冬暁
2025-12-01 23:58:27
7783文字
Public 鳴保
 

NRHS Calendar2025 No.1

12/01〜12/07に投稿した鳴保SSまとめ。2025だけど、2026があるかは謎。
タイトルがない代わりに日付+お題。


12/04 『プレゼント』


 良い子にはサンタさんがプレゼントをくれる。
 クリスマスが近づくと大人たちが言い聞かせていた言葉だ。施設ではクリスマスの朝にはツリーの下にプレゼントが置かれていた。大抵はお菓子や文房具で、本当に欲しいものなんてない。
 当然だ。ボクは随分と昔からサンタさんなんていないと知っている。十二月はイベントが多いから、資金繰りに苦労していたことも。
 ボクの欲しいものをくれる、ボクだけのサンタクロースはもう死んでしまった。そもそも本当にいたのかさえわからない。被災時のショックか否か。ボクは両親の記憶をあまり持たなかった。そのおかげで、他の子供達のように両親のいない寂しさを抱えることもなかったように思う。
 サンタさんは子供の夢を守る存在だ。クリスマスは悲しみに暮れていた子供でもほんの僅かに笑ったりする。
 サンタさんがいることで夢や希望を持てるなら、それをわざわざ壊してやる必要なんてなかった。ボクにとってクリスマスは、サンタさんの名を借りて大人たちが作った特別な日で、だからこそ今のボクにはただの平日でしかなかった。
 そのはずだったのに。
「弦くんはええ子やからね」
 クリスマスの朝。目が覚めたボクの枕元にあったのはプレゼント袋だった。呆けたボクを見て、お前は柔らかく笑う。
「子供の弦くんにあげられなかった分を届けに来てくれたみたいや」
 そんなわけないだろ。
 そう言うのは簡単だったのに、言葉にはならなかった。
「開けてみて」
 促されるままに開ける。そこにはボクの好きなもので溢れていた。
 欲しかったゲームソフト。よく食べるお菓子。引けずじまいだったカプセルトイの景品まである。
「弦くんのサンタさんはお寝坊さんやったみたい」
 今更。今更だ。ボクはもうサンタさんにプレゼントを貰うような子供じゃない。
 それでも、そんな子供のボクを救い上げるような優しさが愛おしくて、嬉しくて。やっぱり何も言葉にならなかった。
 袋を握り締めたまま黙り込むボクの肩に温もりが寄りかかる。
 ボクだけのサンタクロースは過去じゃなく、未来で待っていたらしい。

Posted by 冬暁/薄明