【創作|馬子軸】レゾン・デートル CASE.02

26/1/18 追記しました(ラストまで出てます|サークル名義Privatterに移植しました)
※改行少ないです。閲覧の際は縦書きリーダーで読むことをお勧めします。
CASE.02 マスグレイヴ家の儀式書

されば得られん──窮極へ至る鍵を。

吊られた男の殺人事件から数週間が経ったある日、ERにひとりの女性患者が運び込まれる。そこには色濃い幻想の気配が宿っていた。さらに患者とその母親はマスグレイヴ家の家名を名乗り……? 二人が椿に接触した目的とは。再び蠢く悪意に、椿たちは挑む。


スペシャルサンクス 笋さん
光る羊をお借りしています。事後報告で申し訳ありません。

Privatter版 CASE.01 - https://privatter.me/page/661a9a22d636d
※カクヨムに載せる前のやつなのでこちらは校正とかしてないです



「ご苦労だった」
 夜に満ちた部屋に実直な声が響く。いとしま医学特区──中央行政区。その中心にあるのは、俺たち螺旋捜査官が所属する司法機関、〈公安局〉と俗に呼ばれる、長ったらしい名前の組織だった。
 厚生労働省 先進医学研究監視公安事務局。
 それが〈公安局〉の正式名称である。
 眼前で厳しい表情を崩さない男──海堂霧雨は、手元の小型タブレットから顔を上げた。
「四宮を、どう思う」
 海堂は短くそう問うた。
 彼は四宮椿の監視という任務の詳細を知る、数少ない人物である。
 青みがかった黒い眼が俺を見据えた。何かを見定めようとしているように思えて、言葉を選ぼうとしたが──、俺は思わず口火を切っていた。
「大厄災です」
 俺の声に、海堂が目を丸くする。
「そうか」
 そしてまずい薬を飲まされたような顔になって、
……すまん。苦労をかける」
「いえ。仕事ですから」
 俺は事務的な返事をした。実際は、判断できないというのが本音だった。
 椿には謎が多すぎる。俺に明かされていないことも、〈公安局〉がひた隠していることも。分厚いファイル何冊ぶんとは言わないほどの秘匿事項があるのは明白だった。
「あいつは、いったい何者なんですか」
 浮かない表情を見るに、答えられないのは感覚で理解できた。しかし予想に反して、海堂はぽつりと零す。
「神秘だ」
 その声には恐怖と懺悔が入り混じり、彼の背中に深い影を落としている。
 そう言われても納得には程遠かった。神の類を信じていないわけでは無い。俺自身、陰陽庁に駆り出される身の上だ。むしろ身近ではあった。
 海堂はそれ以降口を開こうとせず、窓の外へ目を向ける。沈黙が重苦しく、俺は無作法だがネクタイを少し緩めた。眼下では白い街の光が煌々と輝いている。医学特区は全体的に建物が白い。そのせいか街並みは余計明るく見えた。
 海堂は俺に視線を合わせ、ゆっくり首を横に振る。これ以上は何も語れない、そう言いたげな面持ちだった。
「信じなくても構わない。今は、四宮椿の監視任務を継続しろ。いずれ真相を知る日は来る」