冬暁
2025-12-15 20:40:05
6792文字
Public 鳴保
 

NRHS Calendar 2025 No.3

12/15〜12/20、12/25の鳴保カレンダーまとめ。


12/17 『香水』


 ふわりと漂ったのは女物の香水だった。
「お前、何処行ってきた?」
「何処って、いつも通り仕事やけど」
「ふぅん?」
 ボクの眼差しに保科が不快そうに眉を寄せる。
「なんや。言いたいことあるなら言え」
「じゃあ言わせてもらうが、この匂いは何だ」
「匂い?」
 すん、と鼻を鳴らした保科には分からないようだった。その腕を掴めば、眉がさらに寄せられる。
「女が使いそうな香水の匂い。基地でこんなもん移る機会、何処であったんだ?」
…………? あ」
 首を傾げていた保科が不意に思い当たったように声を漏らした。それを聞いて、浴室に連れ込む。服も脱がさずに放り込んで、シャワーコックを捻った。冷たい水が降り注ぎ、濡れた服が肌に纏わりついていく。次第に温かくなったものの鬱陶しい。一瞬後悔が過ぎたが、それよりも不愉快さが勝った。
「服も脱いでへんやん! それに誤解やって。僕がそんなことするような奴やと思っとるん!?」
「思ってないが、だからと言って気分が良いもんでもないな」
「鳴海さっ、ンぅ!」
 噛みつくように口を塞ぐ。薄く開いた唇を割り開き、熱い粘膜を嬲る。逃げ惑う舌を捕まえて、味蕾を押しつぶすように絡めあった。甘いような、苦いような、不思議な味がする。舌の根を突けば、じゅわりと唾液が溢れ出した。苦しそうに嚥下する音がする。
 膨らんだ喉仏に手を当てて、するりと撫で下ろした。
「ふ、んむ、ぅッ、……は、んんっ、ふ……!」
「は、っ……んぅ……
 どこに付いたかもわからない匂いを擦り落とすように手を滑らせる。
 床を叩く水音とは別に、泡立つような粘着質な音が響くのがいやらしい。
「ん、ふぁ、……っ、なる、んん、っぅ……ッ」
 腕を叩かれて仕方なく唇を離す。とろりと引いた銀糸はすぐにふつりと切れた。保科の唇が熟れたように色づいている。それよりもしとどに濡れた紅が艶めかしく、その柔らかさと熱さを思い出せばまた欲しくなった。
「話聞け……!」
「んむっ」
「あのなぁ、香水は記者さんのものや。転びそうになったのを支えたからそん時にでも移ったんやろ」
 口を押さられているから、ジッと保科を見つめる。そうすると頬がじわりと熱をもっていくのが見えた。
「気分悪なったなら、僕の匂い上書きしたらええんちゃう?」
……!」
「僕もどうせなら、鳴海さんの匂いがええし」
 顔を赤くしているくせに、そんなことない素ぶりでとんでもないことを言う。
 はぁ、と長く息を吐き出す。籠る熱は上がるばかりで冷める気配がない。
「なら、遠慮はしない」
「初めからしてへんくせに」

Posted by 冬暁/薄明