真九龍
2026-03-06 19:54:09
42542文字
Public 小説
 

【鳴ライ】Sweet and Crisis 2

鳴海×ライドウで、”二人で女装”して潜入捜査するお話。まさかの続編です。
前作は此方→Sweet and Crisis
注1:両想いな鳴ライになっています。
注2:ライドウremaster版をプレイ及びクリア済み。ゲーム本編のネタバレを含みます。
注3:攻めの女装表現が含まれます(勿論ライドウも女装します)。
注4:当時の時代背景(明治期~大正期)における女性軽視表現が含まれます(※性的な表現は含みません)。
注5::流血、暴力、首絞表現を含みます。


─ 漆 ─

 美人記者三姉妹─うち一名気絶──、夜中の不思議な展示会への潜入捜査、及び、詐欺集団とダークサマナーの掃討に成功。
 新世界主人の協力も有り、鳴海が単独で一蹴した詐欺集団は風間率いる警察に引き渡された。「今回も鳴海ちゃんとこの手柄かよ……」と、風間のぼやき節が炸裂するのはお約束。まだまだ絶賛気絶中のタヱは、警察が念の為と病院に運ぶとのことだ。恐怖が頂点に達し気絶しただけなので、目が覚めれば朝には退院出来るだろう。

「あとは、此のダークサマナーを……──」
……ッ!?ライドウッ!」

 ダークサマナーをヤタガラスに引き渡せば、そう告げる寸前、ライドウの視界が突如霞み、隣の鳴海に凭れ掛かってしまう。鳴海はライドウの身体がずり落ちぬよう抱き締めると、彼の顔が蒼白に変貌している。

(……裂かれた肩が痛い……眩暈がする……少し寒いような……鳴海、さん……身体が、思うように動きません……)

 負傷に因って体調の優れぬライドウを、名も無き神社へ連れて行っていいものなのか──。際どい判断が鳴海に委ねられようとした時、

「葛葉さん、ダークサマナーの身柄は私がヤタガラスに引き渡してきましょう。ゴウトさんと共に」
「なぬぅッ!?」
「鳴海さんは一刻も早く葛葉さんの手当てを。其の傷、長い時間放置すると大変危険です。新世界の控室に処置用道具と休憩用ベッドが有るので、手当てをした後、其のままお休みになっても構いません」
……!探偵社に戻る時間を省く為か……じゃ、有難く使わせてもらうぜ」
「こらッ!勝手に話を進めるでないッ!」
「ではゴウトさん、新世界にお二人を届けた後、名も無き神社へ行きましょう。事件の詳細をヤタガラスに報告出来るのは、貴方しかいないので」
…………納得がいかん……ッ!」

 新世界主人はライドウの容体を案じ、彼の代理としてダークサマナーの身柄引き渡しを名乗り出た。ああだこうだと抗議するゴウトを他所に、話はとんとん拍子に進む。鳴海は新世界主人の厚意に感謝し、彼の運転する車で新世界へと向かう。



「──では、行ってまいります」
「お願いします」
……我、未ダニ、納得イカヌ……我ハ、ライドウノオ目付ケ役ダゾ……嘗テハ……──」

 新世界主人は路地裏近くで鳴海とライドウを降車させた後、車を発車した。落ち込み延々とぶつぶつ呟くゴウトと、お縄に掛かったダークサマナーを乗せて──。

「此方です、鳴海様」

 マスター代理案内の下、二人は控室に入室する。
 室内は大変簡素だが清潔感に溢れ、広めのベットと処置に必要な道具と薬剤が一通り揃えられていた。他、癒し用の観葉植物付き。
 鳴海はライドウをベッドに座らせ、装備一式を外そうと巻きスカートに手を伸ばすと、

「──潜入捜査が上手くいくように……と、鳴海さんが僕の為にオーダーした服なのに……御免なさい……
……謝る必要なんてねぇよ。ダークサマナーとの戦闘は不可避だったからな」

 ライドウの後ろめた呟きを耳にし、手を止め頭を掻いた鳴海だが、直ぐに手を動かし、巻きスカートを捲った。両大腿に固定されたレッグホルスターをカチャカチャと取り外し、床に置いた後、右肩の傷口を程度を見る。
 此の服に防護力など無い。其れは、ライドウが普段纏う学生服と外套も同じ。悪魔の攻撃は、ライドウの服を容易く破る。修繕可能範囲を簡単に超え、処分せざるを得ない。服に防護力が付加すれば、此の子は負傷せずに済むのだろうか──。

「でもさ、ライドウ。今回俺がオーダーした服は、割と動きやすかっただろ?」
……!──はい。カチカチに着込んでいるようにしか見えなかったのですが……思いのほか、軽やかに動けて驚きました」

 今回の潜入捜査にあたり、鳴海は戦闘を前提として仕立て屋にオーダーした。戦闘中、ライドウは激しく躍動する。彼の長所をもっと活かせる衣装を贈りたい。いや、長所だけでなく、ライドウを自分好みに彩りたい。
 ライドウは和と洋、何方もよく似合う。其の二つを融合させた和洋折衷な衣装はどうだろうか。馴染みの仕立て屋に、自分の要望──抑え切れなくなった欲望を包み隠さず伝えた。仕立て屋は瞠目するも、斬新過ぎると創作意欲が増し、衣装の仕立てを快く引き受けてくれた。
 そして誕生したのが、此の衣装だ。想像以上の美麗な出来栄えに、鳴海はライドウに早く着せたく昂り逸る。試着する機会は残念ながら得られなかったが、ぶっつけ本番の本日、此の衣装を遂に纏ったライドウを見、鳴海の心は見事掻き乱された。

──嗚呼、今直ぐ脱がしたい……──

 男が好いた相手に服を贈る理由を、包み隠さず明かしてしまいたい──。
 衝動に駆られるも、潜入捜査の手前、欲に塗れた本心を仕舞い込んだ。だが、全てが終わった今、もう明かしても構わないだろう。
 ”裏”の理由を知った時、純真無垢な此の子はどう思うのか。
 鳴海は口角を吊り上げ、口を開く。
 
……なあライドウ。知ってるか?男が好いた人に服を贈る、”裏”の理由を……
……?”裏”の理由、ですか?」

 本格的な手当てに入る前、鳴海はライドウに問い掛けた。彼の反応を見るに、どうやら知らないようだ。
 さあ、教えてしんぜよう──。


 飢えた狼は何も知らない狐の耳元まで口を寄せ、真相を明かした。
 狐は耳は元より、顔を真っ赤に染めた。
 そして、狐すうっと目を細め、狼に艶めかしく囁いた。
 
──怪我が治った暁に、貴方が贈る服を着ると約束します……其の時は、どうぞ美味しく剥いで下さいませ……──