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ねぶくろ
2025-12-24 20:00:00
12149文字
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クリスマス企画2025
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クリスマスツリーに思いを寄せて
クリスマスパーティーのために、少し遠くの大型ショッピングモールまでやってきた。クリスマスソングの流れる店内では、二人と同じく、買い出しに来た家族連れの姿が目立つ。
黒崎兼冬は、大きく膨れたエコバッグを肩から下げて、買い物メモを確認した。夕飯は豪勢にしようと二人でチキンやら、キッシュの材料やらを買い込んだ。ケーキは直径が小さいながらもホールのものを予約したので、後で受け取りに行けばいい。あとは、飾りつけでも買おうか、とメモを仕舞って顔を上げる。凪を見れば、彼女はじっとあたりの風景を見つめていた。声をかける前に、その視線を追いかける。
一階から三階までの高さを贅沢に使い、広々とあいた吹き抜けの空間。そこにデンと聳える大きくて立派なクリスマスツリー。美しいもみの木を見上げる凪の瞳は、憧れを宿していた。──そういえば、家にツリーは置いていない。
二人の住居は古い作りのアパートだ。大きなツリーを買ったとしても、それを仕舞っておく場所も、飾る場所もない。丁度飾りつけのことを考えていたので、ツリーという象徴的なアイテムを用意できないことに申し訳なさを覚える。
兼冬は、「凪」と彼女の背中に声をかけた。真っ黒な双眸がこちらを向いて、「買い忘れたもの、あった?」といつも通りの調子で口を開いた。ツリーへ向けていた憧憬の眼差しなどおくびにも出さない。兼冬も、気づかなかったフリをして「食べ物は充分だ。飾りつけを買おう。折り紙とか」と近くに軒を連ねる雑貨屋を指さした。彼女が頷き、二人で店へ入る。
アップテンポの洋楽が流れる雑貨屋の店内には、駆け込み需要というのか、クリスマスプレゼントやラッピング類が大量に陳列されていた。赤と緑、時々混ざる青や白。賑やかな色合いに圧倒されて、飾りのコーナーを探す。店内を見て回れば、飾り物の棚はすぐに見つかった。
ツリーはないので、オーナメントの類は無視するほかない。凪の歩幅に合わせてゆっくりと歩きながら、手ごろな飾りはないかと思案する。出来ればツリーに代わるような、と欲の深いことを考えていれば、ちょうどよいものが見つかった。棚の最上段に置かれていたサンプルを手に取って、「これ、」と彼女に見せる。
「買わないか? うちにはツリーがないから、
……
代わり、にはならないだろうが」
どうだろう、と兼冬が見せたのは、ペーパークラフトの小さなクリスマスツリーだ。展示されているものは組み立て済みのサンプルだが、購入する場合は自分たちで一から組み立てないといけない。──とはいえ、型紙と手順書の通りに工作するだけだ。大した問題ではないだろう。
凪は兼冬の手にした薄いツリーを見て、それから他に並んだペーパークラフトを見比べた。他にも、雪の積もったログハウスや、サンタクロースとトナカイや、雪だるまなど、クリスマスにちなんだデザインが揃えられている。凪はもう一度兼冬の手にしたツリーを見ると、どこか嬉しそうに目を細めて頷いた。
「兼冬、クリスマスツリーが好きなんだ。意外」
会計を終えたタイミングで、凪が呟く。兼冬は「え」と声を零して、彼女を見た。
「
……
好きじゃないのか?」
欲しかったんじゃないのか、と聞くと恩着せがましいような気がして言葉を変える。彼女はこちらを見上げると、「もみの木が好きなの」と言葉を返した。
「なんだか、兼冬みたいだから」
「そうか?」
自分がもみの木に似ているかどうかはわからないが、彼女が好きならば問題はない。兼冬は購入したクリスマスツリーをエコバッグに仕舞うと、凪に手を差し出した。手を繋いで、雑貨屋を後にする。
「それじゃあ、後はケーキを受け取って帰ろう」
声をかければ、彼女は跳ねるような声で「楽しみ」と頷いた。
【あとがきのようなもの】
クリスマスに関するシチュエーション、ということで、折角アパートに住んでいるなら『クリスマスツリーを買ってあげたい(けど空間が足りなくて買えない)』みたいなお話を書きたいな~と思いそのように書きました。
凪ちゃんの資料に、「兼冬さんを何かに喩えるならもみの木」というような情報があったので、使いたいな~と思ってワンシーンからちょっとはみ出しましたが最後の会話シーンを入れています。
この度は企画にご参加くださりありがとうございました。楽しんでいただければ幸いです。
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