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すだ
2025-08-30 21:23:09
26599文字
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主スバカグ
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離れていても 繋がる心
交際前。舞手スバルのケガレ浄化のお手伝いをしたいと申し出た嫁カグヤが、
何故かマウロ、ひなと共にアズマを巡る旅に出る話。
25,000字ほどありますので、お時間のあるときにどうぞ。
離れ離れで行動することが多いですがスバカグです。
スバルとカグヤの考えと関係も少しずつ変わっていきます。
注意書きは1ページ目に続きます。
#スバカグ
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冬の原野。秋地方とは打って変わって厳しい寒さが体にこたえる。ただ、スバルが防寒具を用意してくれたおかげで、旅は想像以上に順調だった。
「カグヤさん、こっちは片付いたよ!」
ひなの報告を受け、カグヤはマウロに声をかける。
「はい! マウロさん、援護を頼みます!」
「分かった! 任せてくれ!」
周りを徘徊していた魔物を掃討した後、カグヤはネツケガレ花へと駆け出した。
猛烈な熱波が彼女を襲うが、じりじりと肌が灼ける感覚を無視して一気に距離を詰める。
ネツケガレ花の根本に札を貼ると、周囲にばら撒かれていた炎が沈静化した。
「お見事!」
「やった! 何度見ても神様たちのお札は効果覿面だね」
歓声を上げるふたりにカグヤは手を振る。マウロとひなは、揃って親指を立ててみせた。
ふたりの元に戻るカグヤは炎を浴び、所々火傷していた。マウロが彼女を引き留め回復する。
「いつも言っているけど、カグヤさんだけがケガレに向かって行かなくていいんだよ? ひなたちだって」
ひなの申し出を、片手を上げてカグヤは制した。
「いいんですよ、ひなさん。これは私が受ける罰のようなものですから。お付き合いいただいているおふたりに背負わせる訳にはいきません」
カグヤの言葉に尻尾をしゅんと下げ、ひなは項垂れる。
「うーん。カグーヤさんのしてきたことって、そんなに悪いことだったのかな?」
その場にそぐわぬ明るい調子のマウロの発言に、カグヤは仰天し彼を見た。
「当たり前じゃないですか。私はルーンを奪い取り、アズマを衰弱させる元凶だったんですよ」
「それは人間から見て、だろ? 元々黒竜がやっていたことは、ヴィアトレーア
――
アズマトノミホシハバキに託された国産神の復活とアズマの再生だ」
どちらも手段が違うとは言え、アズマを再生しようとやったことだとマウロは言う。
例えいっとき人や生き物がいなくなったとしても、神によって生まれ変わったアズマは、再び生命の循環を始めるだろう、と。
「勘違いしないでくれよ。カグーヤさんのやったことは蹂躙で、許されることじゃないのはオレも分かってる。ただ、あまりにも報われないと思っただけだ」
ふう、とひとつマウロが息を吐く。
「皮肉だよね。カグーヤさんはアズマを救いたかっただけなのに。やり方がアズマに住む人間にとって滅びに等しかったばかりに、人と敵対する結果になってしまった」
人と大地を繋ぐ大地の舞手
――
白竜の乗り手、スバルと。
人から大地を奪い、神の手により一から創造する
――
黒竜の乗り手、カグヤと。
「まあ、オレたちが何を考え、言ったところで、カグーヤさんの罪はアンタ自身が背負っていくものだけど」
風がマウロの髪を揺らす。
「いつか、アンタの心を焦がし続ける後悔が、少しでも穏やかなものになればいいと願ってるよ」
いつの間にか隣にいたひなが、切なそうに笑いながら頷いた。
「
……
ありがとうございます、ふたりとも」
カグヤは礼を言うことしかできなかった。
いつか、来るだろうか。この燃え盛る炎のような罪の意識が、少しでも鎮まる日が。
決して許されることはない、許されることを望んでいない。
けれど、わずかな間でも罪を忘れ幸福を噛み締められるような日が、来るだろうか。
確認できる範囲のケガレの力を封じ、地図に位置を記載し終えた一行は、最後に冬の里へと足を向けた。
「お帰り、寒かっただろう。今日は狩りがうまくいったから鍋なんだ。お前たちも食べて行かないか?」
里へ入ると、入り口でピリカが迎えてくれた。やったー! 温かい食べ物ー! と喜ぶマウロとひなが先立って冬の社に向かう。フブキ様が社で待っている、ザザとワタラセもいるぞ、イカルガとクラリスも外回りから帰ったら合流するはずだ、とピリカが教えてくれる。
思わず笑うカグヤに、ピリカは何か可笑しいか? と首を傾げた。
「いえ、違うんです。秋の里でもヤチヨさんのお店で宴会みたいになって。里に帰る度、皆さん歓迎して下さるのでありがたいなって」
「それは当たり前だろう」
ピリカが何を当然のことを、とでも言いたげに目を細める。何故ですか? とカグヤが聞く。
「大切な仲間が役目を果たして戻って来たんだ。歓迎するのは当たり前だろう?」
誠実なピリカからの真っ直ぐな言葉に、カグヤの心は締め付けられる。
私のことを、この人たちは大切だと、仲間だと言ってくれる。
ちっぽけな自分。罪を犯した自分。人の厚意を素直に受け取れない自分。
そんなカグヤを、お構いなしに受け入れてくれる四季の里の人たち。
ああ、私はこの人たちの助けになりたい。この人たちの幸せを祈りたい。
そのために生きてもいいだろうか。望んでもいいだろうか。
