真九龍
2026-03-06 19:54:09
42542文字
Public 小説
 

【鳴ライ】Sweet and Crisis 2

鳴海×ライドウで、”二人で女装”して潜入捜査するお話。まさかの続編です。
前作は此方→Sweet and Crisis
注1:両想いな鳴ライになっています。
注2:ライドウremaster版をプレイ及びクリア済み。ゲーム本編のネタバレを含みます。
注3:攻めの女装表現が含まれます(勿論ライドウも女装します)。
注4:当時の時代背景(明治期~大正期)における女性軽視表現が含まれます(※性的な表現は含みません)。
注5::流血、暴力、首絞表現を含みます。


─ 伍 ─

「当展示会は終了時刻を迎えましたが、貴方達は展示品を未だ購入していないようですね……?」
 
 午前零時。
 最後の女性客が購入した美術品を抱えながら退場すると、美術品を未購入で会場をうろつくタヱ達は当然のように疑われ、美術商の一人に展示品購入を催促された。
 展示会場の第一ホールには美術商が四名、会場の警備役が六名、出入り口の警備を終えて戻って来た警備役二名。
 合計十二名──。
 展示会関係者は、皆体格が良い。恐らく全員男と推測する。此の中で唯一背が低いタヱは長身の美術商の威圧感と圧迫感に堪らず怯むも、一旦深呼吸をして整え、姿勢を正す。
 目の前にあるかもしれない特ダネを掴む為、臆するべからず。
 鞄から名刺を取り出し、美術商に差し出した。

「会場の片付けに入りたいので、早く選んで下さい」
「あ、後で江戸切子を買うので、少しだけお話させて下さい!──実は……あたしは帝都新報記者・朝倉葵鳥と申します。二人はあたしの妹達で、同じく記者の海鳥さんと狐鳥ちゃんです。帝都の女性達が美術品を求めて足を運ぶ、”夜中の不思議な展示会”の主催者様に取材したく、終了時刻まで残っていました。急な話で大変申し訳ないのですが、御話を伺うことは可能でしょうか?勿論、今直ぐにではなく、日付を設定して後日伺うことも出来ます」
…………少々お待ち下さい」

 自分が伝えたい事を言い切った──。
 タヱの心臓は緊張からバクバクと高鳴り、今にも爆発しそうな勢いだ。あとは返答を待つのみ。名詞と取材依頼の言付けを受けた美術商は展示品の片付けを行う関係者全員に声を掛け、三人の許へ再び戻って来た。

(……?此の内の誰かが主催者ということか?──いや、違う……全員に声を掛けたということは、”そういうこと”だろうな……此れはもう、覚悟を決めておいた方がいいか……)
……えぇっ、とぉ……此の中に主催者が居る、ということでしょうか……?」

 第一ホールの後片付けを行っていた展示会関係者全員、三人の前にぞろぞろ集まってきたではないか。タヱは動揺と戸惑いを露わにし、顔を引きつらせる。対し、奴等はクロだという情報を共有する鳴海とライドウは、眼前に立ちはだかる展示会関係者を睨み付けた。
 開催中、来場客たる女性にはにこやかに接し、美術品を丁寧に説明する美術商と、細心の注意を払い警備にあたっていた警備役の表情は正しく無そのもので──或る者は銃を、或る者は鋭利な刃物を取り出し、三人の前に突き出した。

「ひぃッ!?ちょ……ぇえッ!?どういうことッ!?」
……展示会の秘密を探りに来た者は、誰一人として外へ出す訳にはいかん決まりになっている」
「はぁ~……踏み込もうとする者は、”消す”ってことか」
「け、消すッ!?鳴海さん、何を消すのッ!?えッ!?えッ!?えええ~ッ!?……──はう……
……!タヱさんッ!」

 鳴海の嫌な予感は的中し、顔を顰め溜息を吐く一方、タヱは眼前に突き付けられた現実と情報の整理が追い付かなくなり、恐慌状態に陥り絶叫した後、床にどさりと倒れ込んだ。
 朝倉タヱ、特ダネを前にお約束の撃沈。

「ありゃりゃ……やっぱこうなっちゃうか……まあ、タヱちゃんが気絶するのは想定内っちゃ想定内だけど……
「何をごちゃごちゃと話している……其のでかい鞄を床に降ろし、両手を上げろ。さもないと、お前等の身体はただの肉塊になるぞ。勿論、其処で倒れた女もな」

 自分達はどうにかなるが、一般人であるタヱに危害が及ぶ。鳴海とライドウは警備役の指示に従い、右肩から鞄を降ろし、両手を上げた。無抵抗であることを敢えて主張せねば、展示会関係者、否、展示会関係者に偽装した詐欺集団を欺くことは叶わない。
 ダークサマナーと詐欺集団を此の一夜で一網打尽に仕留めるべく、二人は念入りに練ってきたのだ。

