「竹屋先輩が第三共栄丸さんにお手紙って、珍しいですね」
「何が書いてあるんスか?」
「ええっと
……
海の生き物の捕まえ方を教えてもらおうと思って」
危うく素直に本当の内容を言いそうになったが、そこは踏みとどまった。言ってもそれだけなら大丈夫だとは思うが、一応任務である。
「なるほど! 海の生物は学園じゃ飼えないですものね」
乱太郎がそう答えた横で、しんべヱがよだれを垂らしている。
「おいしい生き物もいーっぱいいるから、捕まえられたら食べ放題
……
うふふ
……
」
「しんべヱ、よだれで水たまり作るのやめてね」
「じゃあ先輩、行ってきまーす!」
わいわいしゃべりながら出発する三人に、八左ヱ門は笑顔で手を振る。
「第三共栄丸さんの目の届くところにいろよ。あと夜になると山賊が出るらしいから、早めに帰ってくるんだぞ!」
「はーい!」
お気楽三人組は、いつも通り、明るくたのしく元気に出かけていった。
「
……
さて」
八左ヱ門の顔が、すっと引き締まった。
自分の実習に戻る時だ。
部屋に戻った八左ヱ門はいくつかの手紙を時系列順に並べた。
久々知兵助からの手紙。
鉢屋三郎からの手紙。
不破雷蔵からの手紙。
これが、竹谷八左ヱ門に与えられた実習の中身だった。
すなわち、諜報任務に出た四人の仲間に、手ずからしつけた動物を随行させたり、先行して行き先に動物を仕込んでおいたりして、彼らからの手紙を届けてもらう。そして送られてきた情報をまとめて分析、学園長に報告するのである。
兵助と勘右衛門には犬、三郎には梟、雷蔵には鳩を、連絡役として選んだ。
昨夜、兵助の手紙を犬が運んできた時点で、勘右衛門が姿を消してしまったという内容だけは、念のため五年生担当の木下先生に報告してある。が、協議の上、勘右衛門本人が残した大丈夫という合図を信じてそのまま実習を続行している。
三郎と雷蔵、兵助と勘右衛門の件はそれぞれ別件として情報をまとめようとしていたが、朝早くから手紙を読んだ八左ヱ門は認識を改めかけていた。
もう一度、いちから情報をまとめ直す。
一つ、行方不明者がこの数日で頻出している。
一つ、夕方以降に西の山や裏々山に山賊が出る。
一つ、山賊が人さらいかもしれないとの情報がある。
一つ、街には行商人が多い。
一つ、ウシロタケの新しい領地は荒れて人が住んでいない。
一つ、そこには住人がいないのに侍の詰め所だけができている。
一つ、ウシロタケ城下にも行商人が多い。
一つ、ウシロタケの行商人は本当に行商人であるのかあやしい。
一つ、ウシロタケで行商人に連れてこられた人が逃げるのが目撃されている。
まとめて読み直し、うーんと頭をひねった。
これらを、もし、ひとつながりで考えるとしたら。
六年生がいないとはいえ、学園長先生が、あえて、ウシロタケに諜報に行った二人も含めて連絡がとりあえる五年生に、行方不明の件も任せたのだとしたら。
片や住人が足りず、新たな土地の田畑が荒れ果てている。
片や人が消えており、どうもそれがさらわれているような気配がある。
もし、さらった人間を、人が足りない土地に無理矢理連れて行き、そこの田畑で働かせようとしているとしたら。
……
つまりウシロタケが、大規模な人買いをしようとしているのなら。
八左ヱ門はこんどは鉢屋からの手紙に添付されていた別紙を見る。
ウシロタケの役人が「船主」なる人物とやりとりした書簡の写しであった。この書簡は全体的にぼんやりと書かれているが、最後に「遠方より来た人は新たな領地に移動。畑を耕す」と雑に書いてある。
これと人々の噂をふまえて不破が分析した文書には、行商人が人買いで、この人買いが組織で動いており、背後に「船主」とやらがいるのではないか。そしてウシロタケはそいつから買った人を新しい土地に配置するつもりではないか、とある。迷い癖があるはずの雷蔵は、実践になると急に迷わず次々正しい判断を下すときがある。今回はそれが出ているようで、手紙の筆致も爽やかだった。
さて。「船主」が、人をさらってまとめて売っていて、行商人はその手下。
もしそうであれば、山賊は行商人に雇われている二次下請けのようなものではないか。
では「船主」は何者かという話である。今度は八左ヱ門は兵助の手紙を確認する。山賊にさらわれかけた人の話として、「海の方に連れて行かれそうになった」とある。
船主、というのが、単に人を示す符号ではなく、本当に船の持ち主であるとしたら。思えば、望まない沢山の人を運ぶ手段など、船くらいしかない。
その後、繰り返し手紙を読んで確認したが、考え直してもやはり、朝抱いた印象と同じ答えに、八左ヱ門は行き着いていった。
敵は、海にいるのではないか。
気がつくと夕刻になっていた。暮れかけた夕日が、格子窓から斜めに差し込んでいる。八左ヱ門は手紙類をまとめると、一度つづらにしまって、障子を開けた。気持ちのいい風が通り抜けていく。
「暴れ足りん!」
「俺もだ! おい、今から勝負するか」
「いいだろう」
「よさんか二人とも」
風に乗って、ポツポツ実習から帰ってきたらしい六年生の声も聞こえてくる。めんどくささに戸を閉めそうになった八左ヱ門は、
「あ、竹屋先輩!」
という声で動きを止めた。廊下の向こうから乱太郎が声をかけてきたのだ。
「おー、おまえたち、ちゃんと暗くなる前に帰ってきたな。えらいえらい」
そう言ってやると、後ろにいたきり丸としんべヱを含め、三人はえっへんと胸を張る。
それから、一枚の手紙を取り出した。
「これ、兵庫第三共栄丸さんからのお返事です」
「竹谷先輩、海の幸の捕り方がわかったら海にご一緒しましょうね」
「しんべヱ、五年長屋でよだれたらすのやめろって!」
前のめりなしんべヱの襟首を、きり丸が引っ張っていく。乱太郎が苦笑いして、それじゃこれで、と言って二人を追いかけていった。
「ありがとうなー!」
手を振って見送った八左ヱ門は、三人が去るとすぐに手紙を開いた。彼らに託した海賊への手紙に書いたのは、簡潔な質問だった。
――
海に何か、かわったことはありますか。
第三共栄丸からの返事も、簡潔なものだった。
――
ある。少し距離があるが、しばらく行った先の入り江に、数日前から古ぼけた船が二艘、ひっそりと停まっている。幽霊船のような見た目だから捨て置いたが、妙な人の出入りが見えたので、今夜あたり調査する予定。もし協力の必要があれば連絡されたし。
一度戸を閉めて部屋に戻った八左ヱ門は、筆を執った。兵庫水軍に協力を仰ぐための手紙を書く。
そろそろ、五年生の皆も一度学園に戻ってくるはずだ。
今夜はみんなで、山狩りからの磯遊び
――
いや、船遊びに行くことにしよう、と彼は計画を練る。
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