四季の里を巡る旅は終わりを迎え、カグヤの心にも少しずつ変化が表れ始めていた。
「ひなさん、野菜も食べないと」
「ぜーったいに、イヤ! です!」
フブキにいくら言われても、ひなは頑として首を縦に振らない。
「ひーなちゃんの野菜嫌いは筋金入りだからねえ」
「いろはさんやヤチヨさんがあれこれ手を尽くしても、絶対食べませんからね」
料理自慢のふたりが作る見事な料理にも、彼女は決して手をつけようとしなかった。
前世で野菜と何かあったのでは、と疑うほどだ。
どんな因縁が
……
とカグヤが考えていると、隣に座るクラリスが声をかけてきた。
「カグヤさん、あなたの荷解きが落ち着いたら、また会いに行っても良いですか?」
嬉しい提案に、カグヤは笑顔で頷いた。
「はい、また手合わせしましょうね」
「春の里のモコモコたちは元気でやっていますよ」
「クラリスは2日に1回くらいは春の牧場に行っていたもんナ。カグヤが面倒見られない分、自分が頑張るんだ、ってサ」
「ザ、ザザさん!」
余計なことは言わないで下さい! と顔を赤らめたクラリスがザザに文句を言う。
「ふふ、帰ったら一緒にモコモコのお世話もしましょう」
「はい! ブラッシングを沢山してあげましょうね」
動物好きのふたりがほのぼのとした会話をしていると、フブキがカグヤさんちょっと、と手招きしてきた。
クラリスに席を外す旨を告げ、フブキの元へと近づく。
「フブキさん、どうしました?」
「カグヤさん、キミが来たら渡して欲しいとスバルくんから預かっていたものがあるんです」
そう言ってフブキが差し出したのは1通の手紙だった。
「スバルから?」
手紙を受け取ると、皆から離れた部屋の隅でカグヤは封を開けた。
スバルの丁寧で勢いのある文字に懐かしさを覚えながら読み進める。
『カグヤ、久しぶり。元気でやっていますか? オレは相変わらず里中を走り回る生活を続けています』
砕けた調子の書き出しで手紙は始まっている。
『キミが旅に出てから、もうふた月が経とうとしています。早いものだね。空を見上げる度に、カグヤは今どこにいるんだろうと考えます。その度に会いたいと思うけれど、キミがやりたいことを邪魔したくないから、我慢しています』
子供みたいだ、とカグヤは笑ってしまう。
『カグヤが旅に出たいと言ったとき、反対してごめん。キミに傷ついて欲しくなくてああ言ったけど、キミの望みを邪魔したかった訳じゃないんだ』
分かっていますよ、とカグヤは心の中で返事をした。スバルがいつでも自分のことを心配してくれているのを知っている。時々度が過ぎていると思うことはあるが、指摘すると渋々引き下がってくれることも。
『どうか、カグヤの目的が果たされますように。キミの帰りを待っています』
そのとき、ずっと心の奥底に押し込めていた気持ちが抑えられなくなった。
カグヤの旅には、いつもスバルの存在があった。
春地方では、里人たちのために結界を強化してくれた。
夏地方では、旅人たちのために水場を作ってくれた。
秋地方では、カグヤたちのために防寒着を用意してくれた。
そして今、この手紙がカグヤの心を温めてくれている。
どの地域でも、人々は嬉しそうに里長のことを話題にあげた。いつだって里のことを思って行動してくれる。本当にありがたい、我々も助けになれるよう頑張るのだと。
その言葉を聞くたびに、カグヤも誇らしい気持ちになった。私の幼馴染はとても素晴らしい人なのだ。
スバルに、会いたい。
「あの、フブキさん。お願いがあるのですが」
カグヤからの願いを、フブキは快く引き受けた。
再び春の里。
ムラサメから冬の里で託されたと手紙を受け取ったスバルは、かつてない速さで走っていた。
「モコロン、大変だ!」
勢いよく竜神社に駆け込んできたスバルに、モコロンはこっそり食べようとしていた団子を喉に詰まらせた。慌ててスバルが相棒の背中を叩く。
「グェッへ! ゲホッ! 何だよ相棒! 頼むから落ち着いてくれ!」
「ご、ごめん」
「で? 何が大変なんだよ? 魔物でも現れたか?」
「カグヤから手紙がきた」
「は?」
信じられない程深刻な顔で言うスバルに、モコロンは怒りを禁じ得なかった。
「お前なあ! そんなことのためにオイラを窒息させるつもりだったのか!?」
「窒息させるつもりなんてなかったし! 大体そんなこととは何だよ! オレにとっては一大事なんだよ!」
というか、隠れて団子を食べているモコロンが悪いだろ、とスバルに責められ、モコロンは舌を出した。
「ま、まあオイラも無事だったし、もうこの話はいいだろ? それよりカグヤの手紙を読もうぜ」
「
……
」
カグヤからの手紙を握り締めたまま、スバルは動かない。
「おーい、どうした?」
微動だにしない相棒を見かねて、モコロンが声をかける。
「どうしよう、モコロン。オレ、カグヤから手紙をもらったのって初めてなんだよ。家宝にしたい、開けなきゃダメかな?」
「知るかー! さっさと開けろぉ!」
『スバル、手紙をありがとうございました。今、冬の里でこの手紙を書いています。あなたと皆さんのおかげで無事、目的を果たすことができました。いつも気にかけて下さり、本当に感謝しています』
カグヤの真っ直ぐで流麗な文字を一文字一文字辿っていく。
『もうじき帰ります。帰ったら、話したいことが沢山あります。私の話を聞いてくれますか? あなたに会えるのを、楽しみにしています』
最後の一文を読み終え、スバルはモコロンを振り仰いだ。
「モコロン、カグヤが帰ってくるって!」
「ああハイハイ、良かったな」
「反応が雑!」
「さっきまでお前に雑な扱いをされていたオイラに言えた義理か!?」
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