冬暁
2025-12-01 23:58:27
7783文字
Public 鳴保
 

NRHS Calendar2025 No.1

12/01〜12/07に投稿した鳴保SSまとめ。2025だけど、2026があるかは謎。
タイトルがない代わりに日付+お題。


12/01 『月夜』


「月が綺麗だな」
 そう言って笑う姿が眩しかった。
 静かな僕に貴方は首を傾げる。その輪郭が柔らかな月明かりでぼやけていた。
「保科?」
 貴方は僕がどれだけ胸を高鳴らせているのか、きっと知らない。
 なぁ、それ。どういう意味なん?
 期待してもええの?
 そう問いかけたい。でも、その答えが恐ろしくもある。
 どんな怪獣を前にしても、一歩踏み出せるのに。貴方の言葉ひとつでこうも臆病になる。
「ホンマですね。すごく綺麗で……、時が止まって欲しいくらいや」
 この時間が少しでも長く続いて欲しい。月に照らされた貴方を見つめていたい。この想いが伝わらなくても良いから。
「そ、れ……
 息を飲み込む音がした。丸い目が僕をじっと見つめる。
 心臓が口から飛び出してしまいそうだった。
 トン、と手の甲が触れ合う。頬が紅潮した貴方につられて顔が熱くなる。指先が手のひらを滑り、優しく絡み合った。
「これからも一緒に見れるだろ?」
 僅かに上擦った声が喜色に満ちている。ここまであからさまな反応をされたら疑う余地もなかった。
「貴方が望むなら」
「それならずっとそうだな」
 なんて、幸せそうに笑うから。嬉しくて心臓が止まってしまいそうだった。

Posted by 冬暁/薄明