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nekosuimidori
2026-04-20 22:02:06
13128文字
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なみだなみだ不思議なるかな
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降ちの深い闇の中、月光を写した刃が舞う。響くは荒い呼吸と、太刀が空を斬りからくり蛙を切っ先が撫でる堅い金属音のみ。
オトモもなく、管理人も眠りについた夜の修練場で、コルムはひとりただただ鍛錬を続ける。
ナルハタタヒメ討伐任務より数週間経った今もなお、コルムは自身の身の内に有り余る仄暗く烟る感情を持て余していた。
握り締めていたはずの手から太刀が落ち、しんしんとした空気の中に重く鈍い音が響き渡る。力の入らなくなった手は細かく震え、豆が潰れたのだろう、掌を保護する筈の布には血が滲んでいた。
クエストから帰った昼から、ずっとひとりで修練場に籠っていたのだ。十数時間もぶっ続けで握り続けていたのだから体に限界が来てもおかしくは無い。それはきちんと理解しているのに、どうにも心が急いてしまう。
「
……
ックソ」
心は急くのに、体が追いついてくれない。こんな思いは何時ぶりだろうか。里守としてもハンター見習いとしても半人前以下だった幼い自分を思い出す。
周りはどんどん上達していく中で自分ひとり上手く武器が使えなかったあの焦りと、さらに強く、もっと強くと頂に手を伸ばしても手が届かない焦燥が重なってみえて仕方がない。
「
……
今日はやめるか」
やめるもなにも、柄が握れなくては修練のしようがないのだが、言葉にすることで身の内を焼く感情に一旦どうにか諦めをつける。
両手を使ってなんとか太刀を拾い上げる。途中何度も砥石を使ってはいたが、それでも間に合わないほどの欠けや傷が目立つ。そろそろ手入れに出さなければといけないとぼんやり思っていると、刃文が光を反射して淡く光る。ふと頭上を見上げれば、雲ひとつかかることのない空に月がぽっかりと浮かび、流れ落ちてくる水を優しく照らしていた。
(
……
そういや、最近行ってないな)
降り注ぐ月光に誘われるように、視線の先
――
修練場と森の境目の滝口へと翔蟲を飛ばした。
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