真九龍
2026-03-06 19:54:09
42542文字
Public 小説
 

【鳴ライ】Sweet and Crisis 2

鳴海×ライドウで、”二人で女装”して潜入捜査するお話。まさかの続編です。
前作は此方→Sweet and Crisis
注1:両想いな鳴ライになっています。
注2:ライドウremaster版をプレイ及びクリア済み。ゲーム本編のネタバレを含みます。
注3:攻めの女装表現が含まれます(勿論ライドウも女装します)。
注4:当時の時代背景(明治期~大正期)における女性軽視表現が含まれます(※性的な表現は含みません)。
注5::流血、暴力、首絞表現を含みます。


─ 陸ノ二 ─

 ライドウが第二ホールへ連行された後、首領から始末を命じられ、詐欺集団から銃口と刃を向けられた鳴海は、床に落とした鞄をやんわりと蹴った。すると、

『窮屈な鞄からやっとおさらばだホーッ!!』

 鞄がもぞもぞと動き出し、そして、飛び出て来たのはジャックランタンだった。詐欺集団は非サマナーの為、悪魔を視認出来ない。ただ鞄が不自然に動いたようにしか見えず、其れは鳴海も同じの筈だが、鳴海の目は宙に浮かび、アギ・ラティを詠唱するジャックランタンをしっかり捉えていた。
 何故鳴海はジャックランタンが見えるのか──。



 鳴海とライドウが最終調整をすべく控室を退室し、別の控室に移動した時刻まで遡る。
 先ず──二人は抱擁し、唇を重ねた。ゴウトは「早よ終われ」や「許さんぞ鳴海」と内心毒を吐くも、潜入捜査に於いて此の口付けは絶対必要絶対不可欠な儀式の為、鳴海に猫拳のお見舞いは不可能なのだ。

……──ライドウ、召喚してくれ」
……──はい」

 長い口付けの後、ライドウは封魔の管を取り出し、仲魔を召喚した。

……何時もより長いチュ~でなんかムカついたホ……此奴を今直ぐ炎上させたいホ……
「悪いな、カボチャのお化け君……俺とライドウは”此れ”だからな」

 呼び出されるや否や、ジャックランタンは誇らしげに小指を立てる鳴海に殺意を抱き、本気で燃やしそうな勢いだ。
 ライドウが鳴海に口付けを介し施したのは、MAGの口移しだ。今回の潜入捜査では、鳴海の仲魔視認が必要不可欠。色々と実験──意味深……──した結果、最も効率的なのは口移しだった、という訳である。欠点を述べるとすれば、視認可能なのはライドウが召喚する仲魔と、ゴウトの声のみ。其れ以外の悪魔はぼんやりとしか見えず、声も聞き取れないとのことだ。

「(鳴海め……後で引っ掻いてやるからな……)ジャックランタンよ。お主を呼び出した理由はもう一つある……我と共に此の鞄に入るのだ」
『ェエエッ!?何でホッ!?絶対に嫌ホッ!!』

 鳴海の態度に苛立つジャックランタンに、更なる追い打ちが押し寄せる。其れは、鳴海が用意したやや大きめの鞄の中に、ゴウトと共に潜むこと。当然のように、ジャックランタンは拒否反応を即示し、ライドウの背後に逃げ隠れる。が、

……御免、ジャックランタン……此れは、君じゃないと出来ないんだ……!」
『ギャーッ!こんな雑な扱い、滅茶苦茶心外だホーッ!』

 ライドウは申し訳なさそうにジャックランタンの顔をガシッと掴み、ギャーギャー喚く彼を鞄に押し込んだ。
 ジャックランタンが選ばれたのは、下位悪魔で、常時召喚中でもMAG消費が少ないこと、彼のマントの中は空洞になっており、鞄に潜り込みやすこと。
 以上。

「此の捜査が解決したら、ジャックランタンの好きなお菓子を必ず買うと約束する……!」
『言ったなライドウッ!!じゃ、富士子パーラーのケーキを十個くれなきゃ悪戯の刑だホーッ!!鳴海にッ!!』
「はぁッ!?何で俺な訳ッ!?」
『お前が超ウザいからだホッ!!』

 ライドウは暴れるジャックランタンを宥めるべく、好物であるお菓子を渡す条件を提示すると、怒鳴りながら承諾した。
 悪戯の矛先を鳴海に向けて。
 こうして、ゴウトとジャックランタンは鳴海の鞄の中に潜り込み、美人記者三姉妹と共に展示会会場へ潜入を果たしたのである。偽の展示品を見て回る最中、鳴海がライドウの記した手帳を鞄の中に入れたのも、ゴウトに捜査結果を読ませる為だ。