「女にしては妙にデカいと思っていたが……其処の二人、やはり男だな?」
「男ですけど何か文句でも有りますかぁ~?性別を偽り変装することも潜入捜査の一環ですからぁ~。てか常識ぃ~。あと最近女性の間でスポーツが流行ってて、身長が伸びたり、筋肉が付いてスタイルが良くなる人もいるのよぉ?知らないのぉ~?」
「鳴海さん……流石に煽り過ぎかと思います……

 正体は男だと露見してしまったが、鳴海は一切物動じせず、挑発的発言及び小馬鹿にするような口調で煽った。凶器を構える詐欺集団に苛立ちが募り、ビキビキと青筋が立つ。
 ただ一人を除き。

「おいお前等……単なる挑発に乗るんじゃねぇ」
 
 タヱから依頼の言付けを受けた美術商が、鳴海に煽られ怒り心頭気味の団員達を宥めた。此の男が詐欺集団の首領だな、と、鳴海は踏む。首領は無表情で銃を構えたまま鳴海とライドウの許まで近付き、

……──ッ!」
「ライドウッ!?手前ッ……!!……──ちッ」

 ライドウの左手首を掴んだ。相当な握力で掴んでいるのか、ライドウの表情が歪む。鳴海は堪らず声を荒げ、首領に掴み掛かろうとする寸前、白目を向いて気絶中のタヱに銃口を向けられ、再び両手を上げて閉口する。

(俺のライドウに汚ねぇ手で触りやがって……後で覚悟しとけよ……)

 自分以外の男がライドウに触れるなど言語道断。鳴海は己が制裁を与える其の時が来るまで首を洗っておけ、と憤怒しながら毒づく。

「──ライドウ……ということは、貴様がデビルサマナー・葛葉ライドウだな?こっちに来い」
……!おいおいおい、デビルサマナーだと?其の言葉、手前等みてぇなならず者がどうして知ってんだ?(……──繋がったな)」

 悪事に手を染めた犯罪者とは言え、一応一般人の括りに入る首領が”デビルサマナー”という言葉を口にした瞬間、不確定は確定に変化する。
 鳴海とライドウは互いに視線を合わせ、僅かに頷く。
 デビルサマナーの存在を知るのは──デビルサマナーの育成に心血を注ぐ里を除いて──、政府の要人、帝国陸海軍、鳴海や新世界主人のように”訳有り”の者、怪しい噂を拾う情報屋、と、一部の者に限られるからだ。
 

「俺達と手を組んでいるデビルサマナー・”ナハル”から聞いた……

 葛葉ライドウ。
 其の正体は自分と同じデビルサマナーだ。
 此の葛葉ライドウが展示会に来たら、自分の許へつれて来いと言っていた。
 奴はデビルサマナーの中でも一際際立つ存在。
 単なる銃と刃物では相手にならない。
 殺せるのは同業の自分と、自分と契約した悪魔のみ。

「(べらべら喋ってくれるじゃねぇか……ま、内情を明かすイコールどの道口封じみてぇなもんだし……)随分と従順だねぇ……お前等は其れで満足してるのか?」
「金さえ儲ければいい……来い、葛葉ライドウ」

 クロは更なるクロへ。
 首領は、ライドウの左手首を掴んだ状態で歩き出した。其の際、部下達に「其の二人を始末しておけ」と呟く。則ち、口封じ。奴等の辞書に、良心の文字は記されていないようだ。
 いや違う。
 詐欺という名の悪事に手を染め、味を占めた時点で、良心はとうの昔に捨てたのだろう。私利私欲に塗れたダークサマナーと結託し、儲けに一層走ったのなら尚の事。
 だが、利点も有る。性根腐敗し外道に堕ちた詐欺集団を、ダークサマナーを──遠慮なく、容赦なく、手加減無しで、存分に叩きのめすことが出来るからだ。

──……ダークサマナーは、帝都の守護者たる僕が……鳴海さんは、──
──ああ。此奴等は俺に任せておきな、ライドウ──
 
 アイコンタクトで意思疎通を図った後、ライドウは首領に連行され、第一ホールから退室する。
 分断された二人だが、此れもまた作戦の一つ。此方の方が有利に運んでいる事など、詐欺集団は露知らず。
 詐欺集団から銃と刃物を突き付けられた鳴海は、此の絶体絶命の窮地に絶望するどころか、余裕綽々の様子で床に置いた鞄をやんわりと蹴った。
 鞄がもぞもぞと動き出し──。