kaisou
2026-02-26 12:27:31
15192文字
Public 1740年コンクラーヴェ話
 

Nocte Carnavalis Pontifex mortuus est. 

1740年コンクラーヴェ話・別視点4
カーニヴァルの夜に、教皇が死んだ。
枢機卿のじいちゃんを女装させたかったの巻

※歴史創作ですのであしからず

▼1740年コンクラーヴェ話本篇まとめ
Aliquid est quod memoria mea non relinquit.
私の記憶を離れないものがある

https://privatter.me/user/kaisou_ja?category=110867

全7章/幕間含む
1740年コンクラーヴェ話の本篇その2
視点違いの2つの話のうちの1つ。



「猊下、お体の具合は」
御者が心配そうに声をかけてきた。『病気療養中』という名目を、この男は信じている振り、をしている。
「問題ない」
短く答え、扉へ向かう。靴底から石畳の確かな寒さが伝わる。

 コンクラーヴェが始まる。

 ランベルティーニもまた、あの閉ざされた場所に入る。帰りたがりながら、退かないまま。そして私も入る。懐にある革袋の質量が、私の思考を否応なしに突き動かす。脳内で勝手に新たな盤面を組み上げ、非情な計算を始めていた。
 抗おうとしても、止める術を知らない。これが私なのだ。長い年月をかけて骨の髄まで染みついた、取り返しのつかない性分だった。

 コンクラーヴェが始まる。私はまだ、この街にいる。収監中の汚名を着た枢機卿として。 

 だが——まだいる。

 確実に。逃れられない役割として。喉の奥で乾いた笑いがひとつ、硬い音を立てて転がった。神というのは、本当に趣味が悪い。そう思いながら、私は扉を開けた。
 歩みを進めるたび、柔らかな布地が執拗に足首へと絡みつく。汚れ、ほつれきった裾を、私は無意識に指先でつまみ上げた。

 こんな奇怪な姿で、次の教皇を選ぶ祭壇へと向かおうとしている。
 
 思わず、口の端が歪んだ。ひどく滑稽だ。だが、これ以上に相応しい装束も、今の私には思いつかなかった。肩をわずかにすくめ、私はその先へと踏み込んだ。

これが、コンクラーヴェ前の話だった。