 鞄をやんわりと蹴ったのは、ジャックランタンに「自由に暴れてもいいぞ」の合図。
 狭い鞄の中に押し込められていたジャックランタンは、溜まりに溜まった鬱憤を晴らすように叫ぶ。

『燃えちゃえホォーッ!!』
……ッ!?あっちぃいいいッ!!」

 放たれたアギ・ラティは、詐欺集団が纏う服を燃やす。
 奴等からしてみれば、服が突然発火したようにしか見えないだろう。詐欺集団は謎の発火現象によって瞬く間に混乱を来し、武器を投げ捨て消火若しくは急いで脱ぎ捨てた。其の光景はなんと情けなく、なんと滑稽なことか。終始間近で眺めていた鳴海は込み上がる笑いを我慢し、己に与えられた役割を遂行すべく、次の行動に移る。

「さあ……楽しいショーの始まりだぜ」

 鳴海は懐からレンズの黒い眼鏡を取り出し装着すると、スカートを脱ぎ払った。逞しい生足が丸見えに、ではなく、七分丈程のスラックスとポーチ付きレッグホルスター──愛銃のルガーも勿論有る──を事前に着用及び装着し、スカートの下に隠していたのだ。
 ポーチから何やら黒い玉を取り出し、其れを地面に思い切り叩き付けた瞬間、第一ホール全体が眩い光に包まれた。纏わりつく炎を息も切れ切れに消火したのも束の間、今度は凄まじい光が襲い掛かり、此のままでは失明しかねないと目を覆い隠す。
 其の時──、鳩尾に耐え難い衝撃が命中し、低い呻き声を上げながら地に伏した。仲間の声を耳にし「何が起こった」と開眼する直前、其の男も鳩尾に衝撃を喰らい、撃沈する。次から次へと上がる呻き声に、残された仲間は警戒心より恐怖心が増していく。怯え慄く間に、一人、また一人と衝撃を喰らい、倒れ、遂に──鳴海の始末を任された詐欺集団は、其の鳴海の手に因って全員床に倒れ込んだ。此の場にいない一名を除き。
 ぴくぴくと身体を痙攣させ、口から泡を吹き、見事なまでの醜態を晒す詐欺集団を前に、ジャックランタンは「いい気味だホー」とけらけら狂笑した。そう言えば、此奴は悪魔だったな、と、鳴海は改めて”悪魔は悪魔”なのだと実感する。
 鳴海が投げた謎の黒い玉は、陸海軍で共同開発した試作型爆弾である。殺傷能力は無いが、強烈な光源による目くらましに特化しており、大勢の敵を前にした時に真価を発揮する代物だ。一旦撤収するも良し、其のまま殲滅するも良し。黒いレンズの眼鏡は遮光用で、爆弾の使用者を光源から保護する目的で作られたものだ。
 因みに何処で入手したのかは、鳴海のみぞ知る──。

『鳴海のことは嫌いだけど、敵と見做した者は徹底的に蹂躙してく血も涙もない鳴海はそこそこ好きだホー』
「其れ褒めてんのか……?」
「ジャックランタンなりの褒め言葉として受け取っておけ。さて、鳴海よ……分かっておるな?」
「──ああ、分かってるぜゴウトちゃん」

 鳴海の視線の先に、詐欺集団の首領が唖然と立ち尽くしていた。
 ライドウをダークサマナーの許まで連行した後、”片付け中”の第一ホールに戻って来た首領だが、片付けられたのは鳴海とタヱでなく、自分の部下の方だった。想定外の展開を目の当たりにした首領は頭が真っ白に塗りつくされるも、現実へと踵を返し、鳴海に銃口を向けた刹那、

「なッ……!?」
「早打ち勝負はカボチャ君の勝ちだな」
『やったー!オイラ、早打ち名人だホー!』

 首領が発砲するよりも先に、ジャックランタンのアギが首領に命中した。
 首領は瞬く間に炎に包まれ、全身に燃え移る前に服を急いで脱ぐも、

「部下と一緒におねんねしてなッ!!」
「──ッ!!ぐッ、ほぁ……──」

 間合いを詰めた鳴海渾身の横蹴りが首領の腹部に命中し、其の衝撃で吹っ飛ばされた。そして、其のまま壁に激突し、座り込んだ状態で項垂れ、ぴくりとも動かなくなった。

……よし、完全に落ちたようだ。カボチャ君はライドウの援護に向かってくれ。俺とゴウトちゃんは何処かに閉じ込められている悪魔を捜索し、解放してから向かう」
『了か、むむむ……!?ライドウが大ピンチな予感がするホ……!助けに行くから、絶対に死んじゃ駄目だホーッ!!』

