ねぶくろ
2025-12-24 20:00:00
12149文字
Public
 

クリスマス企画2025




フェアリーライトと繋いだ温度


 クリスマスを前にした街は、いつもよりも華やかな雰囲気に溢れている。街角にはクリスマスを感じさせる明るい音楽が流れ、至る所が煌びやかなイルミネーションによって飾られて、道行く人々の足取りも軽いようだ。
 清乃が電飾で彩られた桜並木を見上げていれば、隣を歩いていた三獄が、「シスター。せっかくですし、少し遠回りをしてこっちの道から帰りませんか?」と、イルミネーションで彩られた並木道を指さした。その提案に、「いいんですか?」と、一も二もなく頷く。彼は「もちろん」と笑うと、清乃に歩幅を合わせて、ゆっくりと並木道へ踏み出した。
 金色の明かりに満たされた大通りは、時節柄かカップルで溢れている。誰もかれもが幸せそうな表情をしていて、それが少し眩しい。手を繋ぎ、寄り添い歩く二人組を横目に、「そういえば」と清乃は口を開いた。
「三獄さんは、サンタさんに何をお願いするんですか?」
「え」
 意表を突かれたように声を零して、彼が「サンタさんに、ですか?」と言葉を繰り返す。三獄は少し迷ったように視線を揺らしてから、笑みを繕って「僕はいい子じゃないですし、大人なので、もうサンタさんは来ませんよ」と言葉を返した。「え、」と今度はこちらが意表を突かれて目を瞬く。
「大人になると、サンタさんが来なくなるんですか?」
「え、……まぁ、はい。基本的には子供のところにやってくるものだと思いますよ」
「それじゃあ……、私のところにももう来ないんでしょうか?」
 不安げに呟いた清乃に向けて、彼が何かを言い淀む。見上げれば、左右で色の異なる双眸が清乃を見つめて、──少しだけ気恥ずかしそうに、「もし、良ければですが」と口火を切った。
「僕が、シスターのサンタさんになりましょうか?」
……いいんですか?」
 思わず声が跳ねあがる。清乃の様子に安堵したように目元をやわらげて、彼が頷いた。もちろんです、という言葉に「嬉しいです!」と笑みを返す。清乃はハッと気づいて、彼に向けて言葉を重ねた。
「それでは、私は三獄さんのサンタさんになります! 欲しいものは何ですか?」
 尋ねれば、彼は「そうですね……」と少し考えるように虚空へと視線を放り投げた。
……あ、手が冷えるなって思っていたんですよ。手袋が欲しいです」
 今度一緒に買いに行きませんか? と続いた言葉に頷きを返す。清乃は、「もちろんです!」と彼に笑みを返して、それから手を差し出した。三獄が目を瞬いて、小首を傾げる。
「三獄さん、手を貸してください」
「手を、ですか?」
 彼が不思議そうな面持ちで右手を差し出す。清乃は両の手で自分のそれより一回り大きな手のひらを包むと、ぎゅっと握りしめた。氷のように冷え切った指先に顔をしかめて、「確かに冷えてますね」と頷く。熱をしみこませるように彼の手をさすり、清乃は繋いだ手を自身のコートのポケットに入れた。
「今はこんなことしか出来ませんが、少しはあたたかくなりますかね……?」
 見上げるように窺えば、三獄は黙り込んで清乃を見つめ返した。イルミネーションの光を受けた頬も、鼻先も、いつもより赤みが差している。手だけじゃなくて顔も寒そう、と見つめていれば、彼ははたと気が付いたように目を瞬いた。
「ありがとうございます。あたたかくなりました」
 ……シスターにはかないませんね、と呟かれた言葉に、小首を傾げる。三獄の装いは寒々しいが、繋いだ手だけはぽかぽかと温かい。シスターは幸せな気持ちになりながら、彼の手を引き、イルミネーションの続く道を辿った。




【あとがきのようなもの】
 シスターが宗教家なので、サンタさんを純粋に信じていると可愛いな……と思い、「大人になったらサンタが来ない」のくだりを入れたくてそのような感じで書きました。
 私は勝手にお二人のことが好きなので、寒いと聞いて善意100%で手を握っちゃうシスターの無邪気さとその無垢さに翻弄されて黙っちゃう莇さんが書きたくて書きました。楽しんでいただければ幸いです。
 最後になりましたが、企画にご参加くださりありがとうございました!