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nekosuimidori
2026-04-20 22:02:06
13128文字
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なみだなみだ不思議なるかな
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「コルムさんの様子がおかしいの」
太陽が山間に沈み始めた頃、任務帰りのウツシはさらに次の任務に出る前にお団子を食べようと茶屋を訪れると、沈んだ顔をしたヨモギにそう話しかけられた。
お茶とうさだんごが卓上に置かれるが、幸い時間には少しだけ余裕がある。食べるより先に彼女の話を聞いた方が良さそうだ。というより、愛弟子であり恋人でもあるコルムの様子がおかしいと聞いて、平常心で任務に出ることなどできるものか。
(様子がおかしい、か
……
)
思い当たる節が無く、ウツシはううんと首を捻る。最近はナルハタタヒメを追う為に多忙を極め、彼と顔を合わせる機会などほぼほぼ無くなっていたが、時折遠目から見掛ける彼は普段と特に何も変わらないように思えた。
「どういう風におかしいんだい?」
「なんかね、見てくれないの」
「
……
どういうこと?」
見てくれない、とは。要領を得ない返答に首を傾げる。視線を合わせないということだろうか。しかし礼儀正しい彼に限ってそんな失礼なことはしそうにないのだが。
「なんて言ったらいいんだろう
……
。見てるんだけど、見てないんだよ。言葉にするのが難しいんだけど、本当にそうなの」
「見てるけど、見ていない?」
ヨモギの言葉を繰り返すと、うんうんと力強く頷かれる。
「そう、目は見てくれているの。でもそうじゃなくて
……
心ここに在らず、なのかな?迷子っていうか、帰ってきてないっていうか
……
どこか遠いところを見てるみたい。それになんだか、ずっと根詰めてるみたいで
……
」
彼女が言うには、ナルハタタヒメ討伐任務より戻った後、細かく言えば宴の後からずっとそうなのだと言う。
(
……
いや、後というより中断したというのが正しいか)
自身が持ち帰った情報とヒノエ・ミノト姉妹の共鳴によって急遽宴は打ち切られた。
『
……
俺は大丈夫です。次こそ倒してみせます』
気を落としてはいまいかと声を掛けたが、彼は気丈に笑い、頼もしい言葉を残してそのまま双子の姉妹の元へ歩いていった。自分はそのまま任務に戻ったが、その後ろくに話は出来ていない。
(
……
あの子の大丈夫を、そのままの意味で取るべきじゃなかったな)
ウツシは苦虫を噛み潰したような気持ちになった。急ぎ調査の任に戻らなければならないからといって、そして彼が「平気だ」と言ったからといっても、彼へのフォローを怠るべきではなかったのだ。
里とギルドへ提出された報告書にもかなりの苦戦を強いられたとあった。里に戻ってきた彼の体は大きな怪我こそ応急薬やら秘薬やらでなんとか治ってはいたが、装備は壊れ細かい傷は治しきれておらず、疲労困憊もいいところだったとも聞いた。
そんな状態になってまで戦った相手が未だ尚生き延び、さらには里どころか世界を脅かしかねない脅威となって戻ってくるとくれば、平静でなどいられないだろうに。
「
……
アタシ、やだな。コルムさんのこと好きだけど、このままのコルムさんは見てるだけでとっても寂しくって悲しくなっちゃう」
ヨモギはおぼんをぎゅっと抱えて、苦しそうに顔を歪めた。
「ウツシ教官、どうすればいい?私、戦わずに里を守ることの意味はわかったけど、こういう時にどうすればいいのかはわからないの」
ぽたり、ぽたり。地面にいくつも雫が落ちるのを見て、ウツシは椅子から腰を上げると俯くヨモギの頭を撫でた。
「こんなに優しい良い子を泣かせるなんて、愛弟子もまだまだだなぁ。
……
大丈夫、俺に任せて」
「本当に、本当に大丈夫?コルムさん元に戻ってくれる?」
「もちろん!だって俺、教官だよ?」
不安げに聞いてくるヨモギに笑いかける。そう、自分はあの子の教官だ。迷子になった弟子を連れ戻すくらいわけないのだと言えば、ヨモギはごしごしと涙を拭って笑顔を浮かべる。
そうと決まれば一刻も早く任務を終わらせて愛弟子の元へ行かねばなるまい。移動の船の上で食べればいいだろうと、出して貰ったうさだんごを包んでもらうようにお願いする。
「はい、お待たせしました!」
「ありがとう、行ってくるよ!」
手渡された包みを持つと、船着き場へと足を踏み出す。順調にいけば戻ってくるのは月が空の頂に登る少し前で、その頃であればコルムもクエストから家に戻っているだろう。
(急いているのか、気落ちしているのか
……
どちらにせよ、話してみないことにはなぁ)
橋渡しの船頭に声を掛けながら、ウツシは内心独りごちた。
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