ろに
2026-01-07 20:00:00
7331文字
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お祭り騒ぎと夜来の雨

文章:「彷徨う魚の意味と意図」の手前の話。じめじめしている玄野の話その0。(過去のオンラインイベントにて無料配布していた小説の再掲)


 祭り当日。夜来の雨はすっかり上がり、窓の外には雲一つない青空が映し出されている。寮の共有スペースでは、2人の少女が出かける準備を進めていた。
「小夜ちゃん準備できたー?」
「ミコちゃん、もう少し待ってぇ」
 それぞれお気に入りのカバンに財布や水筒などを詰め込んでいる櫻歌おうかミコと小夜さよ。どちらも幼い子供の姿をしているが、それぞれミコには狼の、小夜には白猫の耳や尻尾が生えている。
「みこみこに小夜ちゃん、おはようなのじゃ。今日はお出かけかのぅ?」
 楽しそうに尻尾を揺らしている彼女達に、やや舌足らず気味な老人の声が掛けられる。2人の足元に駆け寄ってきたのは、ちびしきじいと呼ばれている身長20センチほどの直立した水色の竜の妖精だ。
「おはよう、ちいおじいちゃん」
「今日はお祭りを見に行くの」
「ほっほ、それは楽しそうじゃのぅ」
 ミコ達の助けを借りながら、机の上に置かれた専用のクッションに座ったちび式じい。電気ポットからお茶を注ぎ一服する姿はとても微笑ましい。普段酒飲みが酒をちまちま飲む為に使っているおちょこも、ちび式じいが持つと大きな茶碗のように見える。
「ミコはりんご飴が食べたいなー」
「小夜はおいしい物を食べながらあちこち歩いてみたい」
「美味しい物とはどんな物なのじゃ?」
「それはね
 和やかに話す2人と1匹の尻尾は、ふわふわと揺れている。
「二人とも、気を付けて楽しんでくるのじゃよ」
「「はーい」」
 やがて持ち物の確認を終えた2人は、行ってきますとちび式じいに元気よく手を振りながら青空の下へと駆け出して行った。