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あつき
2026-04-11 21:00:00
31863文字
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我は吸血鬼ハッピーエンド大好き
往生際の悪いロくんがループ&ループするお話。
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それから訥々とロナルドの顛末もドラルクへ語れば、互いの行動に腹落ちして、話が終わるとふたりで顔を見合わせた。
「同じタイミングで後悔して、ほぼ同時にループしてたってことだよな。馬鹿だな俺たち」
「まあ、好きな相手には往々にして臆病になるものだからな」
まるでそれは奇跡のステップのように、ふたりはどこまでも噛み合って、どこまでもズレていた。
「よし!ここは綺麗に纏めとこう!どの世界線の君でも私からは離れられないし、離れたくないと思ってるということで」
ニコニコと、とびきりの笑顔で肩に手を置いてきたドラルクに、ロナルドはいっそ感心する。
「お前のポジティブさ、ほんと羨ましいわ
……
おい待てよ、普通こういうのって、お前がループした時点で俺も飛ばされるもんじゃねえの?なんで別々に飛んでんだよ
……
」
「平行世界というやつだな。深く考えるな。心を病むぞ。見る人が居なければ物語なんてないものと同じだ」
「吸血鬼ハピエン大好きならへんな遺恨を残すんじゃねえよ
……
」
「いや、一介のポンチにそんな能力あると思うか?」
「どういうことだ?」
「あいつはせいぜいこれからの軌道を、何もしなくても起こり得る範囲で変えるしか出来ないと言っていた。それでも十分すごいが、さすがに過去までは変えられないだろう。全てのキーは、あのオルゴールだ。そしてさっき話した通り、私はオルゴールを知っていた。強大な力を持ったお方から賜ったと、そう言っていただろ」
ドラルクがとっくに行き着いていた答えにロナルドもようやく思い至ったのか、しばし絶句した。
「
…………
お前の身内、お前に甘すぎだろ
……
」
「私もそう思う。過保護なのは、お父様だけかと思ってたから
……
」
ドラルクの脳裏に、祖父のピースサインが目に浮かぶようだった。
「少し昔話を思い出した。幼い頃に語ってくれた事が確かなら、私も分かれた世界はどうなるか気になって尋ねた事がある。平行世界もゆっくりと重なって、やがて統合されると教えて貰った。御真祖様いわく、悲しむ人は少ないほうがいいと」
そっちのほうが、楽しいじゃないかと優しく語る祖父の眼差しを思い出す。
「えっ、今俺二重になってない!?大丈夫!?」
「あーー、うっすら金色に輝いているぞ」
「ウワーーーッッ!!」
「マジ泣きするな五歳児。いやマジの五歳児だったら許されるが成人男性しっかりしろ。嘘に決まっとろうが。こっちを見ろ、二重じゃないだろ?完璧な私は唯一無二だからな」
「ちょっと涙で滲んで分かんねーから形を一旦リセットしようぜ」
「ンガー!気軽にリセ殺するな脳筋ゴリラ!!」
ブツブツ文句を垂れるドラルクに、ロナルドはこちらもまだ文句があったことを思い出す。
「そういやお前さ、コラムの仕事受けまくってたろ。腹立つ位、見ない日無かったぞ」
「本まで出したな。あけすけに言えば、寂しかったんだよ。おかげでワーカホリックの君の気持ちが少し分かってしまったではないか」
「俺は、寂しいからとか、そんな気持ちで仕事してるわけじゃ」
「まあ今まではそうだっただろうな。でも今回は、君も同じ気持ちだったんじゃないか?」
「ん、まあ、な
……
しょうがねえな。認めてやるよ。お前との生活を終わりにしたくなかったし、同じ時間を少しだって逃したくなかった」
時を戻してしまったら、せっかく重ねた時間が無駄になって、ドラルクが失われてしまうようで苦しかった。でも、目の前の男はずっと同じ男だったのだ。
「欲の少ない君が私との時間は強欲に求めてくれるのかい?そいつは重畳だな。あいつの言葉を借りるのは癪だが、楽しいこと大好きな私も同じ気持ちだよ。君とのストーリー、ハッピーエンド以外認めるものか!!」
夜の住人のくせしてどこまでも晴れやかに、楽しそうにドラルクは語る。
その笑顔に、ロナルドはこれまで何度、引き上げられてきたことか。
からかう笑顔には腹が立つが、それすらも賑やかしさの渦に巻き込んで、ロナルドに余計な考えを許さない男である。だからロナルドは、ドラルクの愉快そうな顔はどれも、嫌いじゃなかった。
ロナルドもおかしさが込み上げて、笑いながら軽口で返す。
「強欲はどっちだよ」
「そうさ、私は全部手に入れたい。それは他ならない、ロナルド君だから。君が、好きだから」
ドラルクは真っすぐロナルドを見て、穏やかに微笑む。一点の曇りもない告白に、ロナルドは息が苦しくなる。この場は何も言わなくともドラルクは気にしないと分かってはいたが、誠実な言葉に、もう上辺だけの言葉で返したくなかった。
「正直俺は、お前が好きとかどうとか、分かんねえんだけど」
「この状況で言う!?ああ、そういや君、告白してきた時も曖昧な誤魔化し方してたよな」
「うぐ、バレてる。
……
