ねぶくろ
2025-12-24 20:00:00
12149文字
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クリスマス企画2025




平凡な食卓


「クリスマスイヴだよ!? なんでこんなに普通の晩御飯なの~!?」
 テーブルに並んだ筑前煮と白米。付け合わせの大根サラダを見て、夜半は声を上げた。
 丁寧に盛り付けられた煮物は見目美しく、ふっくらと炊き上げられた白米は食欲をそそる。一見すれば素朴で温かみのある晩御飯だ。そこに問題はない。──けれど、今日が十二月二十四日であることを考えると、途端にひどく味気ない光景に見えてくる。夜半は「白波くん!」と同居人兼上司に食って掛かった。
「今日はクリスマスイヴなんだよ!? チキンとかケーキとか食べようよ!」
 夜半の訴えに、彼がため息を返す。白波は席に着くと、丁寧な所作で箸を手に取った。
「文句があるなら食べなくていい。チキンでもケーキでも好きに買って来い」
「つめた~~~い!!!」
 悲鳴のような声を上げる夜半を無視して、彼はいただきますと両手を合わせる。湯気を立てる筑前煮と白波の顔を見比べて、夜半はため息交じりに席に着いた。
 彼に倣って、「いただきます」と両手を合わせる。夜半は大根サラダを頬張ると、相対する席の彼を窺った。その顔を眺めてみても、常から無表情でクールな上司の感情はうかがえない。夜半は「白波くん、冷たいよ」と唇を尖らせて不平を漏らした。
「クリスマスは大事なイベントじゃん。私はプレゼント用意したのに、白波くんはなんにも用意してないってこと?」
……
 白波は何も言わない。返答がないことに焦れて、言葉を重ねる。
「今日はもう仕方ないけど明日こそケーキ食べようよ~。チキンも食べようよ~! 平日とはいえクリスマスじゃ~ん!」
 ごねる言葉にも、返答はない。彼は煩わしそうにこちらを睨むと、軽く息を吐いた。
「そんなに楽しみにしてたのに悪かったな」
「ホントだよ! もっと楽しもうよ! クリスマスなんだよ!?」
「今のは皮肉だ」
 彼はしれっと言い放つと、そのまま筑前煮に視線を戻した。取り合う気がないらしい、と諦めて、彼が作った筑前煮をつつく。夜半は白波に用意したマフラーのことを考えて、唇をへの字に曲げた。
「白波くん、私、プレゼントあげないからね!」
 精一杯の意趣返しとして宣言すれば、彼は顔色一つ変えずに「好きにしろ」と応じた。悔しさと寂しさにますます気持ちがささくれ立つ。白波はこちらの心情を無視して自身の皿を空っぽにすると、「夜半」とおもむろに名前を呼んだ。
「今日は早めに寝ろ」
 珍しく忠告されて、目も合わせずに言葉だけを返す。
……明日も平日だから?」
 不貞腐れた声で尋ねれば、彼は「……夜更かしするのは『良い子』じゃないだろ」と応じた。思わず目を上げれば、視線が交わる寸前で逸らされる。白波は逃げるように席を立つと、念を押すように言葉を重ねた。
「早く寝ないとサンタが来なくなるぞ」




【あとがきのようなもの】
 わくわくしている夜半さんと全く浮ついていない白波さん、ということで、同居開始後初めてのクリスマスを想定して書かせていただきました。
 白波さん、本人は全く浮つかないものの、夜半さんがクリスマスを楽しみにしていることは把握しているだろうな~と思い、そんな感じで書きました。翌朝には和解して夜半さんもプレゼントを渡しているだろうな~とか。筑前煮を作っている白波さんは、絵面がちょっとかわいいなと思って書きました。ただの趣味です。
 今回は企画にご参加くださりありがとうございました!楽しんでいただければ幸いです。