河童の皿箱
2025-08-03 08:22:10
13184文字
Public 遊戯王:長め
 

とある少年が持つサイキックについての報告書

Gボーイとファイアと娑楽斎が実験するだけ。


 リブロマンサーのサイキックについての調査記録

 本記録は、調査対象者に発言したサイキックおよび『リブロマンサー』の発生源調査を委託され、作成されている。作成者は外部受託者 娑楽斎、委託・保管者は『デスブローカー』である。
 本記録において、原因の特定には至っていない。しかし、調査は現在でも続行されており、記録の更新を行う予定である。最新版を求める場合は、保管者である『デスブローカー』へ連絡せよ。

 調査対象『ファイアスターター』、及び『Fire Starter』。
 覚醒の原因は、⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎年⬛︎⬛︎月⬛︎⬛︎日、⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎州にて発生した襲撃事件である。経緯の詳細、同時に覚醒した『ミスティガール』については、資料⬛︎⬛︎⬛︎のP.⬛︎⬛︎を参照せよ。
 また、調査の際は担当者である『デスブローカー』の意向、及び指示に従うこと。

1,基本技能の習得、使用について
 テレポート、テレパシー、サイコキネシスを合わせて3時間で習得。サイコキネシスは非常に微弱であり、テレパシーは受け手もサイキックである必要がある。他技能の習得は不可能と判断した。
 ただし、これらサイキック基本技能は変身中には使用できない。よって、変身中は『Fire Starter』の性質に近いと推察できる。以下、サイキックに関する記述に特記がない限り、変身をしていない場合の情報であるとする。

2,源流について(各地の詳細は資料⬛︎⬛︎⬛︎を参照せよ)
 パワースポットを巡ったが、反応なし。標準的な感想、感動は述べたものの、神霊の目視等、超自然存在の知覚はしなかった。また、東洋理論における神通力も確認されず、他宗教で取り扱われる力もない。他、人体実験や脳開発の記録も発見できなかったし、本人も自覚していなかった。
 よって、自己完結型の精神が力の源流であると考察する。尚、このタイプは精神的ショック等や脳のトラブルによって、一次的な力の行使ができなくなるパターンが確認されている。調査対象者は⬛︎⬛︎歳であるため、日常的なケアや精神面の教育を提案する。

3,『Fire Starter』について
 『Fire Starter』は、『ファイアスターター』によって召喚されたヒト型実体である。身長⬛︎⬛︎⬛︎cm、体重⬛︎⬛︎kg。筋肉質。容姿、装備は原作に準拠するが、社会生活に合う服装ではなかったため、普段着を調査対象者が工面した模様。調査対象者の金銭面のフォローを提案する。
 性格は書籍『Fire Starter』に登場する同名のヒーローのものに極めて近く、トラブルがあれば駆け付ける行動がみられる。あまり賢くないと自称しているが、戦闘技能は高く、超人然としている。描写・設定に準拠してか、発火能力も所持している模様。
 書籍の設定上、あるいは描写上で公開されている以上の記憶を持ち、自身がデザインされた時や、没になったアイデアを話す場合がある。このように、人間とはかけ離れた振る舞いが見られるが、本人は人間を自認し、けれど本の中の住民であることも自認している。

4,『ファイアスターター』と『Fire Starter』の関係について
 以下、『ファイアスターター』を『書霊師』、『Fire Starter』を『書霊』と記述する。
 現状、関係は良好である。書霊が喧嘩好きであるためかトラブルに首を突っ込むが、書霊師は大人しい性格をしており、書霊を止める役割に回ることが多い。
 一方で、書霊師がもとより書霊の原作の熱烈なファンであったためか、書霊には極めて強い信頼を寄せている。主人と従者の様な従僕的関係かと尋ねたところ、書霊師からは「自分が彼の主になんてなれるわけがない」と強い否定があり、書霊からは「こいつを主人だとは思ってないし、これからも思うことはない」と、こちらも強い否定があった。書霊から書霊師への信頼については不明である。
 食事ともなれば席を共にしたり、何を食べたいかと相談することもあり、会話は多く、ふたりともよく笑う。言い合いに発展することもあるが、たいていは寝るか食べるかすれば翌日には元通りになっている。こうしたことから、関係は良好であると言えるだろう。