こんな返事でいいのかよ」
「いいよ。違ったって、いずれ本物にしてやるから」
目を細め、いつだって迷いのない返答をする相棒に、ロナルドは息を呑んだ。
ドラルクから底なしに湧き上がるのは自信かと思っていたが、どうやら違う。これは覚悟だ。心からの愛をロナルドから貰えなくとも、それでも己の愛を貫き通し、いくらでも待つという信念だ。
ロナルドが言葉に詰まって静かになった予備室で、ドラルクはもう一つ残っていた課題について、咳払いをしてから躊躇いがちに言及した。
「まあだから、君の気持ちが定まっていないことは薄々分かっていたのに、それでも私に抱かれてくれるという選択肢を与えてくれた君に、甘えてしまったのだよ。だから本当は、三回目のループ時にもう一度戻りたかったんだけど。君とオルゴールを回したからか、時間軸がズレてしまったな」
「んん?三回目って、
……
えっ、なんで?」
「君が無茶するからさ。もっとよくよく君と話をするべきだったのに、ひとりで思い詰めさせてしまったと気付いてね。君を押し倒しはしたが、あの時は最後までするつもりはなかったんだよ」
ため息をつきながら気まずそうに告げられるが、ロナルドは全く腑に落ちなかった。
「はぁーー!?あんなやらしい目を向けておきながら?じゃあどうするつもりだったんだよ!!」
「だまらっしゃい!!君がけしかけた自覚はないのか!?腰を抱いてキスなんて可愛いモーションしておきながら、恋人に反応するなってのは無理があるだろ!!」
「えっ、いや、そうなの?ごめん」
「素で謝るな、逆に居た堪れんわ。
……
私の為に頑張ってくれた君なら、前準備も何もなしに、いきなりは事に及べないって分かったろう?挿入を伴わなくても君と触れ合って、お互い心が満足すればそれで良かったのだけど、それすら君は辛そうだったから」
「そ、それは受動のエッチが過ぎて気合いが足りなかったというか、ソファでエッチな雰囲気を出すのがまず間違ってるというか」
「本当に何言ってんの君?そう!マットレスも、いかにも間に合せですという薄いものでさ。君がその気だって知ってたら、ふたりでゆっくり出来るホテルを手配したのに!」
「俺は別に、お前となら、どこだって
……
」
ソファは嫌だけど
……
とモゴモゴ言い訳をロナルドが重ねても、ドラルクは真面目に話し続けた。
「私にとっても重要なのは、君とすることだよ。君がどっちだと聞いてくれた時、だから躊躇ったんだ。君だけに負担を掛けたくなかったし、君が手に入るなら、私はどちらでも良かったんだ」
「えっ、おま、それって、俺に抱かれても良かったって事!?」
「まあね。私の体質を考えると、それこそ“年単位”で待って欲しいところだけど」
吸血鬼は意地悪くニヤリと笑ってから、それはそれとして、と追い打ちをかけるように言葉を続けた。
「つつみ隠さず正直に言うと、
……
あの夜乱れる君に、興奮した」
「はっ
……
はあ!?」
このドS野郎!!!
ギラついた瞳で告げられれば先の言葉など説得力はない。心で悪態をつくが、それでもどちらでもいいと言ってくれた言葉が本音だろうが嘘だろうが、自分をまるごと受け入れてくれたようで背中に甘い痺れが走って、求められることにぐらりと胸が沸き立つ。
ロナルドに比べるような経験はないし、これからもあって欲しくは無いが、例え好きでもない相手と夜を共にしたとしても、あんな興奮を抱きはしないし気持ちよくもなれないと思える。体を開いたことにも、後悔などありはしない。
「でも今は状況が違う。焦らなくても、もう離れる心配は無いのだし、互いの体を知るのは何も、今日じゃなくてもいいんじゃないか?」
垣間見せた熱を隠し、途端にさっきまでの強気が呆れるほど及び腰の吸血鬼に、ロナルドは無性に腹が立った。不機嫌を隠しもせず首元に手を伸ばし、クラバットを引き寄せて、唇を無造作に押しつけた。驚きに目を見開いたドラルクからすぐに離れると、威勢よく啖呵を切ってやる。
「馬鹿野郎。妙な優しさを見せて、俺の準備を無駄にすんじゃねえ!御託はいいんだよ。好きかどうかより、ドラルク、お前だから許すんだ」
そうそれは、例え何度ループしたって変わらなかった。ドラルクとの関係が同居人だろうが恋人だろうが、悔しいがもう、決まりきったことだった。
「恋なんて、正解なんて、分かんねえよ。だからさ、
……
お前が教えろよ」
キスだって、触れ合いだって、嫌なわけじゃなかった。ドラルクが望むならこの体くらい、くれてやりたいと思う。いや、本当はロナルドも例えドラルクから求められていなくたって、いつしか触れたい欲求が、心や体にじわりと染みるように占領していった。その欲求に抗わなければいい。単純な話だったのだ。
「お前からはちゅー
……
返してくんねぇの?」
「
……
ッ!言ったな若造、キスだけじゃ、止められなくなるぞ」
「止めんなよ。さっきからそう言ってんだろ」
ようやく近づいてきた唇を受け入れる。
協力しないとこちらを押し倒せもしない相手に素直に従ってやるなんて、その理由なんて。
答えは分かりきってはいるけれど、まだしばらく素知らぬ振りで、思考を欲に溶かして二度目で初めての夜に浸った。
おわり
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