冬暁
2025-12-15 20:40:05
6792文字
Public 鳴保
 

NRHS Calendar 2025 No.3

12/15〜12/20、12/25の鳴保カレンダーまとめ。


12/18 『スイーツ』


 ルビーのように紅く艶やかな色が並んでいる。大ぶりのそれは手に取れば赤子の肌よりも柔らかく繊細だった。
「いちご?」
「せやねん。親戚にいちご農園を経営しとる人がいてな。今年は出来がええからって、届けに来てくれてん。せっかくやから鳴海さんにも食べてもらいたくて」
 力を込めずともぷちゅんと潰れてしまそうだ。こうして食べるのは久しぶりだから、これがいちごだと言われればそうなのかもしれない。
「いちごなんてどれも一緒だろ?」
「いやいやいや全然ちゃうで」
 季節によって熟し具合も違うからだいぶ変わる。甘さも柔らかさも冬時期のいちごは段違いや。夏は爽やかな酸味と歯応えが旨いけど、やっぱ僕は冬いちごやなぁ。ほんまに甘くて蕩けるみたいで最高やねん。
「とりあえず一回食うてみ」
 いちご一つに驚くほどの熱意だ。半分聞き流していたが、ともかくこのいちごがそれはもう旨いらしい。
「あ、どうせならヘタの方から食ってみて」
「ヘタぁ?」
 クルンと跳ねたヘタをむしって一口。僅かに残った茎の青臭さと歯応え。
 まぁ、確かに甘いいちごの味がする……
 悪くもないが特別良いとも思わん。
「次、先の方」
…………
 舌だけで崩れてしまうほどに柔らかく、そして驚くほどに甘かった。
「な?」
 自慢そうに保科は笑う。
「いちごってこんなに甘かったか?」
 じゅわりと広がった果汁の名残は、酸味よりも甘味。いちごと言ったら酸っぱいものだという印象が強いから驚いた。
「品種にもよるけどな。これ、僕のお気に入りやねん。ケーキとかに使うには甘すぎるけど、そのまま食べるんならこれが一番好き」
 鳴海さんはどう? と問いかけられてもう一つ手に取る。やっぱり柔らかくて甘い。
「ボクも」
「よかった。たくさんあるから食べてな」
 そう言いながら同じようにいちごを食べた保科は、いちごよりも蕩けそうな顔で笑った。

Posted by 冬暁/薄明