 「もう。あんまり遅い時間まで読んでると、明日に響きますよ」。そう背中から声をかけてきたのは、補充要員として組織から派遣された若者であった。ことん、と。ホットミルクが湯気を立たせては、柔らかな香りが眉間の皴を和らげては、息を詰まらせていた男は顔を上げた。
 デスクに向き合い続けていたのは、眼鏡をかけた男。ハンガーにかかったロングコートと、代理人を示すバッヂと。薄暗い部屋で数日前に書面で提出されたレポートを、ぺらり、ぺらりと捲っていた。レポートには、いくつかの注釈が付箋で貼られており、そこには、彼らと旅をした絵師の、ありのままの言葉が綴られていた。
 『組織に提出する時は付箋外せよ』。『あの子は普通に生きてきたのに、急にこういうことに巻き込まれて不思議に思ってるようだった』。『ヒーローはやっぱりヒーローだよな。少年の不安には敏感だ』。『でも、不思議とヒーローと居るときは不安そうじゃなかった。流石だなってさ』。『旅行は目いっぱい楽しんでくれたみたいだぜ、お土産も一緒に送っておくな』。なんて。
 様々なパワースポットで撮影したふたりの写真が、たくさん送られてきた。「あっ、もしかして」。新たなる助手がじっくりと観察を始めれば、男は口元を緩め、けれど溜息をついた。「本当に旅行してきたんだな、あいつは」、と。しかしまあなんというか。神霊との交信に長けたサイキックが撮影した写真だ。……いろいろと写り込んでいる。悪霊ではないみたいだが。
 男は差し出されたミルクを一口。唇を濡らしては、なめとり、シュガーの甘みに微笑む。またレポートを読み進める。届いたときはずいぶん分厚い封筒だと思っていたが、内容は3枚程度に纏められたレポートの本編と、本編を補足するための御巫と呼ばれる少女たちの調査書、そして土産と記念写真であった。
 そして、このレポートが綴ったこと。それは、最後の付箋が示していた。『まあつまりあれだ。分からないことが分かったってやつだ!』、と。そんな投げやりな結論に、けれど男は「あいつに任せて正解だった」と。当初の目標であった、あの少年へのサイキックの技能の伝授も、ついでに頼んでいたリブロマンサーとしての性質の実験も、おおよそ全て請け負ってくれていた。さらには近しいケースを探し出して、そちらではどうだった、こちらの解釈としてはこうだ、と結論を出している。そのうえで、彼の人間性を、いや、彼らの人間性を尊んでくれた。
 「礼をしないとな」。男がレポートを置き、散らばった写真を整えれば、助手を連れて部屋を去る。「あちらの国で好まれる土産物を調べてくれないか。それと、あちらの国の旅行先も」。





5,『ファイアスターター』のケースにおける、リブロマンサーの仮説について
 この報告書上では、極めて偶発的な要因で書霊師が書霊と契約を結び、結果としてリブロマンサーに覚醒した、と結論付ける。しかし、サイキックに覚醒したから契約を結べたのではなく、リブロマンサーとして覚醒したから、サイキックにも覚醒したのではないか?
 『いろいろ頑張ってはみたけど、ミスティガールもデスブローカーもちゃんとみないと、やっぱわかんねぇなぁ』。『脳開発研究所に突き出したくないってのは心の底から同意見。俺も行きたくねぇ』。『多分、リブロマンサーは当人の精神力と極めて強い関係がある。そこを攻めようと思うぜ』。しこれらはあくまでも仮説にすぎないため、より規模を拡大させた実験の許可を要請