 眼鏡を懐に仕舞い、首領の意識が完全に失ったことを確認した鳴海は、ジャックランタンにライドウの許へ向かうよう指示を出す。直後、ジャックランタンは主の危機を察知し、超高速移動で第二ホールへ急ぎ飛んでいく。

(大ピンチ…………いや、カボチャ君ならライドウの危機を救ってくれる……頼んだぜ、ジャックランタン──)
 
 小生意気な仲魔にライドウを託し、鳴海は詐欺集団とダークサマナーに従わざるを得なかった悪魔を捜索する。ゴウトの感知能力が此処だと示したのは、第一ホールと第二ホールを繋ぐ渡り廊下の倉庫だった。ドアを蹴破ると、ぼんやりとだが確かに”見えた”。

……ちょっと小さめのと、猫っぽい……のがいるな……

 技芸属ピクシー三体と、同じく技芸属のネコマタ三体が身を寄せ合うように怯えている、と、ゴウトは鳴海に説明する。
 ライドウが推測した通り、彼女達は中立を貫く悪魔だった。ピクシーは三姉妹、ネコマタも三姉妹。二種の悪魔は意気投合し、異界で共同生活を送っていたのだが、技芸属の物質変化術に目を付けたダークサマナーと詐欺集団に捕らえられ、偽物の美術品を作製するよう強いられた。最悪の場合消滅させられてしまうと恐れたピクシー三姉妹とネコマタ三姉妹は、外道の輩に泣く泣く従わざるを得なかったのである──。

「成程ね……でも、詐欺集団は俺がさっき懲らしめてやったし、ダークサマナーは帝都の守護者・葛葉ライドウが今相手をしている……そろそろ決着が着く頃だ。勿論、ライドウの勝利でな」
「つまり、お前達は自由の身。此処から早く脱出するのだ」
……!感謝しかないでありんすッ!!』
『有難う!女おじさんに黒猫さんッ!』
「有難う、女おじさん。だそうだ」
「(女おじ……ッ!?)……あー、うん……もう捕まらないよう気を付けろよ……

 三十二歳をおじさんと捉えるか、そうでないかは個人の自由。
 ともあれ、鳴海の尽力もあり、囚われていたピクシー三姉妹とネコマタ三姉妹は解放され、姿を消した。匠の技で作製された美術品は崩壊せず、そのまま現存するとのことだ。
 さあ、残すはダークサマナー唯一人。

「我もライドウの許へ行きたいところだが、外で待機中の新世界主人に顛末を伝える役目が有る……詐欺集団を縛り上げ、警察に突き出してもらわねばならんからな。鳴海よ……ライドウを頼んだぞ」
「(何時までも傷心してる場合じゃないな……)おうよ」

 倉庫から走り去るゴウトを見送った鳴海は、ライドウとダークサマナーが対峙する第二ホールへ向かう手前、一旦立ち止まり思案する。第二ホールの出入り口を堂々と開くと、ダークサマナーとうっかり目が合い、己の存在が気付かれてしまうかもしれない。

(こういう広~い建物には、出入りしたり、物を運び易くする為に勝手口とかが複数ある筈……例えば、さっきの倉庫にも……──!当たりだ)

 鳴海は倉庫の出入り口から一旦外に出、第二ホールの勝手口を探した。鳴海の読み通り、勝手口を発見する。いざという時の逃走経路として、鍵は開錠してある筈だ。ドアノブを回すと、此れと言った抵抗もなくすんなりと開いた。少しだけ開き、隙間から覗くと、ライドウと半裸のダークサマナーを──怒りに燃えるジャックランタンが服を発火させたのだろう──視界に捉えた。

(……今回も怪我を負ったか……後でちゃんと手当しておかないとな……)

 ライドウの一喝を合図に、鳴海は音を立てぬようドアをゆっくりと開き、入り、静かに閉める。気配を極限まで消し、ダークサマナーの許まで近付き、

「──お前で最後だな……?」
……ッ!?あ、あなただれでぃぐほぉッ!!……オッ、ぇェ……──」

 渾身の拳撃で、逃亡を図ろうとしたダークサマナーの意識を沈めたのであった。