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葵月
2026-04-04 22:18:15
9347文字
Public
十五夜とラーメン
・平和軸
・王最
・二次創作
・ラーメンが食べたかった
・王馬くんのもういいよが見たかった
・なんでも許せる人向け
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もういいよ、というのは、そのままの意味だった。
そもそも本当に約束を実現させたいのであれば、最原ちゃんと事前に予定を擦り合わせたりなんてせず、最原ちゃんの空いた時を狙って掻っ攫いに行くくらいのことはする。
つまり今回の計画はアジトの引越し中に思いついた『最近最原ちゃんキャパオーバー気味だけど、実現したらいいもの見られるかも!』というノリと勢いの産物。
旧アジトに最原ちゃんを招待して、最原ちゃんで遊ぼうといったものだった。
仕事以外では人見知りの激しい最原ちゃんが、オレの大切な人に会うと予告された状態だと、どんな様子を見せるのか。
敢えてそのままにしているどこの家庭にもあるような家具家電、用途の分からない乱雑に置かれたガラクタを見て、最原ちゃんがどんな探偵の顔を見せるのか。
むっつりスケベな最原ちゃんは拒絶の言葉を吐きつつも敵の陣地という背徳感でいつもより早く堕ちるのか、むしろどう堕としてやろうか。
でも、そんな考えは『明日行けなくなった』と悔しそうに今にも泣き出しそうな顔をして、焦点のあっていない虚ろな目を向けられて、散った。
最原ちゃんはオレ相手だとぷりぷりとよく怒るが、元来人に強く言うことが得意な質ではない。
環境が変わりストレスや疲労が溜まっている時ですら、依頼人や恩師に対して、文句や嫌味のひとつも言わず、自分を犠牲にする。
そしてその犠牲の末に、自分の心がボロボロになっていることに気づかない。
馬鹿じゃないのって、止めようと思えば止められた。
でも、あの顔で『行けない』って言われたら。
あれはオレに構ってる余裕がない顔じゃなくて、自分を削ってる顔で。それなら、約束を無かったことにするしかないじゃん。
それからは最原ちゃんからの連絡を適当に返しながら、最原ちゃんの仕事と心が完全に落ち着くのを待っていてあげたつもりだったんだけど。
「最初から、こうしてればよかった」
旧アジトのベッドでヨダレを垂らして寝ている最原ちゃんへ唇を近づけて、瞼の上から眼球を食む。
まだ完全に落ち着いた訳じゃないのに。
オレのことを傷つけたって、更に背負い込むなんてさ。馬鹿な子ほど可愛いってやつだよね。
いつも以上にたくさん送られてきたメッセージも。
普段はラーメンとか食べない最原ちゃんが慣れない場所に戸惑いながら小さい口で一生懸命啜ってる姿も。
初めて見る野菜山盛りのラーメン丼に驚愕した顔も。
きっと、距離を置かないと見れなかった。
でも、散々オレにいじめられて意識を飛ばして、そのままこのだらしない緩みきった顔で寝始めた恋人を見ると、遠慮なんて慣れないことをしなければよかったと思う。
探偵としての矜恃か、恋人としての立場か。
珍しい姿か、幸せそうな顔か。
まぁ、二兎を追う者しか二兎を得ず。だよね!
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