葵@はなれ
2026-02-23 14:34:12
15158文字
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「僕目見」で福島光忠を食い散らかしてきた実休が盲目の福島に出会う話(未完成ダイジェスト版)

いつまでも書き終わらないので、尻叩きの為に途中まで上げてます。
1〜2ページ目は過去の再掲、3ページ目からが未発表部分になります。

※未完成、(中略)部分あり。
※オリジナル審神者が喋ります。


一風呂浴びてくると言う演練部隊を見送り、実休は主の元へ向かった。近侍として帰城の報告と、演練の戦績表も渡さなければならない。通りがかりに窺った手入れ部屋の様子も伝えておいた方がいいだろう。大抵、自分で見にいく人だから、もう知っているかもしれないけれど。
気が重い。そんな風によぎった思いを打ち消し、執務室の外から声を掛ける。

「主。今帰ったよ。報告は此処に」
「あぁご苦労だった」

主は四十路に差し掛かった、寡黙な男だ。狷介な顔つきがほころぶ事は滅多にないが、百を超える刀剣達を的確に采配する手腕は皆の信頼を集め、実直な人柄と共に慕われている。
今は政府に送る戦績を取りまとめていたようだったが、実休が差し出した書面を受け取ると、すぐに目を通した。
今回の演練に志願したのは、練度上限に達した極刀剣ばかり。熟練ならではの突飛な戦法と陣形は、ほとんど冗談の域に達しているが、軽く眉を寄せたのみで読み進める主を尊敬する。
冷静で、慎重で。誰の、どんな報告も疎かにせず耳を傾ける。そういう人だった。

「第一から第五まで、全部隊、帰還は完了しているよ。手入れ部屋には二振り。どちらも軽傷だから、手伝い札の使用はしていない。半刻後には終わる予定だけど、早く済ませた方がいいなら」
「いや、それで問題ない。後で様子を見ておく」

実休の言葉を遮り、主が書面から顔を上げた。
眼鏡の奥の、やや神経質な眼差しが実休へ向き――すぐに、すいと逸らされる。

全員が戻っているなら、世話も必要ないだろう。お前も、今日は下がってくれて構わない」

夕刻までに全部隊が帰還するように、出陣と遠征の予定を調整したのは、君だろう――と。
喉元まで出かかった言葉を呑み込み、実休は穏やかに微笑んだ。

「分かった。そうさせてもらうよ」
「あぁ。ありがとう」

労いの言葉を掛けながら、審神者の視線は、もう報告書に戻っている。書き記した内容は、そう多くないのだけれど。わずかに強張った肩の辺りに緊張が窺えた。
気詰まりな相手であっても、日替わりで任命される近侍の輪番から外す事はしない。平等で、真面目な人。福島に説明した人柄に、嘘はない。

――いっそ、完全に遠ざけてくれればいいのに)

廊下に立って、ふと見上げた空は、鮮やかな茜色に染まり始めている。もうじき、夕餉が始まる頃だ。
こんな時間から近侍が自由になる事は、普通はない。夕餉を摂ってからも傍に控え、細々した用事を片付けるものだが、お役御免を言い渡されてしまったのだから仕方ない。
主さーん、と呼ぶ声が聞こえて振り向くと、幾振りかの刀が執務室の前に群がっていた。どうやら主を夕餉に呼びに来たらしい。今日は同席するのだろうか。近頃こもりがちではあるけれど、強くせがまれると、嫌と言えない人だから。
彼等が主を引っ張り出す前に、背を向けて、実休は玄関へと歩き出した。



 * * *



街に着いた時には、夜空がその領土を広げ、夕焼けはわずかな切れ端を残すばかりだった。
誰かの髪の色にも似た空を見上げる実休の面からは、抜け落ちたように表情が消えている。
しばし佇んだ後、ふらりと足を向けたのは、街の中心から外れた、けれど広大な範囲を占める一画。星が瞬くように、灯火がひとつふたつ、店先にともり、その数は次第に増していく。
しゃんしゃんと鈴の音が鳴り響き、三味が流麗な清掻を奏でる。着飾った妓達が婀娜に微笑み、白い繊手が揺れる。鮮やかな爪紅は、指先に花が咲いたよう。
黄昏の刻より目覚め、活気づく街。一夜の夢をやり取りする交歓の場。徒花が妍を競う箱庭。
紅白粉の品の良い香りがむせぶ籬を素通りし、実休はゆっくりと辺りを見回した。既に通りはにぎわい、行き交う刀達の数は多い。
洒脱な軽口で妓達を笑わせる粋刃も在れば、物慣れない様子で仲間に連れられた新参らしき顔も在る。人目を忍ぶように暗がりで抱き合い、睦言を囁く影には見て見ぬふりをするのが礼儀だ。身の上も事情も、人と刀の数だけある。詮索無用、深入り法度。
ふと視線を感じ、目を向けた先に、人待ち顔で佇む『福島光忠』を見つけた。妓達の秋波を受け流し、薄い笑みを浮かべて佇む彼の、何処かしどけなく崩れた気配に、同類の匂いを嗅ぎ取る。
互いにその気で、駆け引きもないだろう。交わした笑みひとつ、目配せひとつで話がつくが、それだけでは味気ない。
すっかり作り慣れた表情を張りつけて、実休は彼に歩み寄り、久しぶりの誘い文句を舌に乗せた。

――ねぇ。僕と遊んでくれないか?」